高校生の時、
女子の弁当箱が
やたら小さかった事を思い出した。

だいたい大きさにして手のひら位だ。

しかも、その大きさは、
体重の重さと反比例していた。

太ってる女子ほど、
弁当箱が小さいのだ。


ダイエット中なのか
といえばそうではない。


痩せたい気持ちはもちろんあるが、
太ってる=大食い
と思われるのが嫌なんだろうと推測した。




しかも、その小さな弁当を、
2, 30分かけてちびちび食べる。

私なら5分あれば
十分食べれる量であり、
逆にどうやったらそんなに時間をかけて
食べれるのだろうと、不思議だった。



次第に、周りに合わせて
自分も小さな弁当箱を持つようになった。

母には、こんなのでお腹持たないでしょ
と、何度も言われたが、
一人だけ大きな(大きくないけど)弁当箱を
持っていくのが恥ずかしかったのだ。


案の定、
いつも5分も立たずして、
弁当を食べ終えてしまう。

私は周りの女子達が
一体どうすればそこまで時間をかけて
食べれるのか、無意識に観察していた。

見ると、
箸で小さく小さく切り、
まるで鳥の雛にエサをやるように
ちびちび口の中に入れる。

恐らく口に入れると
すぐに溶けてなくなるくらいの量だ。


私はその辛気臭い行為が耐えられなくなり、
その反抗心から翌日から
自分のお腹を満たせる大きさの
お弁当箱を持っていくことにした。

大きさにして、
10 × 15 cm 位を2つ。

一つにはご飯、もう一つにはおかず。
さらにデザートは別。


昼休憩になり、
持ってきた2つの弁当箱を
広げる時が来た。

私は何も言わずに
そおっと弁当袋から取り出した。

すると周りの女子達の反応はどうだろう。

「わー、すっごい!」
「そんなに食べるのー」
「ちょっと、多いんじゃなーい?」
「男子みたーい」

と、教室中の男子に届くよう
普段の3割増しの大きな声で、
「大食い女」というレッテルを貼りつけようとしてきたのだ。


すると、横にいた男子が

「おまえら、そんな小さい弁当食べてるから
逆に太ってんのと違うか?」

と言い、
一瞬でそこにいる女子達を黙らせた。







あれから数十年。

弁当箱が小さかった女子たちとは、
今でも時々ランチする仲なのだが、

今では当時食べていた量の
3倍は平気で食べている。

ビッフェスタイルのおしゃれな場でも
何度も何度も席を立ち
その都度、皿一杯に盛ってくるのだ。

別に、大阪のおばちゃんだからではない。





私は当時のことを聞いてみた。

「高校の時のお弁当箱って、みんな小さかったよねー。小鳥のごはんみたいに」

ほとんど皆が思い出せない中で、
一番小さなお弁当箱だった彼女だけがこう言った。

「あの時、実は誰か早く普通のお弁当持ってきてくれないかなって思ってたの。だから大きいの持ってきてくれて正直ほっとした」

と。


隣の席に常に男子がいる
共学校だったからか、
女子たちは、
少食でかわいい女と思われたいが故に
互いを牽制しあい、
意地の張り合いをしていたのだ。




いつから腹一杯になるまで、
周りを気にせず堂々と食べることが
平気になるのだろう



きっとそれは、
おばさん年齢に達したからではなく、
周りに恋愛対象の男たちが
いなくなった時から始まる、
自然現象なのかも知れない。


ダイエット成功には、
いつまでも可愛い乙女な心と
まわりの環境が大事であることを
しみじみ思ったのだった。



ボディメイクコーディネーターYoko