旅の始めに私はフレッドに言った

「あなたとはもう終わった関係よ

　　　私には既にほかに交際している人がいるの

　　どうしてもついてくるというのなら

　　　友達という関係を理解してほしいのよ」

彼の答えはおめでたいものだった

「わかったよ、でも交際しているのは嘘だね

　　　もし本当だとしても僕は構わないよ

だってきみと僕は生まれる前から運命で結ばれているんだ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それを忘れたのかい？」

「その考え方迷惑なんだけど・・・(￣＾￣)」

どんな相手でどんな出会いか・・・

そこまで話してもフレッドは“僕らの運命”それしか言わない

そして１時間近く話した末に

「いずれ分かるさ、誰も僕らの間には入ることができないと

　　　　　　　　　とりあえず、どこへ向かう？」

―もしかしてこの単純野郎、心中でもするつもりかしら？―

そうも思ったがとにかく時間を無駄にしたくなかったので

私は車を走らせた

とくに目的地などないのだ

　私のドライブはいつもそうだ

　テーマパークや観光名所巡りなどなくていい

　地図をみて行きたい方向にある街を目指し

　着いたら街の雰囲気を楽しみ

　そしてまた次の街を目指す

　走り疲れたら安全そうなモーテルで休む

走っていれば楽しいのだ

もしも興味をそそる街を見つければ

また改めて時間を見つけて来ればいい

東京にいる頃もそうだった

　仕事で地方へ行くことが多かったせいもあるが

　２０代で全都道府県は制覇した

　仕事のついでや急な休みができると

　思い立ってどこかへ行ってしまう

　車、飛行機、バス、電車・・・船、方法も宿も決めない

　制約されているのは時間だけだった

しかしアメリカ全州は日本の都道府県とは規模が違う

一生のうちどれだけの街を訪れることができるのかしら

とりあえず東海岸の州を順に南下した

リッチモンド(Richmondo,VA)、ローリ(Raleigh,,NC)、

フローレンス(Florence,SC)などいろいろな街を経由し

３日目にはアトランタ(Atlanta,GA)に着いた

そして私の憧れだったナッシュヴィル(Nashville,TN)を目指した

カントリーミュージックの中心地でMusicCityとも呼ばれている

元シンガーとしてはぜったいに外せなかった

それにもう一度必ず訪れたい街になった

通りにはいくつものライヴハウスが建ち並び

昼間でもお酒を飲みながら生演奏に合わせて人々が踊る

歩いていればどこからか演奏している音楽が聞こえる

みんな陽気で気取らない街だ

同じテネシー州のメンフィス(Memphis)は

　　ブルースジャズの町として有名

今回は時間が足りず行けなかったので

次回はぜひテネシー州のんびり旅行したい

そしてナッシュヴィルからまた２日間掛けて

復路は少し内陸側の街を順に巡ってボルチモアへ戻った

レンタカーを返却しバスでＮＹへ無事帰還

ヴァケーション１週間をフル活用の旅になった（‐＾▽＾‐）

しかしながら・・・旅の最中は

フレッドにとって私は恋人、私にとっては友達

という温度差があったことは確かで

くだらないことで何時間も喧嘩をした

ほとんどはフレッドの方向音痴が原因、アフリカの草原で育ったから仕方ない

野生のライオン、へび、さそり・・・なんでもありだったらしい、病気になったら呪術師頼み

時には二人子供のようにはしゃぎ

それなのに30分後には冷めきった関係

そしてベットは共にして・・・・・

なんだか中途半端で精神的に休まる旅とはいえなかった

しかし、さすがにひとりでは1,750マイル（約2,830km)のドライブは困難だし

ここはアメリカ、安全な街ばかりとは限らないので

今となってはフレッドが同行してくれたことには感謝している

それにたくさんの思い出と経験は私の宝物になった

　　　　　Thanks to you, Fredd

中途半端な・・・

　友達以上、恋人　未満　以下な関係は

今後さらなる問題を生んでしまうのだ

Episode.022友達以上、恋人以下?の旅