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前回の脳腸相関に引き続き、今回は「リーキーガット」という概念について説明したいと思います。

 

生き物は一般的に、小腸と大腸という腸管があります。小腸は約6〜7メートルの長さで、主に食べ物の消化や、栄養素(アミノ酸、糖質、脂肪酸)の吸収などの働きがあります。そして大腸は約1.5〜2メートルの長さで、主に水分の調整やミネラル分の吸収をし、便を作る働きがあります。

 

前回説明した腸内細菌は、小腸には1割しかおらず、大腸に9割もいると言われていますが、小腸の大事な役割として免疫機能があります。腸内に侵入した細菌やウイルス、食べ物の抗原などに対し、IgAという抗体を作り、これらの「異物」が腸内で過剰反応しないように、免疫を抑制しています。大腸では、沢山の腸内細菌の働きによって、病原菌の増殖を抑える働きがあります。

 

小腸の壁は、4層から構成されますが、最も内側には「粘膜層」という層があり、ここでアミノ酸や糖質、脂肪酸などの栄養素を吸収します。この粘膜層の上皮細胞は、タイトジャンクションというしっかりした結合で強固にバリアが作られています。このバリアのため、細菌やカビ、食べ物の抗原などが体に侵入しないように守られています。しかし、心身のストレスがあったり、感染症、ある種の食材、添加物、抗生物質などの薬物、アルコール、腸内細菌のバランスの乱れなどがあると、このタイトジャンクションの細胞間の隙間が拡がってしまいます。すると、本来は腸内に侵入できないはずなのに、細菌やウイルス、未消化の食べ物、毒素などが、腸(ガット)から血液中に漏れ出す(リーク)ことになります。

 

漏れ出た異物に対して免疫系が反応し、慢性的な炎症や、自己免疫疾患、精神の不調などが見られるようになるのですが、その状態をリーキーガットと言います。リーキーガットは、病名ではなく、「状態」を表しています。リーキーガットの状態は、実際に内視鏡や画像検査などでは分からないので、このような概念は、医学的には確立されていません。なので、医師の間でもほとんど認知がされていない用語となります(下竹もあまり詳しくありませんでした)。しかし腸内環境が悪くなることで様々な症状が起こる現象は多数報告されており、腸のバリア機能が低下するという概念は、認められつつあります。

 

リーキーガットを直接調べる検査はないのですが、腸管タイトジャンクションを構成する、ゾヌリンやオクルディンというタンパク質が、体内に漏出し血中に存在しているかを調べたり、腸内細菌の構成成分であるLPSという物質や、カンジダという本来は血液中に存在しないカビが、血中に存在しているかを調べる検査があります。これは、保険診療ではできず、自費診療で行う物になります。

 

リーキーガットがあると、腹痛や下痢、便秘、腹部膨満感などのお腹の症状だけでなく、脳腸相関により、頭痛、めまい、立ちくらみ、動悸、倦怠感、不安、イライラ、不眠、起床不良などが起こります。この記事を読まれている方は、「あれ?この症状は起立性調節障害の症状そのものじゃないの?」と思われる方も多いと思います。確かにその通りで、両者はとても共通する症状があり、起立性調節障害の症状と思っていた症状が、実はリーキーガットの症状であるかも知れないのです。

 

起立性調節障害では、起立により、立ちくらみや頭痛などの悪化があり、血圧や心拍数の変動があって、午前中に最も強い症状となります。リーキーガットでは、このような起立による症状や午前中の強い症状は見られず、腹部膨満や下痢、腹痛などの症状が強くなります。勿論、両者が共存する場合もあり、共存した場合は、脳腸相関から、自律神経のバランスが更に崩れ、起立性調節障害の症状が悪化する可能性が高く、治りにくい状態になっていると言えます。

 

先ほどの説明のように、リーキーガットを調べる検査は、特殊な自費診療に限られますので、診断を確定させるのはとても難しいです。従って、起立性調節障害の子に、リーキーガットがどのくらいの割合で合併しているか?を報告した文献はありません。しかし普段の外来で、こじれた起立性調節障害の子が、下痢や便秘、腹痛、腹部膨満感などのお腹の症状を訴えていて、リーキーガットの合併を疑う子は多いと感じています(感覚的に半分以上はいると思っています)。

 

リーキーガットがあるから起立性調節障害が悪化するのか?それとも、起立性調節障害の悪化やリーキーガットがあるくらい食生活や睡眠リズム、ストレスなどの状態が良くないから症状が悪くなっているのか?は分かりません。しかし、今後、腸の環境を良くする治療をすることで起立性調節障害の症状が改善する子が増えたり、以前にスーパーライザーの治療であまり効果がなかった子が、腸の環境を良くする治療を行うことで、今度はスーパーライザーの効果が出たということがはっきりすれば、リーキーガットにより腸の症状があるため、起立性調節障害が悪化している可能性があると言えることに繋がると考えています。

 

今回は、リーキーガットという概念について、腸の状態が悪くなると様々な症状が起こることを解説しました。腸の環境はどのようにすれば良くなるか?については、また後日のブログで説明したいと思っています。次回は、「アレルギーと食物不耐症」について説明したいと思います。