この物語はフィクションです。
実在するものとは一切関係ありません。
仮面夫婦【18】
直樹は、恥らいながら拒む優美を無視して欲望を
満たそうとしたが、倫子の一件が頭の中でくすぶり
没頭できず医局に向かった。
医局に入るとすぐに、医局秘書の大野かおりに問
いかけた。
「最近、外来事務から外科のドクターの印鑑を求め
る書類が回ってこなかったか」
『えっ?あぁー、たしか迫田さんが外科の下向先生
の印鑑を求めて来られました』
「それで、その件はどうなった」
『彼女、迫田さんは急いでおられたので、その日は
先生は不在だったので翌朝、先生に捺印してもらっ
て、わたしが直接外来事務まで持って行き、彼女って
亡くなられたんですよね、その日の昼過ぎ彼女に渡し
ました。それで、その日のそのあとで亡くなったと聞き
驚いているんですよ』
「その患者の名前を覚えていないか」
『公印をも押しましたから、控えを見れば』
大野かおりは、言うが早いか直ぐ自分の机の上の
パソコンを操作しだした。
暫くモニターを見つめていた後、直樹の方に目を向
け
『夏川さまです』と言った。
直樹は近づいてモニターを覗き込んだ。
大野かおりの髪が直樹の頬をくすぐり、彼女のつけ
ているコロンのかすかな香りが直樹の花を楽しませた。
その時、秘書の優美が
『先日の、警察の方がお見えですが』と告にきた。