吉村昭『漂流記の魅力』

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  吉村昭さんの『漂流記の魅力』(新潮新書)を読みました。

 

 大学でイギリス文学を専攻した私がかねてから抱いていた疑問は、同じ島国・海洋国家なのに、イギリスは海洋文学が盛んで、日本にはそれがない、この違いはなにに由来するのか?というものです。本書の冒頭で吉村氏は実に明解にこの疑問に答えてくれています。

 

 日本には「漂流文学」がある、というのは知られざる日本文学の魅力に気づかせてくれる鋭い指摘です。漂流と聞くとジョン万次郎とか大黒屋光太夫を即座に想起しますが、吉村さんはあまり知られていない「若宮丸」の遭難・漂流に着目し、本書ではそのことについて語っています。単に自然との戦いの漂流だけではありません。乗組員同士の確執、凍てついたロシアの大地での格闘、キリスト教に改宗したために、ようやく帰ってきた日本に受け入れてもらえない…などの人間ドラマが繰り広げられます。

 

 実にあっさりした本で、物足りないとも言えます。興味がもてれば、さらに詳しい本にあたるといいでしょう。