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前回はアレルギーと食物不耐症についての説明をしました。今回は、食物不耐症の中の1つである、グルテンとカゼインに対する不耐症と、その制限についての説明をしたいと思います。

 

前回の説明で、食べ物のIgGという抗体を調べることで、その食べ物に対するアレルギーがあるかどうかが分かるという説明をしました。しかしその検査は、抗体が上がったからと言って、必ずしもそれが悪い物とは限らず、慎重に判断しないといけないとお話ししました。例えば、私たちの主食である「お米」に反応が出たとします。主食であるので、なかなか制限をするのは難しいですし、本当にお米が症状を出している可能性は低いかもしれないのです。しかしそのような食べ物の抗原の中で、グルテンとカゼインという物質は、反応性が強く、これに対しては、しっかり対応が必要と言われていて、今回はこのグルテンとカゼインについて説明をしたいと思います。

 

まずグルテンとは、主に小麦に含まれるタンパク質です。小麦以外にも、大麦やライ麦などにも含まれますが、主に小麦について考えていただけたら良いかと思います。グルテンは、水と混ざると、食べ物に粘り気や弾力を出す作用があり、パン、パスタ、うどん、ラーメン、ケーキ、ピザ、クッキー、ドーナッツ、お好み焼き、たこ焼きなど、多くの食材に含まれます。他にも、カレーのルーや、醤油、揚げ物の衣などにも含まれ、普段から良く食べる食事のほとんどが含まれるということになります。

 

特に、最近はご飯からパン食に変わり、外食でパスタやうどんなどを食べる機会も多く、ピザを宅配で頼んだり、ファーストフード店で軽食を済ますことも多いのではないかと思います。

 

グルテンはタンパク質なのですが、特殊な構造をしているため、胃液や消化酵素で消化されにくく、そのため、アレルギーとしての抗原性が強いことと、その粘っこい性質のため、腸管に対してダメージを与えやすいと言われています。その結果、リーキーガットを起こし、腹痛や下痢、便秘、腹部膨満、ゲップ、吐き気などのお腹の症状だけでなく、頭痛、倦怠感、疲労、不安、落ち込み、集中力の低下など、様々な症状を起こしやすくなります。しかしこのような症状が、食後すぐに起こるのではなく、数時間〜数日後に起こるため、小麦が原因で症状が起こっているのかがとても気付かれにくくなります。

 

グルテンに不耐症があるかを調べるには、前回説明したような、食物IgGなどの抗体検査で、(確定ではありませんが)可能性として疑うことは可能です。しかしきちんと診断を付けるためには、「チャレンジテスト」という検査を行う必要があります。これは、例えば、2〜3週間、食事でなるべく小麦を食べないようにし、それで困っている症状が減るかどうか、そして再開した時に、今度はその症状が増えるかどうかで、グルテンに不耐症があるか分かるという物になります。軽症も含めると、何と日本人の70〜80%の人がグルテンに不耐症があると言われています。

 

一度、グルテンに不耐症があると分かれば、普段からあまり食べ過ぎないように気を付けるようにします。グルテン制限食や、グルテンフリー食などと言われます。最近は、プロのスポーツ選手が、ダイエットや能力向上のために、グルテンフリー食を続けていると公言されている方もいて、ご存知の方も多いかも知れませんね。

 

IgE抗体によるいわゆる食物アレルギーでは、小麦や玉子などを食べると、強いアレルギー反応が出て、場合によっては命に関わることがあるため、症状によっては完全除去をするなど、ストレスがとても強くなります。しかし、食物不耐症に対する制限食は、食べると症状は強くなりますが、たまに食べる分には問題はありませんので、IgEの食物アレルギーよりはストレスは少ないのではと思います。普段は少し制限し、症状が強くなった時にはもう少し控えるなどの対応をします。

 

グルテン制限食だと、先ほどのようなパンや麺類、スイーツなどを控えることになります。栄養としては、当然減らすだけではダメで、その分の栄養を他から摂らないといけません。パンがダメなら、おにぎりなどのご飯で、と考えてしまいますが、炭水化物をメインに摂るのも、それはそれで血糖の変化や腸の環境としては良くありません。理想的には、洋食から和食を中心に変えるのが良いということになるのですが、玉子や豆類、魚や肉類などのタンパク質をしっかり摂るようにすると、腸の環境は整い、心身の調子もとても良くなります。そのような食事を心掛けるようにしてください。

 

グルテン不耐症の話をしましたが、グルテンに関連してもう一つ、大切な説明をする必要があります。それは「セリアック病」という病気についてです。これもグルテンに対して不耐症があり、下痢や便秘、腹痛、腹部膨満などのお腹の症状や、倦怠感、集中力の低下などが見られ、これらは先ほどのグルテン不耐症の症状と共通になります。しかしセリアック病は、先天性の遺伝性疾患であり、成人になってから見付かることもありますが、こどもの頃から症状が出ると、発育不良や筋力低下、貧血などの症状が見られる場合があります。セリアック病は、欧米の方には多く、日本人には少ない疾患で、2,000人に1人ほどの割合と言われます。日本人では頻度は少なく、しかも特殊な検査をしないと分からない病気のため、あまり臨床の場で考えられることはありません。しかしグルテンに対し強い反応性を示す場合があり、症状が強い時は、念頭に置く必要があります。

 

これまでは小麦に対するグルテン不耐症の説明をしましたが、同じように注意が必要な食物不耐症として、乳製品に対するカゼイン不耐症も大切です。牛乳に酸性のジュースなどを混ぜると、モロモロの白い沈殿が溜まることを経験しますが、この沈殿がカゼインというタンパク質になります。牛乳に含まれるタンパク質の約80%であり、チーズやヨーグルトの成分になります。酸性の胃液によりゲル状に固まってしまうため、分解に時間がかかることと、グルテンと同じように特殊な構造をしたタンパク質です。消化がしにくいため、腸管で炎症を起こし、グルテンのような反応を起こしてしまいます。グルテンとカゼインの症状はほぼ同じであり、症状から見分けることは難しく、食べた後の反応で判断するしかありません。日本人ではグルテン不耐症は70〜80%もいると説明しましたが、カゼイン不耐症も、70〜90%もいると報告されています(そのうち、症状が出るのが25%ほど)。

 

カゼインフリー食としては、牛乳だけでなく、チーズ、ヨーグルト、脱脂粉乳、バター、生クリーム、カスタードクリーム、アイスクリームなどは避けることになります。パンやお菓子なども牛乳が含まれているため、気を付けてください。代用として、豆乳、アーモンドミルク、ココナッツミルク、米粉などはカゼインを含まないので摂取可能となります。乳製品を控えると、カルシウムの摂取が減るため、小魚や大豆、葉野菜、海藻などで摂取を心掛けてください。

 

グルテンとカゼインの不耐症は、両方合併することもあります。しかしどちらも制限してしまうと、食べるものがかなり限られてしまい、ストレスも強くなってしまうため、あまり無理をしないようにしましょう。

 

今回は、グルテンとカゼインに対する不耐症と、その制限食についての説明をしました。これらの食品が知らず知らずのうちに体の症状を出していることがあり、色々心身に不調がある人は、試しに一度、制限食を試してみるのも良いかも知れません。最初はストレスに感じるかと思いますが、それによって辛い症状がよくなるのであれば、モチベーションも上がるかも知れません。あくまで自分で治したいという意欲があればやるようにし、家族に強要されイヤイヤやることのないようにしてください。次回は、腸の中の細菌や真菌が増えてしまう「SIBOとSIFO」という概念について説明したいと思います。