■脚本『放課後泥棒』 作・塾生A
(補作前の原作/2014年10月15日掲載)
■脚本『放課後泥棒』の補作と解説(1)
(2014年10月23日掲載)
■脚本『放課後泥棒』の補作と解説(2)
(2014年11月1日掲載)
■脚本『放課後泥棒』の補作と解説(3)
(2014年11月14日掲載)
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※脚本内の ピンク色 は削除、 黄色 は変更、 緑色 は追加した内容です。
脚本対比表4-A |
【原作】
----+----10----+----20・・
S11 遠藤家・ダイニングキッチン(夜)
机上に白紙の原稿用紙。
その前に座り、鉛筆を回しため息をつく
康太。
栞奈「宿題進んでないみたいだけど?」
とキッチンから顔を出す康太の母、遠藤
栞奈(41)。
康太「自分の特技を発表するんだけど……」
栞奈「コウちゃんは足が速いことね!」
康太「でも、俺が一番じゃないから……」
栞奈「メダリスト以外は遅いってこと?」
康太「そういうわけじゃ……。クラスに俺よ
り速い奴がいて発表しづらいんだよ」
栞奈「(考えて)人はね、二つ特技があれば
特別なの。速いのは足だけじゃないでしょ
?」
康太「?」
栞奈「計算もじゃない!」
康太「まあ、ずっとそろばん習ってるし」
栞奈「走ることだけ得意な人は山ほどいるわ。
計算だけ得意な人もね。でも、両方となる
と……?」
康太「そうか……わかった気がするよ母さん
!(書き始める)」
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【補作】
----+----10----+----20・・
S13 遠藤家・ダイニングキッチン(夜)
机上に白紙の原稿用紙。
前に座り、鉛筆を回しため息をつく康太。
栞奈(41・母親)「宿題進んでないみたいだ
けど?(とキッチンから顔を出す)」
康太「自分の特技を発表するんだけど……」
栞奈「コウちゃんは足が速いことね」
康太「でも、俺が一番じゃないから……」
栞奈「メダリスト以外は遅いってこと?」
康太「そういうわけじゃ……クラスに俺より
速い奴がいて発表しづらいんだよ」
栞奈「(考えて)人はね、二つ特技があれば
特別なの。速いのは足だけじゃないでしょ。
計算もじゃない!」
康太「まあ、ずっとそろばん習ってるし」
栞奈「走るのが得意な人は山ほどいるわ。計
算が得意な人もね。でも両方となると……」
康太「そうか……わかった気がするよ母さん
!(書き始める)」
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(1) 少しでも行を稼ぐため推敲しました。
脚本対比表4-B |
【原作】
----+----10----+----20・・
S12 学校・教室(日変わり)
放課。
康太「絶対ワケアリだぜ。見たろ、転校理由
聞いたときの越前」
パツキン「困ってるようだったけどな」
康太「つまりワケアリってことだ」
パツキン「……」
康太が教室を見渡すと、越前がドスと話
している。
ドス「へー、越前君は物知りだね」
康太「(行って)俺にも教えてくれよ」
越前「?」
康太「何でこんな時期に転校してきたんだよ」
越前「そんな話じゃなかったんだけど……」
康太「ごまかさずにさ」
越前「いや、まあ」
康太「言えない理由でもあるのか?」
越前「(怒)何だっていいじゃないか」
康太「お、図星?」
パツキン「(割り込んで)おい康太。越前に
だけ酷くないか?」
康太「ただ質問してるだけじゃん。どこが酷
いんだよ」
越前「ごめん(行く)」
康太「……」
ドス「越前君可哀そう……」
パツキン「越前が嫌がってるだろ!」
康太「何だよ越前越前と!(行く)」
× × ×
授業中。生徒達は黙々と算数の問題用紙
を解いている。
康太(M)「あんな奴!(と答えを書き殴る)」
教師「全部終わった人から提出な」
康太が越前の方を窺う。
越前が立ち上がる。
康太「なっ!」
越前「終わりました(と教壇に用紙を提出)」
教師「早いなあ」
半分しか解いてない康太の用紙。
焦って続きを解く康太。
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【補作】
----+----10----+----20・・
S14 小学校・教室(日変わり)
休憩時間。
康太「見たろ、転校理由聞いたときの越前」
パツキン「困ってるようだったけどな」
康太「つまり、絶対ワケアリってことだ」
康太が見ると、越前がドスと話している。
ドス「へー、越前君は物知りだね」
越前「まあね……」
康太「(来て)なあ、越前、何でこんな時期
に転校してきたんだよ」
越前「……」
康太「言えない理由でもあるのか?」
越前「何だっていいじゃないかッ」
康太「お、当たり?」
パツキン「(来て)越前にだけ酷くないか?」
康太「ただ質問してるだけじゃん」
越前「(ボソッと)ごめん……(行く)」
康太「(知らんぷり)……」
ドス「越前君可哀そう」
パツキン「越前が嫌がってるだろ」
康太「何だよ越前越前と!(行く)」
× × ×
授業中。生徒達は黙々と算数の問題用紙
を解いている。
康太「(小声)あんな奴(答えを書き殴る)」
教師「全部終わった人から提出な」
康太が越前の方を窺う。
越前が立ち上がる。
康太「なっ!」
越前「終わりました(と教壇に用紙を提出)」
教師「早いなあ」
焦って続きを解く康太。
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(1) 序盤の「遺伝子変異」(補作S4N17)や「運動力学」(補作S6N20)があるから
補作N07~08の「物知りだね」「まあね」が生きます。
(2) 原作N32に康太のモノローグ(M)がありますが、その必要はないと判断しました。
イライラでないにしても、思わずつぶやくとき(小声)って、あるでしょう。それで
す。また「(膨れっ面で越前を見る)」とト書きだけ(様子)で表現してもいいです。
脚本対比表4-C |
【原作】
----+----10----+----20・・
S13 悪夢
暗闇の中、越前、パツキン、ドス、水谷
が笑って走っていく。
康太「待てよ皆! 待ってくれー!」
と手を伸ばして追いかけるが、追いつけ
ない。
友人の姿は遠く消える。
× × ×
遠藤家リビングのソファでハッと目を覚
ます康太。
栞奈「大丈夫? 随分うなされてたけど……」
康太「(息が荒い)」
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N
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12
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【補作】
----+----10----+----20・・
S15 悪夢
暗闇の中、越前、パツキン、ドス、水谷
が笑って走っていく。
康太「待てよ皆! 待ってくれー!」
手を伸ばして追いかけるが追いつけない。
友人の姿は遠く消える。
S16 遠藤家・リビング(夜)
ソファでハッと目を覚ます康太。
栞奈「大丈夫? 随分うなされてたけど……」
康太「(息が荒い)」
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(1) 原作N08~09は柱を立てるべきです(補作N08)。
脚本対比表4-D |
【原作】
----+----10----+----20・・
S14 学校・教室(日変わり)
授業中。
少女A「これで私の発表を終わります(着席)」
拍手。
教師「では次、越前」
越前「はい(と立ち上がる)」
康太が見る。
越前「僕の特技は、チェロです」
康太「(愕然)」
越前「幼少期からレッスンを受けており、幾
多のコンクールで受賞しています。チェロ
を始めたきっかけは――」
康太(M)「越前にとって、走ることも計算
も、特技ですらないんだ……」
越前の声が遠くなっていく。
× × ×
教師「次、遠藤」
康太「(我に返り)ハイッ(と立ち上がる)」
作文用紙を持つ手が震える。
× × ×
(フラッシュ)
越前「走ることと計算が特技? あの程度で
?(冷笑)」
× × ×
教師「どうした?」
康太「宿題忘れました」
教師「(ため息)ちゃんとやってこいよ。次
――」
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【補作】
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S17 小学校・教室(日変わり)
授業中。
少女A「これで私の発表を終わります(着席)」
生徒達の拍手。
教師「では次、越前」
越前「はい(と立ち上がる)」
康太が見る。
越前「僕の特技は、チェロです」
康太「(あんぐりする)」
越前「幼少期からレッスンを受けており、幾
多のコンクールで受賞しています。チェロ
を始めたきっかけは――」
康太「(小声)ふーん。走ることも計算も特
技じゃないんだ……」
越前の声が遠くなっていく。
教師「次、遠藤」
康太「(我に返り)ハイッ(と立ち上がり、
ふと越前を見る)」
越前が康太を見ている。
康太「(作文用紙を持つ手が震える)」
教師「どうした?」
康太「宿題……忘れました」
教師「(ため息)ちゃんとやってこいよ。次
――」
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(1) 原作N09のト書き《愕然》を《あんぐりする》に変更しました。愕然とは「非常に驚
くさま(=驚愕)」で、あんぐりは「驚いたり呆れたりして口を大きく開けた様子で
す。前者は感情のみ、後者は動作を伴った行動になります。驚きの度合いは違います
が、そんなに「ギョギョ!」とするのも滑稽と判断しました。「あんぐり」の状態を
受けた言葉の表れが、補作N13~14の「ふーん」とか小声(つぶやき)台詞最後の余
韻「……」です。
驚きの度合いが「愕然」なら、原作N13~14のモノローグは「越前にとって、走るこ
とも計算も特技ですらないなんて!」と、驚きを引きずり強調して「!」終わり(あ
たふたした口調)になるのが妥当です。それなのにモノローグーは抑えた口調「……」
終わりです。となると驚きは一瞬の感情、つまり「チェロ」と聞いた瞬間にポーンと
跳ね上がり、その後すぐ自制した印象になります。不自然であり、モノローグが一層
説明のために書かれているのを裏付けてしまいます。
モノローグは抑え気味の口調とは限りません。心の声なわけですから感情を込めた表
現でもいいわけです。それだけモノローグの扱いは難しい手法ともいえます。
(2) 原作N14で「特技ですらない」とあります。文語体で畏まった言い回し、なんといっ
ても康太に似合わない印象です。補作では「特技じゃないんだ」と口語体にしました。
*--------------------*
■脚本『放課後泥棒』の補作と解説(5)へつづく