5月19日(土)19時 シアターコクーン

とうとう行ってきました『シダの群れ』。

「救いようのない悲劇なのにこのカタルシス感はなんだろう。」

終演後まず思ったことです。一番カッコよかったのは水野です。筋を通した、ということでしょう。美学に殉じた訳だ。命のやり取りをするからやくざの世界ということになるのでしょうけど、そのフィクションの中で動いているのは、組織や家族や過去のしがらみを背負いながらなんとか納得のいく生き方を求めている我々自身に他ならない。水野の鮮やかな生き方には感銘を受けます。ヨシエが水野の視野や観点の深さ・広さを感嘆する場面がありますが、それが最後に観客にも証明される。このカタルシスは水野の生が全うされたからかもしれません。坂本は自らのせいで一番大事にしていたものを失ったがゆえに、確実に水野の遺志を継ぐでしょう。水野の心事が根っこからわかるのは坂本だけなのですから。最後にカッコよかったのは坂本です。


風間杜夫さんは映画『蒲田行進曲』からうまい役者だと認識していましたが、ここまでとは思いませんでした。舞台を見るのは初めてです。存在感が半端じゃない。融通無碍の芝居は懐が深くて魅せられます。途中から登場を期待している自分に気が付きました。改めて注目していきたいと思います。


役者の声の話を話題にしたことがありますが、発声とも関連して滑舌の良しあしが今回特に際立っていると感じました。主役の3人は流石です。堤さんについては以前触れているので当然として、風間さんも普通にセリフを云ってるのに全部わかる。松雪さんもあの絡みつくようなセリフがよく届く。


評価がまちまちだとも聞いていましたが、私には大変面白かった。自分の中にいつの間にか溜っていた澱のようなものの幾分かが流れ去ったような、というか、忘れていた昔の信条を思い出して、ちょっと身の引き締まる思いがしたような…。

この項続きますね。