東京電力は、福島第1原発で汚染前の地下水を海に放出する「地下水バイパス」計画で、は17日、地下水をくみ上げる井戸12本のうち1本から放出基準(1リットル当たり1500ベクレル未満)を上回る放射性トリチウム(同1600ベクレル)が検出されたと発表した。
基準は東電と国が独自に定めており、基準超えは初めて。
12本の井戸水はすべて一時貯留タンクに集められている。東電は同日、基準を超えた井戸からのくみ上げを一時停止。18日に水を再分析して一時貯留タンクの水が基準を下回っているのを確認した上で、くみ上げを再開する。
「基準が適用されるのは一時貯留タンクの水。ほかの11本の井戸水は基準を下回っているため、地下水バイパスの運用に影響はない」と説明している。
基準を超えたのは、最も南側の井戸から15日に採取した水。
これまでの最高値は同1300ベクレル(8日採取)だった。この井戸は昨年8月に汚染水300トンが漏れた貯蔵タンクがある場所から東約130メートルにあり、土壌に染み込んだ放射性物質が地下水に混入している可能性がある。【鳥井真平、斎藤有香】
回答着実に実行を!地下水バイパス決定で漁業者不安(福島民友)
[東京電力福島第1原発事故の汚染水対策の地下水バイパス計画をめぐり東電が4日、県漁連に提出した回答書は、原子炉建屋に流入する前にくみ上げ海に放出する地下水について、放射性物質のトリチウム(三重水素)濃度を法令基準(1リットル当たり6万ベクレル)の40分の1の同1500ベクレルとするなど運用目標を明記、定期的な測定結果を確認しながら海洋放出を進めることを約束した。しかし、計画を容認した漁業者の不安は拭えない。
いわき市で開かれた県漁連の理事会後、東電の新妻常正常務は報道陣に
「受け入れていただき、大変感謝している。運用目標を厳守していく」と述べた。東電は関係市町村に計画を説明した後、東電と第三者機関で地下水を詳細に分析する方針。海洋放出は早ければ5月初旬に始まる見通し。
出席した各漁協の組合長は、回答内容に一定の評価をした一方、今後への不安も口にした。相馬双葉漁協の佐藤弘行組合長は
「国と東電は回答書の内容を着実に実行してもらいたい」と注文。試験操業の魚種拡大も見込んでおり
「地下水バイパス実施後の風評被害も先が読めず、まさにここから」と気を引き締めた。
いわき市漁協の矢吹正一組合長も
「国と東電の回答が絵に描いた餅にならないようにしてほしい」とくぎを刺した。
その上で「正式に実施が決まったこれからがいばらの道」と話した。]