交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 ドラマおけるクライマックスの考え方のひとつとして“入口 → 滑走 → クライマック
ス本編”の三段構成があります。
 飛行機の離陸をイメージしてください。滑走路の端にスタンバイし、滑走により必要な
揚力を得て、空へ飛び立っていきます。「さあ、飛行機が飛ぶよ。動き出したね。どんど
んスピードが上がってきたぞ。ヨシ、飛んだ!」……気持ちの高ぶりを覚えませんか。
 ドラマのクライマックス構成も同様に考えることで、いきなりクライマックス本編に突
入するよりは、読み手(視聴者)の感情移入を誘発できると思います。

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脚本『放課後泥棒』 作・塾生A (補作前の原作/2014年10月15日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(1) (2014年10月23日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(2) (2014年11月1日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(3) (2014年11月14日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(4) (2014年12月2日掲載)
脚本『放課後泥棒』の補作と解説(5) (2017年8月1日掲載)
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※脚本内の ピンク色 は削除、 黄色 は変更、 緑色 は追加した内容です。

脚本対比表6-A 
【原作】
----+----10----+----20・・

S21 集合住宅・公園(日変わり、昼)
  に集まる越前、パツキン、水谷、ドス、
  A、B。
パツキン「今日はこんだけ
  歩いてくる康太。
  それを見る仲間達。
  康太が仲間達の下へ。
康太「(照れて)久しぶり」
パツキン「待ってたぜ」
    ×    ×    ×
  木の近くには越前が立っている。
  それを康太がうろうろして見張っている。
  無言の二人。
康太「(気まずい)まさか俺がいない間に越
 前を捕まえられる程になっていたとは……」
越前「(気まずい)水谷君の作戦勝ちかな」
康太「えっと、まあ水谷って――」
越前「(公園の外を見て)あ、あ……どうし
 てここに(怯える)
康太「越前?」


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【補作】
----+----10----+----20・・

S24 集合住宅・公園・大木の周辺(放課後)
  越前、パツキン、水谷、ドス、少年Aが
  いる
パツキン「今日はこんだけか……
  歩いてくる康太。
  それを見る仲間達。
康太「(来て。照れて)久しぶり……(パツ
 キンに向かってチョリースポーズ)
パツキン「待ってたぜ(チョリースポーズ)
    ×    ×    ×
  木の近くには越前が立っている。
  それを康太がうろうろして見張っている。
康太「(気まずい)まさか俺がいない間に越
 前を捕まえられるようになったなんて……」
越前「(気まずい)水谷君の作戦勝ちかな」
康太「えっと、まあ水谷って――」
越前「(公園の外を見て)あ……どうしてこ
 こに」
康太「越前?」

(1) クライマックスへの入口になります。康太の“ドロケイ復帰”と、ドロケイ中に越前
  の“状況と様子の変化”を見せています。主人公と相手役に則しており、地味ですが
  滑らかな流れで、クライマックスのはじまりを感じさせるエピソードです。

(2) 前のシーン(補作S23)の直後なので、康太がドロケイに復帰した理由はパツキンと
  の経緯があったからと分かりますが、チョリースポーズを交わす(補作N08~09)こ
  とで念押ししておきます。そして対比表1-D(7) で述べたとおりチョリースポーズ
  はドラマの核心を担う伏線です。クライマックスの準備素材として見せておく意図も
  あります。

(3) 同一場所での時間経過(× × ×)で飛ばしたは、テンポが出て正解です。

脚本対比表6-B 
【原作】
----+----10----+----20・・

  公園に入ってくる一ノ瀬、少年F、G、
  H(12)。制服(ブレザー)を着ている。
一ノ瀬「久方ぶりだね、越前宗也君」
康太「誰?」
越前「(怯える)
一ノ瀬「それほど驚くことかね? 文化博物
 館への立ち寄りついでに、君の自宅にも伺
 っただけさ。なに、時には貴重な時間を割
 いてでも、伝統ある芸術を賞玩するのも悪
 くないと思ってね。しかし聞くところによ
 ると、ここで来る日も来る日も低俗な遊戯
 に興じているそうではないか」
越前「はい……
一ノ瀬「(驚)なんと。聞き違いではなかっ
 たのか。転校後とはいえ、誉れあるエスシ
 ーの学徒が、このような連中と投合すると
 は……嘆かわしい限りだ」
越前「はい……。では、これ以上貴重なお時
 間をお取りするのも忍びな――
一ノ瀬「(遮って)まあ待ちたまえ。転校後
 温ま湯に浸かるような生活を強いられて
 きたのだろうが、それで君の将来が閉ざさ
 れてしまったわけでは、ない」
越前「?」
一ノ瀬「義務教育の時間は打つ手なしとしよ
 う。が、今の時間はどうだい? いくらで
 も使い道はあろう」
康太「(イライラ)
一ノ瀬「フフ、一時的な気の迷いは誰にでも
 あるもの。さあ、我々と共に来たまえ。歓
 迎するよ(と手を差し伸べる)」
  手を取ろうとしない越前。
  手を戻す一ノ瀬。
一ノ瀬「これは一体どういう了見だい? 越
 前宗也君」
越前「……今は、この木の周り――牢屋から
 出られないんです。仲間が助けてくれるか
 もしれないから」
一ノ瀬「(顔をひきつらせてから笑みを浮か
 べ)そうかそうか、君はそういう奴だった
 な。自分より劣る者を巧みに探し出しては
 悦に浸る。敵わぬ猛虎に挑もうとはせず、
 手近な羽虫を潰して自尊心を満たす。そう
 して流下の摂理に身を委ね、下流下流へと
 流された挙句転校とは、とんだお笑い種も
 あったものだ」
  笑うF、G、H。
越前「ここで言わないで……」
一ノ瀬「(呆れ)それでいて我々の最後の情
 けすら無下にする。全く、飽和しきった虚
 栄心には手の付けようもない」
越前「やめてくれ……」
康太「(我慢)」
一ノ瀬「鶏口牛後など奴隷道徳を正当化する
 まやかしに過ぎない。化けの皮を剥げば、
 臆病者の烙印に怯えるだけの哀れな世迷言。
 (嘲笑い)もしや、君にとっては座右の銘
 だったかな? が、与えられた吹き溜まり
 に安住するだけの君は、満足した豚に他な
 らない!」
越前「(涙目で)黙れ!
  一ノ瀬の股間を思いきり蹴る康太。
  悶絶する一ノ瀬。逃走する康太。
一ノ瀬「アレを追え!」
  F、G、Hが追い始める。
越前「……」
一ノ瀬「(越前に)何を突っ立っている!? 
 君も手伝いたまえ! 見たろあの野蛮を!」
  動かない越前。
一ノ瀬「私があらゆる面において君に勝って
 いること、よもや忘れたわけではあるまい
 な(と越前の肩に手を置く)」
  怯えた越前は走り出す。
一ノ瀬「エスシーの我らに楯突くとどうなる
 か、思い知らせてくれる(走る)


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【補作】
----+----10----+----20・・

  公園に入ってくる一ノ瀬と少年F・G・
  H(全員12)。ブレザー制服を着ている。
一ノ瀬「久方ぶりだね、越前宗也君」
康太「誰?」
越前「(うつむいて)エスシーの……
一ノ瀬「一ノ瀬です。文化博物館への立ち寄
 りついでに君の自宅にも伺ってみたけど
 …聞くところによると、ここで毎日のよう
 低俗な遊戯に興じているそうではないか」
越前「まあ……
一ノ瀬「転校後とはいえ、誉れあるエスシー
 の(声を張って)元、学徒がこのような連
 中と投合するとは……嘆かわしい限りだ」
越前「それは……
一ノ瀬「温ま湯に浸かった生活を選んだのだ
 ろうが、それで君の将来が閉ざされてしま
 ったわけでは、ない」
越前「?」
一ノ瀬「義務教育の時間は打つ手なしとして
 も、放課後の時間はどうだい? いくらで
 も使い道はあろう」
康太「何言ってんだ? それでも小学生か?」
一ノ瀬「(康太を見て)努力によって得た知
 識の賜物だよ」
康太「あのな、放課後っていうのは――」
一ノ瀬「鬼ごっこのどこに高尚性があるとい
 うんだね」
康太「ハア?……コゥ……ショウセイ?」
越前「(小声で)程度が高くて上品なこと」
康太「悪かったな下品で(一ノ瀬にベロベロ
 バアを送る)」
一ノ瀬「見てのとおり矮小で無味乾燥だ……
 (越前に)さあ、こんな奴らはほっといて
 我々と共に勉学に励もう。歓迎するよ(と
 手を差し伸べる)」
越前「(手を取ろうとしない)今は、この木
 の周り――牢屋から出られないんです。仲
 間が助けてくれるかもしれないから」
一ノ瀬「実に君らしい。敵わぬ猛虎に挑もう
 とはせず、自分より劣る者を探し出し(康
 太を鋭く見て)彼のようなッ、羽虫を」
康太「ハァッ?(見返す)」
一ノ瀬「潰しては、(越前を見て)君は自尊
 心を満たす。とんだお笑い種だ、ハハハ」
  笑う少年F・G・H。
越前「(涙目)ここで言わないで……」
康太「(歯を食いしばる)意味わかんねッ」
一ノ瀬「底辺である君の存在は彼ら(少年F
 ~H)の励みになるんだよ。だから一緒に
 来たまえ(と越前の手首を掴み引っ張る)」
越前「助けて!(一ノ瀬の手を振り払う)
康太「もォッ(一ノ瀬の股間を蹴る)」
  悶絶する一ノ瀬。逃走する康太。
一ノ瀬「アレを追え!」
  少年F・G・Hが追い始める。
一ノ瀬「エスシーの我らに楯突くとどうなる
 か、思い知らせてくれる(康太を追う)
越前「(立っている)……」
 

(1) クライマックスへの滑走部です。ここまで構築してきたエピソードや心境を踏まえ、こ
  のシーンで発生する出来事で、読み手(視聴者)を引き込めるかどうかの分岐点になり
  ます。

(2) 原作が一番の問題点を含んだシーンです。
  このシーンの目的は“一ノ瀬か越前を攻撃し、越前はタジタジになる”と“康太はイ
  ライラを募らせ、一ノ瀬と越前のイザコザに巻き込まれる”です。その中で(一ノ瀬
  は)初登場なので“一ノ瀬のキャラクターを伝える”という追加目的も含まれますが、
  側面要素にすぎません。それによって“クライマックスへ向かうべく康太と越前の心
  境の変化を描く”のが主目的です。
  ところが原作は、一ノ瀬のキャラクター表現に偏り“悪玉登場・毒舌”の印象を伝え
  たにすぎません。とりわけ“康太がイライラした結果、爆発して一ノ瀬を蹴る”とい
  った流れを組んでいますが、この論理は強引です。納得できません。
  理由を説明します。
    ◆一ノ瀬は言葉で攻撃をしていても手は出していません。しかも矛先は越前です。
     とりあえず「低俗な遊戯に…」(原作N11)・「このような連中…」(原作N
     16)・「今の時間はどうだい?」(原作N26)・「自分より劣る者を…羽虫…」
     (原作N41・43)など康太ら(それでも康太個人ではない)に向けられたと考
     えらるが、果してそれらが蹴りに至る根拠といえるかです。
     一ノ瀬は、越前への攻撃の間、一度も康太を見ていません。つまり一ノ瀬にと
     って康太の存在はゼロと受け取れます。その中で康太は勝手にイライラを募ら
     せ爆発(怒り)に至ったのか……無言で蹴っているので怒りによるものかも不
     明瞭です。
     ならば越前のためかというと、越前こそ「黙れ!」と感情をあらわにしている
     者に加担したのか……越前は叫んだだけなのに、康太は蹴るという暴挙に及ぶ
     のか……大いに疑問です。
    ◆脚本内で構築された事実から読み解くと、康太は感情に左右されて爆発するタ
     イプではありません。“肝心なところでは逃げてしまうタイプ”です。
       ・原作S7N06:康太「(小声で)……二度と来るな」
       ・原作S12N28:康太「何だよ越前越前と!(行く)」
       ・原作S14N28:康太「宿題忘れました」
       ・原作S15N04:公園で皆が遊ぶ姿。それを横目に通り過ぎる。
       ・原作S19N08:舌打ちして部屋を出て、家から出る康太。
       ・原作S20N16:康太「……俺が行く必要ないじゃん」
     これらのことから、康太は感情的になると“人を避ける傾向”に描かれていま
     す。爆発はしていません。せいぜい対比表2-C原作N20~21の康太「(怒)
     認めない……認めないぞ!(土を掴む)」止まり。自分の中で消化する程度で
     す。
     そんな康太がなぜ一ノ瀬の股間を蹴るのか……決して“感情の爆発(怒り)に
     よるもの”とは考えがたい……もしもそうなら康太のキャラクターに矛盾が生
     じてしまいます。

(3) 補作のポイントを説明します。
    ◆一ノ瀬の台詞を削減しました(原作ピンク色部分)。饒舌な持論は不要です。
     越前より学力が勝り、傲慢なイメージが伝わればヨシといえます。
     ただし一ノ瀬の存在は、このあとの展開を大きく左右させる役目を背負ってい
     ます。登場人物内で難しい位置づけ(格付け)ですが、康太と越前を上回って
     はいけません。この点を考慮して(一ノ瀬の)台詞を簡潔にする必要がありま
     す。
    ◆越前は一ノ瀬によって追い込まれていきます。原作N61:補作N46で《涙目》
     状態です。原作では「黙れ!」と感情を爆発させますが、その必要はないと考
     えました。康太が一ノ瀬に蹴りを入れるには、それなりの理由が必要です。し
     たがって越前は“タジタジ → 助けを請う(補作N51)”構図のほうが自然で、
     康太が事を起こす引き金になります。これを一番の理由としました。
    ◆そもそも康太は、越前に快足ナンバー1の座を奪われてから、越前をライバル
     視(敵対視)しています。越前を避けてドロケイに行かなくなったくらいです。
     その越前が“助けを求めただけで一ノ瀬に蹴りを入れるか”という波及的な疑
     問が発生します。
     そこで康太が蹴りに至る理由を、新たにもうひとつ設定しました。まず康太が
     イライラする様子は原作にもあります。しかしながら越前への攻撃印象が非常
     に強く、康太は傍観しているにすぎません。そのため一ノ瀬の攻撃が康太にも
     降りかかる展開を考えました。
     着眼点は一ノ瀬の台詞「義務教育の時間 ~ 今の時間はどうだい? ~ 」(原
     作N25~27)です。今の時間とは“放課後”を指します。タイトルに使ってい
     るキーワードです。この言葉を利用しない手はありません。“放課後 → ドロ
     ケイ → 卑下”といった流れを作り、康太も一ノ瀬と絡ますことで、傍観者イ
     メージから渦中に取り込みます。
     越前を敵対視していますが、クラスメートでありドロケイ仲間です。イヤなヤ
     ツだが嫌いではない……といった感じでしょうか。ということで越前と一ノ瀬
     を天秤にかけたとき、“敵の敵は味方”ではなく“敵の敵は敵(もっとイヤな
     ヤツで大嫌い)”という論理です。
    ◆康太が一ノ瀬に蹴りを入れたあと“逃走”(原作N63)しています。上記(2)
     で説明したように康太は“肝心なところでは逃げてしまうタイプ”に従うと、
     この行動はうなずけます。
     これを活かし、クライマックスからラストへ向かう軸になる(康太の成長を見
     せる要素)と考えました(★対比表7-Cで説明します)。


*--------------------*
■脚本『放課後泥棒』の補作と解説(7)へつづく

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