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前回はコルチゾールの分泌が低下してしまう副腎疲労の特徴と、それによって起こるブレインフォグの症状について説明しました。今回と次回は、栄養素についての説明となります。五大栄養素として、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルがありますが、まず今回は、三大栄養素の、炭水化物、脂質、タンパク質の解説を、そして次回は、ビタミン、ミネラルの解説をしたいと思います。
まず大まかな説明としては、炭水化物は脳や体を動かすエネルギーとなる栄養素で、糖質や食物繊維があります。ご飯やパン、麺類、砂糖、芋類などの中に多く含まれます。脂質は、効率の良いエネルギー源であるとともに、細胞膜やホルモンを作る材料としてとても大事な働きをします。油やバター、チーズ、卵黄などに多く含まれます。タンパク質は、アミノ酸が沢山繋がってできており、筋肉や内臓、皮膚などを作る材料であり、ホルモンや酵素、抗体などの本体となる大事な栄養素になります。
人間の構成成分は、約60%が水分なのですが、約15〜20%がタンパク質、約12〜20%が脂質からできています。炭水化物は、1%未満ととても少ないのですが、これはエネルギーとして絶えず消費しているためで、体の蓄えとしては、余った分をグリコーゲンや中性脂肪という形で貯蔵しているということになります。
厚生労働省が推奨する三大栄養素の摂取バランスは、炭水化物が50〜65%、脂質が20〜30%、タンパク質が13〜20%とされていますが、今回のブログではこの比率は問題があることを解説します。
まず主食に最も含まれる炭水化物についてです。炭水化物には、糖質や食物繊維が含まれます。炭水化物は、エネルギー源としてとても重要な働きがあるので、しっかり栄養を摂る必要があります。最近、食欲がない、時間がない、ダイエットなどの理由で、10%前後のこどもが、朝食を食べない、抜くことがあるという統計があります。朝食に限らず、食べない時間が長くなると、次に食事をした時に血糖値の増減が激しくなり、いわゆる血糖値の乱高下が見られるようになります。そうなると、眠気や倦怠感が強くなり、メンタルも影響するため、1日、三食をきちんと食べることが大切になるのです。
しかし、以下の理由から、炭水化物を過剰に摂取することは良くないと言われています。
余分な炭水化物は、中性脂肪として蓄えられるため肥満に繋がる
血糖値の上昇が大きくなり、インスリン分泌量が増えるため、乱高下が余計に大きくなる
ビタミンB1の消費が多くなり、疲れやメンタルの不調が出る
腸内細菌の悪玉菌が増えたり、カビのカンジダが増え、SIBOやSIFOが悪化する
過剰な糖質は、脳や腸で起こる炎症の原因となる
というわけで、食べないのもいけませんが、食べ過ぎるのも良くないことになり、バランスを大事にしましょう。特に、以前に説明した、グルテンやカゼインの制限食を行う場合、他の栄養分として、ついご飯や麺類などの炭水化物が増えてしまいがちになります。そうなると、先ほどのような弊害が起きることになるため、制限食を行う場合は、炭水化物ではなく、タンパク質を積極的に摂るよう心掛けるようにしましょう。
次に脂質についての説明です。脂質には、脂肪(いわゆる中性脂肪)、コレステロール、細胞膜の成分であるリン脂質、脂溶性ビタミンなどに分けられます。「あぶら」というと、つい脂肪だけを考えてしまいますが、栄養学的には、もっと広く、脂質という用語を使います。これらは水に溶けず油に溶ける性質を持ちます。
中性脂肪は、グリセリンという物質に、3つの「脂肪酸」が繋がった物質になります。脂肪酸は、炭素原子がどんどん繋がった構造をしていて、その長さによって、名前が違います。脂肪酸には後で説明するように、良い脂肪酸と悪い脂肪酸があります。
炭素数が6個以下の物を「短鎖脂肪酸」と呼び、腸内を酸性に保つことで、悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌が住みやすい環境を作る。腸のバリア機能を強化する。免疫機能を調整する。血糖値のコントロールをする。脂肪を燃えやすくし脂肪の蓄積を抑えるなどの大切な働きがあります。短鎖脂肪酸には、乳酸、プロピオン酸、酪酸などの種類があります。それぞれ、乳酸は乳酸菌やビフィズス菌、プロピオン酸は一部のビフィズス菌、酪酸は酪酸菌によって作られます。医療機関で処方される整腸剤には、これらの腸内細菌が含まれているのですが、整腸剤の種類により含まれる腸内細菌が違い、特徴があります。良く処方されるミヤBMという整腸剤は、酪酸菌が含まれていて、まず胃酸で死なないため、腸に確実に届くのが特徴です。そして乳酸よりも酪酸の方が炭素数が大きいため、効率良くエネルギーを作り出すことができます。更にはミヤBMの内服によって、分泌型IgA抗体を増やすという報告があり、個人的にはミヤBMの内服が一番良いと考えます。
次に脂肪酸の中でも、炭素数が8〜12個の物を「中鎖脂肪酸」と呼び、別名「MCT」とも呼ばれます。一般的な油(長鎖脂肪酸)と違って、リンパ管を経由せず、直接肝臓で分解されるため、消化・吸収が非常に早く、すぐにエネルギーになりやすいのが特徴です。また体脂肪として蓄積されにくいため、ダイエットやスポーツ、医療などで注目されている栄養素です。ココナッツオイルや、パーム油などに多く含まれていて、最近では「MCTオイル」としても市販されています。起立性調節障害の子は、倦怠感も強く、行動を動かすエネルギーが少ないため、中鎖脂肪酸をしっかり摂取し、エネルギーを沢山取り入れることで元気になる可能性があります。
最後に炭素数が12個より多い物を「長鎖脂肪酸」と呼びます。中鎖脂肪酸より更に長く、体内のエネルギー源や細胞膜の成分として大切なのですが、種類により体脂肪を増やしてしまうため注意が必要になります。
長鎖脂肪酸の分類として、炭素の繋がりが、「単結合」だけの物を「飽和脂肪酸」、「二重結合」を含む物を「不飽和脂肪酸」と言います。二重結合があると、細胞膜が折れ曲がるため細胞骨格が柔軟になります。飽和脂肪酸は、動物性食品に多く含まれ、室温では固体で、摂り過ぎると、悪玉コレステロールや中性脂肪を増やしてしまいます。不飽和脂肪酸は、植物油や魚油に多く含まれ、室温では主に液体の状態です。不飽和脂肪酸にも、自然に存在する脂肪酸と工業的に製造された脂肪酸があり、前者は、一般的には血液中の中性脂肪やコレステロールを減らし、血栓を防ぐ効果があります。後者の工業的に製造された脂肪酸を「トランス脂肪酸」と呼び、マーガリンやショートニング、ファットスプレッドなどに含まれます。マーガリンや、マヨネーズ、菓子パン、ケーキ、ドーナッツ、クッキー、スナック菓子、インスタント食品、フライドポテトなどの揚げ物にはトランス脂肪酸が多く含まれるのですが、これらは、悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすため、動脈硬化などのリスクを悪化されるため、注意が必要です。
長鎖脂肪酸の種類として、良く「オメガ▲脂肪酸」という言葉を聞かれることが多いと思います。長い炭素の繋がりの中で、何番目の炭素に二重結合があるかで分類されるのですが、次のような分類があります。
オメガ3脂肪酸 炎症を抑え、動脈硬化を予防。脳機能を向上させる。
αリノレン酸(亜麻仁油、えごま油など)
DHA、EPA(青魚や干しエビに多い)
オメガ6脂肪酸 免疫反応を活性化し細胞の情報伝達に関わるが、摂り過ぎると炎症を
促進し動脈硬化のリスクを高める。
高温処理や長時間の放置でトランス化するため注意!
リノール酸(大豆油、コーン油など)
オメガ9脂肪酸 悪玉コレステロールを下げ、善玉コレステロールを維持する。
高温処理でトランス化するため注意!
オレイン酸(オリーブ油、菜種油)
日本人では、オメガ6脂肪酸の摂取が多くなり、オメガ3脂肪酸の摂取が少ないと言われています。なるべく揚げ物を控えるようにし、青魚を摂ることが健康に良いとされます。青魚をなかなか摂れない場合は、サプリメントで効率良く摂ることもお勧めします(最近は、DHAやEPAに、中鎖脂肪酸のMCTオイルが配合されたサプリメントも高コスパで販売されています)。
また油で揚げた揚げ物は、揚げたては良いのですが、時間が経つと、トランス脂肪酸に変化してしまい、体に悪いため、なるべく早く食べるようにしましょう。
三大栄養素の最後はタンパク質です。タンパク質は、エネルギーが足りている時は、筋肉や内臓、骨などを作る材料になります。しかし炭水化物や脂質のエネルギーが足りていない時(病気で食事ができない時など)は、タンパク質が分解され、エネルギーとして使われることになります。
このように体の成長にも大切なのですが、様々な酵素やホルモン、IgA抗体などの免疫物質、セロトニンなどの神経伝達物質の材料となるので、タンパク質が不足すると、ホルモンバランスが乱れてストレスを感じやすくなったり、エネルギー不足から疲労感が強くなったり、免疫力が落ちて風邪に引きやすくなったり、メンタルや身体症状の不調をきたすなど、様々な支障が出るようになるため、特に重要な栄養素と言われています。
具体的には、IgA抗体、IgG抗体、IgE抗体などはタンパク質そのものなので、これらの抗体が減るということは、免疫やアレルギーの働きが落ちることになります。
セロトニンは特にタンパク質不足と直結し、タンパク質が不足していると、不安や落ち込み、イライラが強くなります。ドパミンも精神症状に関わりますし、ADHDの特性もドパミン不足が影響するため、タンパク質が不足すると、神経伝達物質が少なくなり、様々な心身症状が出ることとなります。うつや、PMSとも呼ばれる月経前症候群、マタニティーブルーや産後うつ、更年期障害なども、全て直接的にはセロトニンの低下が原因と言われているくらい、セロトニンは重要な物質になります。家族の方も、タンパク質不足には十分注意してください。
また次回のブログで解説しますが、体内で鉄は、フェリチンと呼ばれる状態で存在しますが、フェリチンの本体は主にタンパク質です。外来でフェリチンの数値がとても下がっていた人や、鉄剤を飲んでもまたすぐに下がってしまう人は、タンパク質不足によってフェリチンタンパク質自体が足りていない可能性があるので、積極的にタンパク質を摂ることが望ましいです。
タンパク質は、肉、魚、玉子、乳製品、大豆など、多くの食品に含まれています。エネルギーを作り出すためには、炭水化物や脂質の摂取が大切になるのですが、先ほど説明したように、炭水化物も脂質も摂り過ぎは良くないため、特に炭水化物を控えめにし、タンパク質をしっかり摂るのが良いとされます。しかしタンパク質を多く摂る場合、食物不耐症の所で説明したように、小麦や乳製品での摂取はなるべく避けた方が良いため、小麦や乳製品以外の、例えば赤身の肉や、魚、玉子などが良いとされます。以前は、玉子はコレステロールが上がるので1日1個までにした方が良いと言われていたことがあります。しかし最近はそれは根拠がないとされ、むしろバランス良く手軽にタンパク質の栄養素を摂取できるため、1日、3個、4個と、普通に食べて良いとされています。
タンパク質は、中学生の男子では1日60g、女子では1日45gが必要とされますが、身体の成長が著しいため大人より沢山の量が必要になります。なかなか食事だけで補うのが難しい場合がありますので、プロテインのサプリを摂るのも良いと思います。ただし、1回の摂取で20g以上を摂っても、それ以上は吸収されず無駄になってしまいます。何回かに分けて摂るようにしましょう。
今回は、三大栄養素である、炭水化物、脂質、タンパク質に関する説明と、炭水化物はあまり摂り過ぎは良くないこと、脂質は中鎖脂肪酸やオメガ3脂肪酸を中心に種類を考えて摂取することが大切なこと、そしてタンパク質は最も意識して沢山摂取する必要があることを説明しました。次回は、残りの栄養素である「ビタミンとミネラル」について説明したいと思います。


