交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


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 書き手、特に作家ともなると書き上げた作品が出版である場合、入稿後は編
集者による校正作業があります。このとき誤字脱字をチェックするだけでなく、
用字を統一するか使い分けるかも検討されます。
 校正は編集者(出版社側)の作業と思われがちですが、これはとんでもない
勘違いです。もちろんその作業の中心は編集者ですが、校正後にそのチェック
内容を著者として確認する必要があります。熱心な編集者であれば作品の内容
(文意の不明瞭など)についてもアドバイスしてくれこともあります。著者に
よっては「自分の作品を云々された」と煙たがる人もいるでしょう。しかし意
外にも、そのアドバイス(指摘)がうなずけることもあるのです。そんなとき
には我を張らず、もう一度客観的に検討したうえで必要に応じて加筆も行うべ
きでしょう。そういった意味から、実際原稿を書き上げても、本当の意味でエ
ンドマークを打ったといえるのは、校正が完了して印刷・製本にまわったとき
ではないでしょうか。


 印刷といえば……
 私の父は印刷会社に勤めていました。昔は活版印刷(活字を組み並べて行う
印刷)だったので、校正用に刷り上がったもの(ゲラ刷り)に印刷会社の責任
範囲として、落字や誤植がないか赤鉛筆を手にそれこそ目を皿にして、夜遅く
まで何度も何度もチェックしていました。とうてい見つけるとは思ってなかっ
たでしょうが、こどもの私に、親の手伝いか勉強の意味かは分かりませんが、
「おかしいところを見つけたら一箇所につき十円(だったかな?)やるよ」と
間違い探しをさせていましたね。
 その父も平成七年に他界して今は墓の中です。私がドラマ脚本や放送台本を
書いていたのは知っていましたが、文章の考え方や書き方について云々すると
は思ってもいなかったでしょう。(南無阿弥陀仏)


 誤字脱字のチェック以上に用字の統一使い分けは難しい作業です。小説や論
文のように文章が長くなればなるほど難しいものです。対象となる語は一語で
はありません。また日本語の特徴として「叱られた/叱り方/叱る」などのよ
うに活用があると、それに関わる統一と使い分けを見つけるのは本当に大変で、
『精神力がものをいう世界』といっても過言ではありません。
 一般的に用字は統一するのが定石といわれますが、出版に携わる編集者の中
には「見開きページ内で統一していればOK」とする考えもあるようです。プ
ロの仕事の観点からはどんなものかと思いますが、だからといって「完ぺき」
であるには相当量の人力と時間、そして精神力が必要です。どこかで妥協を余
儀なくされる世界でもあると心得ておく必要があるでしょう。
 また著者の立場からすれば、用字統一だけが校正のあり方とも思いません。
もちろん、気まぐれに漢字で書いたりひらがなであるのは論外ですが、根拠が
あっての使い分けは、著者と編集者の間での検討に値するといいたいのです。
私の著書・戯曲『ミッドナイト・プラン』では、「分かる/解る」を使い分け
て書きました。当然編集者のチェックに引っかかりましたが、文意を説明した
うえで納得してもらい、そのまま使い分けで出版となりました。


 用字の統一と使い分けをはじめ、校正について論じればまだまだつきないで
しょう。ただ確実にいえるのは、著者であれ編集者であれ、見つけたときのホ
ッとする気持ちと、もしかしたらまだミスがあるのではないかと、不安を抱え
ながら校正を完了しなくてはならないジレンマがつきまとう世界なのです。


【関連記事】
漢字の強み(2006年7月3日)
血相欠いて(2005年9月19日)
「風アザミ」と「息風」(2005年9月17日)

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