狼と狐と人間と(9) | 柿ピーの執筆活動

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教室に入った俺は、いつもの雰囲気と違うことに気がついた。何だかクラス全体のざわつきが目立つ。とりあえず自分の席につきボーと窓の外を眺めていた。しばらくして、担任が教室に入って来た。
「ホームルーム始めるぞ~みんな席につけ」
彼はユルい句調で生徒に指示した。
「はい注目、このクラスに転校生が来ることになったぞ」
転校生という単語を聞いた途端、ワクワクとした空気が充満した。俺にとってはどうでもいい事だが。
「入っておいで」
そう彼が声をかけると、1人の少女が入って来た。
「じゃあ、適当に自己紹介してくれ」
そう言われ
「はい、転校生の鬼山 魅羅(きやま みら)です。こっちに来たばっかりで何もわからないけど、よろしくね~」
と挨拶した。鬼山という苗字に聞き覚えがあったが、思い過ごしだろう。
「そうだな~席は1番後ろの窓側2番目にするか。丁度空いてるし」
「わかりました」
そう言って彼女が歩いてきた。
『ん?窓側2番目の1番後ろって俺の隣じゃね?面倒くせぇ。』
そう心の中で呟いてるうちに隣に彼女が座った。
「鬼山魅羅です。よろしくね」
「あぁ」
俺は素っ気なく返し、また外を見た。
『なんだこいついきなり声かけてきて。ってか香水でも使ってんのか?メチャクチャ臭え』
そんな事を思ってるうちにホームルームが終わった。そしてその瞬間に隣の席は人に囲まれた。
「魅羅ちゃんって前はどこにいたの?」
やら
「今はどこに住んでるの?」
やら、転校生によく質問するランキングを作ったら上位に食い込むであろう質問をどんどんしていた。

そうこうしているうちに授業が始まった。
「ゴメン、教科書ないから見せてもらってもいい?」
そう言われ
「構わない」
と言いながら教科書を差し出した。
「え?借りちゃったら、狼咲くん見れないじゃん」
「構わない」
「え~それじゃあ申し訳ないよ」
そう言って自分の机をオレの机にくっ付けた。
「これなら2人で観れるでしょ?」
「あぁ」
そう答え、渋々隣に来た彼女の匂いを我慢するのだった。

午前の授業が終わり、昼休みになった。
「ねぇ、狼咲くん。一緒にお昼食べてもいい?」
そう聞いてきた。
「構わない」
そう言って俺は自分のカバンを持って教室から出た。無言で廊下を歩く。階段を登り屋上のドアを開けた。俺は正面の柵の前まで歩いて行き、適当なところに座った。数秒して屋上のドアが開き、彼女が出てきた。
「はぁ、はぁ、狼咲くん歩くの早いね」
俺の前まで来るとそう言った。
「そうか?」
「身長高いからこのスピードが普通なのね」
そう言いながら、目の前に座った。俺はカバンからコンビニで買ったパンやらおにぎりやらを出して淡々と食べ始めた。
「いつもここで食べるの?」
「いつもとは限らない」
「そうなんだ~今日はなんでここなの?」
「なんとなく」
「へ~」
彼女は弁当を取り出し食べ始めた。バランスのとれたメニューだった。食べてる間は無言だった。特に興味もないので、こちらから話しかける事はしなかった。
俺は用意してたものを食べ終わると、バックを枕にして寝転んだ。
「食べてすぐ寝ると牛になっちゃうよ~」
彼女は口に入ってたものを飲み込むとそう言った。
「それが本当なら、俺は中学でとっくに牛になってる」
そう言うとまた無言の時が流れた。

しばらくして携帯のアラームがなった。
「そろそろ時間か」
そう呟いてる手をついて身体を起こすと、右手に床ではないものを感じた。
「ん?」
俺は右手の先を見た。
「あっ」
右手の先にあったのは、いつの間にか隣で寝ていた彼女のこと胸だった。そして、俺には恥ずかしさと憎悪でいっぱいの目が向いていた。
「悪い」
すぐに手をどけて立ち上がると、何事もなかったように自分のカバンを持った。
「時間」
言って彼女が立ち上がるのを見届けると、背中を向け教室へ向かった。後ろから足音が付いてくるのを確認しながら。