「魏志倭人伝」の主題:倭国三十国の全貌 | 古代文化研究所:第2室

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ブログ「古代文化研究所」で、書き切れなかったものを書き継いでいます。

○中国の正史の一つである「三国志」(全65巻)に、三世紀の日本に関する詳しい記述がある。「三国志」の成立は三世紀後半とされるから、ほぼ同時代の記録であるところに価値がある。何しろ、日本最古の史書とされる「古事記」「日本書紀」の成立は八世紀だから、五百年も古い。

○日本では、「三国志」の「魏書」(全30巻)、巻三十「烏丸鮮卑東夷伝」の中の「倭人」の条を特別に「魏志倭人伝」と呼び称している。「魏志倭人伝」そのものは、全字数1986字しかない。しかし、日本にとっては、極めて貴重な情報である。

○もともと中国の史書は、中国の専門史家のみを読者対象としている。したがって、普通の人には読んでも判らない。それが「魏志倭人伝」である。まして、外国人である日本人にとって、「魏志倭人伝」を読むことは至難の業である。そういうことを理解して「魏志倭人伝」は読まないと、読むことはできない。

○そのことは、これまで誰も「魏志倭人伝」を読み解いた者が居ないことからも判る。それ程難しいのが「魏志倭人伝」だと理解すべきである。しかし、そういうことを理解して「魏志倭人伝」を読む人はほとんど、居ない。誰もが自分には「魏志倭人伝」が読めると勘違いしている。あり得ない話である。

○10年20年掛けて、専門史家が読んでも読めないのが「魏志倭人伝」だと考えた方が良い。それが素人に読めることはあり得ない。読書はそんな簡単なものでは無いのである。

○その「魏志倭人伝」の主題はなにか? そんな平凡な問題にすら、なかなか人は辿り着かない。これまで、「魏志倭人伝」の主題すら、誰も明らかにできていないのである。そういう意味でも、「魏志倭人伝」を正確に読むことは難しい。

「魏志倭人伝」の主題は、倭国三十国の案内にある。そのことを初めて明らかにしたのが「完読魏志倭人伝」(高城書房刊:2010年)である。その「魏志倭人伝」の主題は、次のように案内される。

  【渡海三国】
    ・狗邪韓国・対馬国・壱岐国
  【北九州四国】
    ・末廬国・伊都国・奴国・不弥国
  【中九州二十国】
    ・斯馬国・巳百支国・伊邪国・都支国・邇奴国・好古都国・不呼国
    ・姐奴国・対蘇国・蘇奴国・呼邑国・華奴蘇奴国・鬼国・為吾国・
    ・鬼奴国・邪馬国・躬臣国・巴利国・支惟国・烏奴国・(奴国)
  【南九州三国】
    ・投馬国・邪馬台国・狗奴国

「魏志倭人伝」を読むということは、そういうことである。なかなか難しい。