交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 タイムループ(一定時間の繰り返し)を題材にした作品は『恋はデジャ・ブ』『ミッシ
ョン:8ミニッツ』などありますが、映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(製作:
2014年アメリカ/主演:トム・クルーズ)は、SF戦争アクションというスリリングさに
加え、とにかくテンポがあってグイグイ引き込まれる作品です。

オール・ユー・ニード・イズ・キル 【ウィキペディア:あらすじなど】
映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』IMAX予告編 【YouTube】

         ※         ※         ※

 本編のうち起句(約30分)はタイムループ現象により主人公のケイシ少佐が“戦闘→死
亡→戦闘→死亡……”を繰り返します。その後も“死ぬとリセットされる”が物語展開の
コンセプトです。死亡の原因は戦死であったり、自らのミスでトラックにひかれたり、戦
闘で出逢った英雄兵士のリタがタイムループをリセットするために射殺したり……様々。
ケイジは“死んでも前の記憶が残っている(タイムループ作品の大前提といえる)”ので、
リセットされて出発点に戻り同じ出来事に遭遇したとき、前の経験を踏まえて対処(スル
ーしたり違う言動をとったり)します。

【シーン展開のイメージ】
  横軸は展開するエピソード(シーンの柱)をイメージしたもの。
    序章  :ケイジ少佐が歩兵に格下げで戦闘要員にされるまでのエピソード群。
    基地内 :移送されたケイジが出撃の航空機に乗るまでのエピソード群。
    航空機 :戦闘地域に降下するまで航空機内のエピソード群。
    戦闘(他):戦闘やその他のエピソード群。
  縦軸の(1)(2)(3)…はタイムループの回数をイメージしたもの。
  あくまでもイメージであり、実際のシーン数やタイムループ回数とは異なります。
────────────────────────────────────────
    序章   基地内            航空機  戦闘(他)
--------------------------------------------------------------------------------
(1) A1 A2 A3 B1 B2 B3 B4          C1 C2 C3 D1 D2 D3 D4 D5 D6
(2)          B1 B2    B4             C2 C3 D1       D4       E1 E2
(3)          B1    B3                    C3 D1
(4)          B1                             D1    D3 F1
(5)                                                F1 F2 F3 F4 F5
(6)          B1 B2    B4 B5 B6
(7)             B2          B6 G1 G2 G3
(8)                                  G3 G4          H1 H2
(9)          B1                G1       G4             H2 H3 H4 H5 H6 …
 :
================================================================================
(*) A1 A2 A3 … B9 X1
────────────────────────────────────────

 第1回目の出来事として(1) A1~D6が展開されます。近未来・ギタイ(エイリアン)・
侵略・防衛軍・地球滅亡の危機といった背景と、軍属報道官ケイジ少佐・階級剥奪・歩兵
・戦闘スキルゼロ・前線基地配属・曹長・分隊兵士・非協力的・パワードスーツ・出撃・
英雄兵士リタ(別分隊)……などポイントとなる人物やエピソードを伝え印象づけます。
当然ケイジにとっても(視聴者も)初めての経験(展開)です。出撃したケイジは(1) D6
で戦死します。そのときアルファ・ギタイ(中枢ギタイ)の青い体液を浴び(後に解明さ
れるネタ)タイムループの能力が宿ります。
 気づくと初めて基地に来た状況……と、曹長に声をかけられます。(2) のB1です。そし
て2回目としてB2 B4 ……と前に経験した(記憶にある)出来事が繰り返されます。タイ
ムループが起こったことなど知るよしもないので、不思議に思いながら適宜に従います。
そして出撃です。(2) のD1で仲間の兵士が戦死するのを知っています。叫んで危険を伝え
ますが助けられません。さらにリタと二度目の出逢いです。1回目のときD4でリタも戦死
します。2回目では助けますが自分が死んでしまいます(D6)。
 3回目。“どうやら死ぬとリセットされてB1の時点からやり直せる。理由はわからない
がループ現象が発生する”と悟ります。繰り返す現実。前の経験を活かし、今度はD1で仲
間を助けますが、自分が死んでしまいリタに辿り着けません。
 4回目。仲間を助け、リタに辿り着く手前で味方の車両にひかれて死にます(F1)。
 5回目。リセットされたシーンはB1でなくF1です。ループ回数を重ね浸透しているので、
B1に戻るのではなく前回死んだシーンに戻り、今度は車両の前をいち早く通り過ぎます。
シーンB1は1秒あるかないかですが、これを見せずしてループが起こったことを伝えてい
ます(理解できます)。そしてリタを助けます。襲ってくるギタイも、その行動を知って
いるかのように退治します(F2~F4)。ケイジに何かを感じたリタは「目覚めたら私を探し
て」と告げ、二人は爆発に巻き込まれて死にます(F5)。
 ここまでが起句といっていいでしょう。目的としては“背景や状況そしてタイムループ
(物語展開の軸)のありようを伝える”“死とリセットの繰り返しの中、同じ出来事なの
にケイジの対応次第で新たな展開(パターン)がどんどん繰り広げられる”。そして“タ
イムループにリタも関係している”という課題を残して承句に繋げています。

 リセットされB1に戻ったケイジは、別の分隊に所属しているリタを探し会います。リタ
もタイムループ経験者ですが、今はその能力はありません(負傷したときの輸血により消
失)。リタの理解者・支援者であるカーター博士の分析によりギタイについていろいろ
されていきます。
 走ってばかり(超高速展開)だと視聴者は疲れてしまいます。少しペースを落として
見て理解するから聞いても理解するに切り替えです。舞台も基地内を主に展開します。そ
してさらに内容を深めると、また戦闘シーンも織り交ぜてスピード感を増します。
 そもそもドラマの見せ方自体が断片的なシーン構成ですが、この映画はそれを進化させ
て、必要なシーンだけを厳選した“いっさいムダのないダイジェスト(要約)方式”で見
せているのが最大の特徴です。またテンポ配分を考えた“メリハリ構成”も勉強になりま
す。次のブロックで何を伝えるか。そのためにはどのループシーンをどう見せて新たな展
開へ繋げるか、「アッ」と思った瞬間、それこそ(録画した映画を)巻き戻しループさせ
て確認するといいでしょう。

 これでもか、といったメリハリの効いたループ現象の見せ方で前半(起句・承句)が過
ぎます。その結果浮き彫りになってきたのが“試行錯誤しつつ何とか戦い抜き勝利を目指
す姿”だと考えます。
 しかし何度繰り返してもリタが死んでしまう結果にケイジは行き詰まります……。
 物語の冒頭、報道官であるケイジは戦闘地域への派遣取材を命じられると、危険な任務
から逃れたい一心で、命じた将軍を脅迫します。つまり本来ケイジは戦闘要員ではありま
せん。“逃げ出したい”という意識が働くはずです。これを克服する要因が“軍の規律”
とか“仲間を見捨てられない”“戦わなければ自分が狙われる(ループ能力を奪い返そう
とするギタイ)”“リタに惹かれる姿”そして何より“逃げても人類滅亡の結末からは逃
れられない”などがあげられます。
 後半の課題は“どう決着をつけるか”です。展開の軸になります。結局一人で戦いを挑
みますが、ギタイの罠にはまり失敗します。それを受けて、救いの手となるのがカーター
博士が開発したオメガ・ギタイ(中枢ギタイ)を逆探知する装置です。博士が将軍に進言
したとき、相手にされず取り上げられてしまい、将軍のもとにあります。ループ能力を使
い装置を盗み出しますが、逃走のとき事故で大ケガを追い、輸血により助かります。しか
し輸血を受けるとループ能力を失ってしまうという設定(物語前半で明らかにされている
ネタ)です。“幸か不幸か”という展開と“予期せぬ”展開で転句を盛り上げています。

 装置を手に入れオメガ・ギタイの居場所を突きとめたはいいが、“ループ能力は消失し
死んだら終わり”という状況に追い込まれます。しかしケイジは諦めません。リタの協力
により分隊兵士の加勢も得て最後の戦い(クライマックス)に挑み、オメガ・ギタイと相
打ちになります。

 圧巻は結句の入り方(見せ方)です。リセットされたときのスタートシーンはB1(もし
くはB1以降)でした。ところがオメガ・ギタイを倒しエイリアン軍団を壊滅させとき、ま
たしても中枢ギタイであるオメガの青い体液を浴びてしまいます。再びループ能力が宿り、
戻ったのは(*)A1 物語の一番最初のシーンです。瞬間“物語全体にピーンと一本の筋が通
った”感じです。ギタイは壊滅し時代が変わったことを知ったケイジは、基地へ足を運び
リタに会います。しかしリタにケイジの記憶はありません。それでもケイジは微笑みを浮
かべます(X1)……。ほろ苦さと爽やかさが印象に残るラストシーンでした。

         ※         ※         ※

 ちなみに原作は日本のライトノベルで『All You Need Is Kill』(著者:桜坂洋)です。
世界に認められた逸品といえるでしょう。

『All You Need Is Kill』 (著者:桜坂洋)【集英社スーパーダッシュ文庫】

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