
| 『シーランチ』(←建築物)は、アメリカの地の果て 海に面した断崖に |
| 孤高の生き物のように佇んでいます。 |
| 人間と自然は、共に融け合うように生きていけるのか? |
| その使命を叶えるために、 |
| 偉大な建築家と多くの仲間達が造り上げた 木造の家です。 ------------------------------------------------- |
| 十数年前の秋、テレビで特集されていました。 |
| ちょうど私は、家造りを考えてる真っ最中でもあったし、 |
| なにか感じるものがあって テレビに釘付けでした。 |
| 当時(1960年代)のアメリカは 物質文明が頂点を極め、 |
| 周辺の環境を活かす建築家など ほとんど居なかったそうです。 |
| そんな中 造り上げられた 『自然と共存する家』とでも言いましょうか。 |
| それは、建築界を刺激しただろうし、私も刺激され感動しました。 |
| 『シーランチ』に関する詳しい事は、以下に書いてみました。 |
| HPから抜粋し編集しただけですが^^; よかったら ご覧ください。 |
| 長い歳月をかけ どれほど想いを込め造られたかが、よく分かります。 |
| ↓ ↓ ↓ |

アメリカのサンフランシスコから北へ160キロほど離れた辺鄙な場所に、シーランチという土地がある。太平洋を望む海沿いの荒涼とした街だ。その寒々とした海へ突き出した断崖の上に、チャールズ・ムーア作『シーランチ』は建てられている。

軒も庇もない木造住宅。海風に飛ばされてしまうので最初から何もついていないのだ。まるで積木のような住宅が10戸、肩を寄せ合うように並んでいる。

厳しい天候に晒されてきた外壁のレッドウッド(杉の板)が履き古したジーンズのように味わいのある風合いを醸し出している。

『シーランチ』の誕生は、1962年、土地開発業者のアルフレッド・ポークが、シーランチの海沿い16キロの細長い土地を買ったことから始まる。誰も見向きもしないような海沿いの荒れ地2000ヘクタールが別荘地として売りに出ていたのだ。ポークは、コンクリートとブルドーザーが嫌いな男。既存のものとは全く違う、新しいコミュニティーをこの大地に作ろうと考えた。

そこでポークは、天才造園家ローレンス・ハルプリンにシーランチの土地調査を依頼する。どんな自然環境か?年間を通じて風はどう吹きつけるのか?波はどんな状態で断崖に押し寄せるのか?

どんな生態系を育んできたのか?この土地で原生していた植物は何か?この土地でしてよいこと、いけないことは何か?など。ハルプリンはシーランチでキャンプをしながら、一年という月日をかけて克明に調べ上げていった。

ハルプリンが出した結論は「極力何もしないこと」。しかも、この土地が荒らされる前の元の生態系に戻していこうという意図まで盛り込まれていた。人々が生態系の一部になれば、野生の動植物と人間の共存は、高い次元で実現できるのではないか、とハルプリンは考えるに至った。

おそらく、建物を建てる前にそこまで環境調査をしたのは、世界的に初めての例だったろう。次にその調査結果をうけ、ポークはチャールズ・ムーアに設計を依頼する。

ムーアは当時仲間たちと事務所を立ち上げたばかりの、若くて貧しい、駆け出しの建築家だった。ムーアは事務所の仲間たちと共に、極力環境に負担をかけない、新しい時代の建築のあり方を模索していった。

彼らにはある一つのイメージが浮かんでくる。美しい田園に佇む農村の風景。そこには茅葺き屋根の住宅があり、その内部には剥き出しの梁や柱・・・。まさにそれは日本の民家だった。

デザインを決定したのは、この土地の木材だった。レッドウッドと呼ばれる杉の木だ。土地の材木を使うことが、最も自然に負担を与えないとムーアたちは考えた。

しかし問題は、10戸の住宅をどう配置するかということだった。風の問題、景観の問題等が不平等にならないようにと幾度も検討を重ねていき、遂に『シーランチ』の建設が始まった。

自然を痛めないようにと、土壌整備や木材の搬入に一年の歳月をかけて・・・。

その頃のアメリカは工業化が進み、すでに物質文明が頂点を極めていた。建築界でも、厳しい自然を征服しようとする文明が定着していたため、自然と溶け合うことを目的にした『シーランチ』はアメリカ建築界に大きな衝撃を与えた。

謎と伝説に満ちた建築家チャールズ・ムーアは、後にイエール大学及びカリフォルニア大学の建築学科主任教授を務め、さらには合衆国建築顧問に就任した。言わばアメリカ建築界の頂点にのぼりつめた男である。

しかしそのキャリアとは裏腹に、彼の作品にはユーモアと遊び心があり、とても風変わりなものが多いことで知られている。

『シーランチ』は、空間の魔術師と呼ばれたチャールズ・ムーアの魅力と哲学が最もよく表れた作品なのである。