東進堂から、ソーシャル・エモーショナル・スキル(SEL)の本を出しました。

 

 

まず中身なんですが、いわゆる「非認知スキル」と言われる領域を扱っています。コミュニケーション、自己理解、問題解決、チームワーク、感情のコントロールなど、テストでは測りにくいけど、実際の社会ではかなり重要になる力です。

 

正直、この本の紹介、少し待ってたんだけど、というのは、Amazonのページにちょっとした不具合があって、著者名がうまく表示されない状態で、プロフィールは出ているのに名前が出ないという(笑

修正されてからにしようと思っていたんですが、なかなか直らないので、先に書いておきます。

 

この本、実は背景は結構古くて、10年くらい前にOECDの小原さんさんと話をしたところから始まっています。当時から、ソーシャル・エモーショナル・スキルって重要だよね、という認識はあったんですが、じゃあそれをどう整理するのか、本にするならどうするのか、という所では止まっていた。

 

個人的にも、その頃はUNICEF本部にいて、人間関係とか組織の中での動き方とか、いろいろ考えることが多かった時期で、自分の場合は、博士号を取ると、いわゆる「学歴としてのゴール」は一旦終わってて、でもその後も人は学び続ける。その「学び」って何なんだろう、というのはずっと引っかかっていた。


例えば、職場でも、少し成績が良い人よりも、一緒に働きやすい人の方が結果としてチームの生産性は上がるわけで。前向きで、周りとちゃんとコミュニケーションが取れて、チームとして動ける人。結局、仕事って一人で完結することはほとんどないので、他者との関係性がかなり重要になります。

 

知識やスキルを増やすのももちろん大事だけど、それとは別に、人として成長していく領域がある。それがSELだと思っています。

 

こういう話自体は新しいものではなくて、実はかなり昔から言われていて、ただ、テストで測れる学力の方が扱いやすいしのと、工業化とかいう次代のニーズにもあったので、そちらが全世界の教育の中心になってきた、という流れがあります。

 

一方で、日本の小学校教育なんかを見ると、実はかなり丁寧にこうした力を育ている。教材の設計や授業の進め方を見ても、共感や他者理解といった、人間として重要な力をかなり意識しているんですよね。幼児教育に至っては、むしろSELそのものです。幼稚園は多くの子供にとって家庭以外の生活の場で、自分と同じ年代の子といっしょに過ごす中で、「貸して」「ありがとう」「ごめんね」といったやり取りを通じて、社会性を学んでいきます。

 

面白いのは、このSELがずっと重要であるにもかかわらず、中学・高校あたりで少し薄れて、社会に出てからまた「リーダーシップ研修」とかの形で出てくることです。結局、チームワークとか問題解決とか、全部SELなんですよね。だから、教育のサイクルの面から見ても実はSELは教育の影の主役であったと言えると思う。

 

ただ、この分野は定義がかなりバラバラで、21世紀スキルとかビッグファイブとか、いろんな枠組みがあって、それぞれがあまりつながっていないという問題があります。

 

今回の本は、そのあたりを整理して、全体像を見える形にしようという試みです。特に第1章は、そういったバラバラの議論を横断的に整理しています。これは、神戸大の院生の方とやって出来上がった手法で、昔ハーバードの先生が作った枠組みに(でそれは若干捨てられてた)命を再び吹き込んだ感じです。

 

少し専門的な部分もありますが、関心がある方には面白い内容になっていると思います。よろしければぜひご覧ください。