お世話になりありがとうございます。
前回のリーキーガットに引き続き、今回は「アレルギー」と「食物不耐症」について説明したいと思います。ちょっと難しい内容も含まれますが、しっかり読んでいただけるとありがたいです。
最初にまずアレルギーについての説明です。アレルギーというと、例えば、玉子を食べると全身が赤くなり呼吸が苦しくなったり、エビを食べると喉がおかしくなるというような症状が分かりやすいと思います。それを「即時型アレルギー(1型アレルギー)」と言い、食べ物や薬剤、化学物質など、本来は「無害」である様々な抗原(アレルゲン)が体内に侵入したり触れた時に、それを異物として排除しようとする免疫機能が働きます。本来であれば「無害」である玉子やエビが、免疫系が過剰に反応し、良くない反応が起こってしまうということになります。
その時に中心となるのが、免疫グロブリンというタンパク質の中の「IgE」抗体と呼ばれる物になり、その抗原に対するIgE抗体が反応すると、食物アレルギーや花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、結膜炎など、様々な反応が起きることになります。この反応は、抗原が侵入してから、数分から数時間という早い経過で症状が出ます(そのため即時型アレルギーと呼ばれます)。
このようなアレルギーは、お子さんが赤ちゃんの時に小麦を食べ湿疹が強くなったり、大きくなってから春になると鼻水やくしゃみが強くなりした時、血液検査でそれぞれの抗原に対するIgE抗体を調べ、「スギ花粉のIgE抗体が高かった」などと検査をされた方も多いため、ご存知の方も多いかと思います。いわゆるアレルギーと言えば、このIgE抗体による即時型アレルギーを指します。
次に、少しアレルギーから話が逸れて、免疫の話をします。例えば、新型コロナウイルスに感染した場合を考えます。まず体に侵入してきた新型コロナウイルスに対し、IgMと呼ばれる抗体が反応し、これは新しい異物だと認識し攻撃します。そしてその免疫反応により、新型コロナウイルスを認識するIgGという抗体が作られます。このIgG抗体により、「新型コロナウイルスに感染した」という記録を残し、次に新型コロナウイルスに感染した時に、すぐに反応できるように準備を整えます。逆にこのことを利用し、感染を予防、軽減するようにしたのがワクチンで、例えば新型コロナウイルスの一部を注射し、それを認識するIgG抗体を事前に作らせることで、新型コロナウイルスに感染した時に、感染を予防したり重症化を防げるということになります。新型コロナウイルスは、体にとって「有害」な物なので、このような反応はアレルギーとは言いません。
しかし免疫に関わるこのIgMとIgGの抗体が、実はアレルギーにも関わっています。自分自身にある、本来なら「無害」である細胞表面の抗原を「異物」と認識してしまうような場合があります。例えば、自分の赤血球や白血球、血小板などの細胞に、IgMやIgG抗体が結合し、様々な免疫細胞を活性化させることで、赤血球などの自分の細胞を壊してしまうというものです。このような反応を「細胞障害型アレルギー(2型アレルギー)」と呼び、それによって起こる疾患を「自己免疫性疾患」と言います。
細胞障害型アレルギーによる自己免疫性疾患には、例えば、自己免疫性溶血性貧血や、血小板減少性紫斑病、甲状腺機能亢進症(バセドゥ病)、甲状腺機能低下症(橋本病)、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎など、様々な物があります。広い意味ではアレルギーの反応ということになります。
そして、IgAという抗体も、免疫やアレルギーに関わる免疫グロブリンなのですが、これについては、別の機会に解説したいと思います。
さて、先ほどの細胞障害型アレルギーを起こすIgMとIgG抗体なのですが、実は別のタイプのアレルギー反応を起こします。それが「免疫複合型アレルギー(3型アレルギー)」と「遅延型アレルギー(4型アレルギー)」と呼ばれる物です。とても複雑なのですが、重要な内容なので説明をします。
「免疫複合型アレルギー(3型アレルギー)」は、体内のある抗原に対し、IgGとIgM抗体が複合体を形成し、その複合体が血液を流れたり、組織に沈着し、炎症を起こしたり、ダメージを与えるようになります。その結果、発疹や痛みなどの症状を起こすことになります。免疫複合型アレルギーによる疾患の例としては、SLEや関節リウマチなどの膠原病や、糸球体腎炎などが挙げられます。
そして「遅延型アレルギー(4型アレルギー)」は、体外の細菌やカビ、金属や化学物質などの抗原に対し、T細胞という免疫担当細胞が反応し、様々な反応を起こすもので、その反応が、抗原と接触してから24〜72時間とゆっくりした反応が見られるため、「遅延型」と呼ばれます。このような遅延型アレルギーによる疾患の例としては、金属アレルギーなどの接触性皮膚炎や、ある種のアトピー性皮膚炎などがあります。
さて、かなり長い説明になりましたが、なぜアレルギーの話をしたかと言うと、「食物不耐症」と「遅延型フードアレルギー」という用語の説明をする上で重要だからです。
まず食物不耐症についての説明です。これは、ある食物を食べた時に、すぐに反応は起きないのですが、数時間後〜数日後に、頭痛や疲労、腹部膨満感、皮膚炎などの症状が起こるという症状です。先ほど説明した、即時型アレルギー(1型アレルギー)は食べてすぐ反応するので分かりやすいのですが、食物不耐症は、症状の原因として分かりにくく気付かれにくいです。免疫による反応であったり、ある種の酵素が足りないなど、原因は様々です。
そして遅延型フードアレルギーという用語があり、広い意味での食物不耐症になります。食物に対するIgG抗体ができて、それが慢性的な炎症を起こすために、様々な症状が起こるとされています。これは医学的に認められた用語ではありませんが、そのような現象が実際にあるという認識は広まってきています。
この遅延型フードアレルギーを調べる検査が、自費診療で行われることがあります。微量な血液から、100種類以上の食べ物に対してIgG抗体を調べ、それが上昇している食べ物は不耐症を起こしている可能性が分かるという検査です。通常の保険診療をしている医療機関では行っておらず、自費診療をしている医療機関で行っています。検査には4〜5万円ほどするようです。即時型アレルギーであるIgE抗体を調べる1型アレルギーの検査とは全く意義が異なる検査になるので注意してください。
さて、腸内環境を整える治療をされている医療機関のHPやブログを見ると、この「遅延型フードアレルギー」についての様々な意見が記載されていて、肯定的な意見と否定的な意見が書かれた記事を良く見ます。その意見について、少し列挙してみました。
肯定的な意見
・普段食べている意外な食べ物に不耐症があり、注意しないといけないことが分かる
・食べ物に対する反応性を見ているのではなく、リーキーガットの診断に使える
否定的な意見
・食べ物の抗原に対するIgG抗体は、そもそも正常な反応でも上昇し、臨床的意味はない
・食べ物のIgG抗体の上昇は、その食べ物を多く食べているという意味でしかない
・反応性が出た多くの食事を制限すると、健康被害が起きてしまうので良くない
などです。
この自費の食物のIgG抗体を調べることは、今困っている症状が思いもよらない食べ物が原因で起こっている可能性があり、興味を持たれる方も多いと思います。しかし上の否定的な意見のように、反応が上昇したからと言って、必ずしもそれがアレルギーを起こしているとは限らないこと、無闇にその食べ物を制限することによって、こどもの成長に必要な栄養が欠如してしまうことなどの問題点があります。更には、例えば「◯◯を摂らないようにすることで、発達障害の特性が治った!」などの医学的根拠の怪しい治療を勧めるような情報が流れています。それを調べるために、食物のIgG抗体を調べることを勧めるような場合があり問題視されています。IgG抗体の検査をすることは一概に悪い訳ではありませんが、それでその食べ物のアレルギーが完全に確定される訳ではないことをご理解いただいた上で、結果は慎重に解釈するようにしましょう。
繰り返しになりますが、この遅延型フードアレルギーという概念は、即時型アレルギー(1型アレルギー)とは異なります。即時型アレルギーの時のように、その食べ物を完全除去する必要はありません。特に何種類もの食べ物に反応が出た場合、それにアレルギーの反応が出ている可能性もありますが、単に、腸の状態が良くないだけの可能性もあります。あらゆる食べ物を制限して、栄養不足にならないように注意しなければいけません。
そして、アレルギーとは言え、即時型アレルギーではありませんので、この検査の結果をアレルギー科や小児科に持って行き、栄養相談しても困ってしまう場合があるので気を付けてください。
今回は、ちょっと長い話になりましたが、アレルギーと食物不耐症についての説明をしました。アレルギーには色々な種類があり、いわゆるIgE抗体による即時型アレルギーとは違う、ゆっくりとしたアレルギーである遅延型アレルギーという物があること、その検査はあるが、慎重に解釈しないといけないことなどを解説しました。次回は、「グルテン・カゼインの不耐症とその制限」について説明したいと思います。
