WEEK-END A ZUYDCOOTE
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
音楽:モーリス・ジャール
出演:ジャン=ポール・ベルモンド、フランソワ・ペリエ、カトリーヌ・スパーク、ピエール・モンディ、マリー=フランス・ボワイエ、マリー・デュボワ
1964年 フランス/イタリア映画


フランス製の風変りな戦争映画らしくない戦争映画。
ドイツ軍による海岸の爆撃シーンは、相当な迫力があるのですが、
英仏連合軍は退却するだけで交戦しないので、普通の戦争映画を想像するとガッカリするかもしれません。
しかし、なんとも言えない空虚で脱力した感じが、通常の戦争映画にはない不思議な魅力を持っています。
ストーリーは、フランス軍兵士がダンケルクへ撤退するイギリス軍に紛れて海岸まで到着し、
本国に向けて出港するイギリス船に潜り込もうとしますが、フランス人という理由で降ろされたり、何度も失敗します。
その間に、地元の若い女性と親しくなりますが、ドイツ軍の爆撃は日に日に激しさを増していく・・・・というお話。
「地下室のメロディ」のアンリ・ヴェルヌイユ監督の演出は、大量の爆薬を使いながらも
戦争映画というよりヒューマン・ドラマといった感じの作品に仕上げています。
他のスタッフ、キャストも豪華で、撮影がアンリ・ドカエ、音楽がモーリス・ジャール、
主演がベルモンドにカトリーヌ・スパークという夢のような布陣で製作されています。
ドンパチさえ期待しなければ、今でも十分楽しめる作品だと思います。
クリストファー・ノーラン監督版「ダンケルク」も普通の戦争映画とは一線を画していましたが、
この「ダンケルク」も飄々としたベルモンドの演技と裏腹に、英仏軍は逃げ回り、
ひたすら銃撃、爆撃され、死体の山を築いていくという悲惨な状況が展開されます。
なんとも不思議な魅力を持った戦争映画です。






音楽は、モーリス・ジャール。
特に意図したわけではないのですが、最近モーリス・ジャールの作品を紹介することが多いなあ。
有名なダンケルクのマーチは、スコアの中でまとまって流れることはありません。
劇伴の中で、モチーフとして顔を出したり、フィナーレでやっとこさまともにメロが出て来たかと思ったら、
さっさと曲が終わってしまったりで、カバー演奏によくあるような2、3分たっぷりとマーチ堪能するようなことはできません。
劇伴は、戦争映画らしくないスコアが多く、飄々としたベルモンドの雰囲気を表現した、
とぼけたメロを持っモチーフが何度も顔を出します。
愁いを帯びたサーカス音楽のようなメイン・タイトルを始め、割とほのぼのとしたスコアが多く、
アクの強い巨匠のスコアの中にあっては、比較的自己主張の弱い音かも知れません。
サントラは、公開時に本国フランスで4曲入りのシングル盤が発売されたのみでした。
(この中には、マーチが入ってた。)
そして、今年になって、遂にフランスのMusic Boxレーベルから、3000枚限定で26曲入り41分収録のCDが発売されました。
ただ、残念なのが音がモノラルなことと、シングル収録のマーチが入っていないこと。
まあ、1964年の音源をこうして今になってディスクで聴くことができる幸せを素直に喜ぶことにします 笑。
(シングル収録のマーチは、Amazonでダウンロード版が入手可能です。)