コーヒーショップ
サイコロ
歌う
「センパイ、今日お昼どうします?」
「うーんどうしようか?」
午前の仕事時間が終わり、お昼ご飯のことを考える。
「じゃあ、ちょっと気になってるお店があるんですけど、そこ行きませんか?」
「お?そっちから誘うの珍しいじゃん。そこいこっか」
「やったぁ」
今日のお昼は後輩の提案に乗ることにした。うちの部署は20人ほど所属してるのだが、ほとんどの人が外に出ている。社内で作業しているのは、自分と後輩以外に50代の部長だけだ。部長はいつも愛妻弁当を食べている。
去年まで、1人で食べていたが、今年からは新入社員の後輩と一緒に食べるようになった。入社3年目で年も近いこともあり、接しやすい。
「あそこです」
「コーヒーショップ?」
「そうなんです!ランチも食べれるみたいで、気になってたんです」
オシャレというよりは、シックで落ち着いた雰囲気のお店だった。店に入ると、初老の男性がカウンターに立っていて、いかにもマスターっぽかった。
「いらっしゃいませ。お好きな席どうぞ」
優しい口調で案内してくれた。俺たちは窓際の明るいテーブル席について、メニューを広げた。「お?意外としっかりしたメニューだな」
サンドイッチやパンケーキみたいな軽めなものを想像していたが、メニューには、パスタやハンバーグなど、喫茶店には無いようなメニューが並んでいた。
「お冷やです。オススメはパスタセットです。お決まりになりましたら、お声掛けください。」お冷やを置くとカウンターに戻っていった。
「パスタセットがオススメだそうですよ」
「そうだな。好きなパスタとコーヒーの種類選べるのか。しかもコーヒー2杯まで飲めるのか」
「これで500円は安いですね」
「じゃあ、ナポリタンとアメリカンにしようかな」
「私はミートソースとブレンドにします」それぞれ注文を伝え、出てくるのを待った。
5分ほどして料理が届いた。
「本格的だな」
「コーヒーもすごくいい香りです」
まずはコーヒーを一口のみ、その後パスタを食べる。どちらもすごく美味しい。
「すみません、砂糖とミルク遅くなりました。」
「あ、ありがとうございます」サイコロ状の角砂糖が入った小瓶と、可愛らしい猫のミルクピッチャーを持ってきてくれた。
「センパイ!これ可愛くないですか!?」
「猫は珍しいかもね」
そんな話をしながら、昼食を楽しんだ。もう一杯のコーヒーはエスプレッソを注文して、食後の余韻を楽しんだ。
会計を済ませ、会社に向かう。上機嫌な後輩から鼻歌が聞こえる。
「それ何の曲?」
「あ、○○って曲で、最近ハマってるんです。」
「そうなんだ、よく歌うの?」
「最近はよく歌うかもです」
「今度、その曲聞いてみるわ」
「ぜひぜひ」
後輩の鼻歌と、鼻に残るコーヒーの香りが妙にマッチして、また行きたいなと思った。