昨年の9月以来です、生ガジェヴくんの演奏を聴くのは。

ショパンコンクール本選前でした。

その後、彼の身に起こったことは劇的なものです。それが彼にどんな影響を及ぼしたのか、また演奏はどう変化したのか。私がここに来ている一番の理由は、アレクサンダー・ガジェヴの変貌ぶりを確かめるためです。

 

 

本番40分前開場。

まずは、ガジェヴくん自らプログラム曲について述べた解説書というか演奏ノートを購入。とはいえ、終演後に読むつもり。興味深い内容であることに疑いはないけど、少なくとも今日は先入観を出来るだけ空っぽにして聴きたい。

 

中央ブロックの前から3列目下手寄りの席。音は頭の上を通りすぎちゃってあまり良くない、そのかわりピアニストの表情と手はテレビ映像のアップ並みに良く見えるという、その通りの席でした。

 

ピアノはスタインウェイ。いち早く撮影したら、後続の方々が引きも切らずやってきて撮影会が始まりました。挙げ句、立ち話に花を咲かせる女性たちも。

 

 

段々に埋まっていく客席を改めて眺めまわすと、おそらくは90%女性それも3~40代くらいの女性が中心ではと思われました。

 

浜離宮朝日ホールと同様に、照明を落としてガジェヴくんの挨拶。内容も同じで、私たちが会場に到着した時点から心得ていたことです。

 

2分間が過ぎるころ控えめな靴音とともにガジェヴくん登場。暗いとはいえ近いのでよく見えます。照明が入ると間を置かず1曲目がはじまりました。

 

あとは美しい夢の中、私たちの「魂の旅」の続きです。

1600余名が入場しているはずのホールのしわぶきひとつ聞こえない中で、ただひたすらスタインウェイに向かうガジェヴくん。

 

 ソナタの3楽章でしたか、一瞬意識が飛びました。単なる寝落ちだったのかもしれませんが、小学4年生頃似たような経験をしました。それを寝落ちと思えないのは、野球の練習の最中に起こったことだったからです。グランドを走り回っていた記憶が甦りました。あれは何だったんだろう。そして今回のは…

 

そうこうするうちカオスの4楽章が始まりました。これまで聴いた中でも特に力がこもった激しい演奏でした。それまでは陶然として聴いていましたが、4楽章だけは彼の姿に注目して耳を傾けました。

ソナタは更に陰影の濃い演奏になっていると感じました。

 

休憩後はシューマンです。

 

(後半に続く)