お世話になりありがとうございます。
前回はグルテンとカゼインに対する不耐症とその制限食についての説明をしました。今回は、小腸の中で、細菌やカビ(真菌)が異常に増えてしまう、SIBO(シーボ)とSIFO(シーフォ)という概念について説明したいと思います。とても重要な項目ですので、しっかり読んでいただけると幸いです。
恐らく、ドクターの中でも、この用語を知らない方が多いと思います。何故なら、この疾患は、2024年に初めて、WHO(世界保健機関)で疾患名として認められたため、ドクターでも知らない人がほとんどなのです。下竹も何となく名前は聞いたことがありましたが、ちゃんと理解したのは最近になってからになります。
SIBOというのは、小腸内「細菌」異常増殖症
SIFOというのは、小腸内「真菌」異常増殖症の略で、
細菌はバクテリア、真菌はカビになります。
小腸の中で、細菌や真菌が異常に増えてしまい、症状が出てしまっている状態を言います。カビの中でも、特にカンジダというカビが原因となるため、SIFOは「腸カンジダ症」と言われることもあります。腸の中にカビが増えるというと、怖くなるかも知れませんが、人間の体には、元々、カビがいます。それが不適切に増えただけの症状なので安心してください。
リーキーガットの説明の時にお話ししましたが、腸内細菌は大腸に9割もいるのですが、小腸には1割しかいないと言われています。ところが、ストレスや、食生活の乱れ(炭水化物や脂肪、発酵食品の過剰摂取など)、免疫力の低下、胃酸の低下、抗生物質や胃薬の長期内服などにより、腸の動きが悪くなったり、自律神経の乱れなどが起こると、細菌や真菌が小腸に溜まりやすくなり、そこで異常に増殖してしまうことになります。その結果、下痢や便秘を繰り返したり、異常な発酵により沢山のガスが発生し、腹痛や腹部膨満が強くなる症状が見られるようになります。大腸は、ガスが発生しても大丈夫な構造なのですが、小腸は元々、ガスが発生する想定ではなく、ガスにとても弱い構造になっています。食べ物を食べる度にガスが発生し、小腸が風船のように膨らんでしまうため、腸のバリア機能が悪くなるリーキーガットの症状が続いてしまいます。
このような腹痛、下痢、便秘、腹部膨満を起こす疾患として、過敏性腸症候群(IBS)というものが有名です。IBSとSIBO/SIFOはとても似ている症状なのですが、実は全く違う病態で、ほとんどのドクターが区別をせず「過敏性腸症候群(IBS)ですね」と診断してしまっているのが現状です。IBSと診断された方の85%が、実はSIBOだったという報告もあります。IBSと、SIBO/SIFOは治療法も異なっている所があり、対応を間違えると、逆効果の治療になる場合があるため、注意が必要になるという説明が今回のメインになります。
まず、IBSと、SIBO/SIFOの症状は、とても良く似ていますが、最初にIBSの特徴を見ていきます。
IBSの特徴は
ストレスで症状が悪化するため、学校に行く前や学校に行く前日の夜に症状が悪化する
逆に休日には症状がなく、平日も学校を休むと決まった途端、症状が和らぐ
排便をすると腹痛などの症状が軽快する
腸のガスは主に大腸に溜まる
というのが大きな特徴です。
細菌が異常増殖するSIBOの特徴は
腹部膨満やおなら、ガスがとても多い
おならは硫化水素による腐敗臭でかなり臭う
便は、泡状であったり、不消化である
食後、30分から1時間後くらいに症状が悪化する
消化の悪い食べ物で悪化しやすい
整腸剤の内服で悪化する場合がある
腸のガスは小腸に多く、腹部全体になる
というのが大きな特徴です。
カビが異常増殖するSIFOの特徴は
腹部膨満やおなら、ガスがとても多い
おならはあまり臭わない
便は、粘液質
食後、半日以上で症状が悪化(30分から1時間後くらいに症状が悪化しない)
整腸剤や鉄剤を飲むと調子が悪くなる
腸のガスは小腸に多く、腹部全体になる
甘い物がやたら食べたくなり、甘い物を食べると症状が悪化する
集中力の低下や無気力などの症状が見られる
というのが大きな特徴です。
IBS、SIBO、SIFOは、必ずしも1つの状態とは限らず、合併する場合があり注意が必要です。
またカビであるカンジダと小麦の成分であるグルテンは、構造が似ているのですが、カンジダが増えた人は小麦に不耐症が出やすくなり、逆に小麦に不耐症がある人はカンジダに感染しやすくなると言われています。これを免疫学的に「交差反応性がある」と言います。カンジダ感染と小麦不耐症のどちらもある場合は、両方の対応が必要になるということになります。
SIBOやSIFOを診断するための検査は、正確にはとても難しく、呼気中の水素やメタンガスの量を調べたり、尿の有機酸検査、便の検査などを自費診療でされる場合がありますが、いずれも高額になる物です。
上記のように、それぞれ症状や身体所見の特徴があります。これをしっかり判断することで、およその診断は付くため、特に検査は必要ないのではと考えます。
ちなみに何故、通常は小腸にはあまりいないはずの腸内細菌や真菌が小腸で増えるかについてですが、ストレスで交感神経が優位となり、腸の動きが悪くなるため。発酵食品や食物繊維の過剰な摂取。抗生物質やステロイド、ピル、胃薬、便秘薬の内服(ガスターやタケプロン、マグミットなど)。ある種の整腸剤の内服(市販の整腸剤に小腸で増えるタイプの物があり注意(新ビオフェルミンS錠やエビオス錠など))。大腸カメラのために腸内の便を全て排泄する際、大腸内の腸内細菌が死滅してしまう。こどもではほとんど考えなくても良いですが、胃の手術で胃酸分泌力が低下している場合。などが挙げられます。腸の動きが悪くなったり、胃酸の分泌が少ないため、小腸で細菌が死なずに増えてしまうということが原因となります。悪玉菌だからダメという物ではなく、善玉菌でもダメということになります。
IBSとSIBO/SIFOの違いとしては、このような見方ができるとも言えます。
IBSは、器質的には問題なく機能的な病気であり、慢性炎症(※)はあまり伴わない
SIBO/SIFOは、基質的な問題である病気であり、慢性炎症(※)の合併が強い
そのため、ODにIBSが合併した場合は、治療の効果は悪くはないが、
SIBOやSIFOが合併した場合は、自律神経の症状が強く、治療の効果が悪いと言えます。
(※ 「慢性炎症」については、次回のブログで解説します)
この辺りは、IBS、SIBO、SIFOの治療法や、食事で気を付けないといけないことも含めて、また後日、まとめて説明することとなりますが、重要なポイントだけ先に解説しておきます。
通常、IBSのような症状があった時、整腸剤の内服をしたり、食物繊維や発酵食品を多く摂ろうとすると思います。通常のIBSであれば、それで軽快するのですが・・・
食物繊維や発酵食品を摂ると症状が逆に悪化する(特にSIBOで多い)
整腸剤を飲むと症状が逆に悪化する(特にSIFOで多い)
という場合があり、注意が必要となります。
ODのような自律神経の症状を治療するためには、IBS、SIBO/SIFOを見極めた、しっかりとしたお腹の治療が重要になると言えるのですが、それも最後にまとめて説明したいと思います。
今回は、SIBOとSIFOについて説明をしました。これらの特徴と、IBSと似ているが違う病態であり、治療のためにはしっかりと見極める必要があると解説をしました。今回の内容はODの治療の上で、とても大切と考えています。また今後のブログでまとめて解説します。次回は、「慢性炎症と分泌型IgA抗体」について説明したいと思います。
参考文献を挙げておきます
① 魔法の7つの食習慣 安藤麻希子 分子整合栄養医学普及協会
今回のブログで取り上げたSIFO、慢性炎症、IgA抗体以外はほとんど網羅
お母さん目線で非常に分かりやすく、食事のレシピがとてもオススメ!
② 小腸を強くすれば病気にならない 江田証 インプレス
SIBOについての解説本。SIBOについての本は少ないので参考になります
③ 改訂増補版 おなかのカビが病気の原因だった 内山葉子 ユサブル
SIFOについての解説本。SIFOについての解説本はこれしかない?




