大変ご無沙汰しております(^^;

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彼岸の終わり頃、道端によく赤や白の鮮やかなヒガンバナを見かけることがある。
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このヒガンバナという草花はちょっと変わっている。

まず第一に派手な花を突然、密集した状態で一気に咲かせることである。

夏が終わり、草木全体が黄昏始めているとき、突然華やかな花を咲かせるヒガンバナに違和感を覚えるのは私だけだろうか…(・・;)

しかもその華麗な花を付けている茎には分岐した茎も葉も一切付いていないのである。

実はヒガンバナが同じ時期に一気に開花するのは種子から生長するのではなく、土の中にある鱗茎と呼ばれる球茎から花茎を伸ばすためなのだ。

1つの群集は元は1つの鱗茎から株分けで増えたものなので遺伝に同一である。

そのため同じ大きさのものが同じ速度で生長し、同時期に開花するのである。

驚くべきことにヒガンバナは自然にできた三倍体植物のため種子を作ることができない。

従って本来ならヒガンバナは生息圏を拡げることができないはずである。

それが日本全土に生息するようになったのは人の手によって拡げられたためと考えられているようである。




ヒガンバナの花茎が枯れると、今度はヒガンバナの葉が生えてくる。

なんとヒガンバナはこの葉だけの状態で越冬するのだ。

そして春の終わり、5月~6月頃のまさにこれから草木が生い茂るという時期にヒガンバナは葉も枯れて地上から完全に姿を消すのである。

つまりヒガンバナは秋から春にかけて葉だけの状態で栄養を蓄えた後、鱗茎の状態で越夏(?)する。

そして秋にいきなり花を咲かせた後、葉と入れ替わるというあまりにも奇妙な生活環を繰り返すのである。




またヒガンバナは有毒なアルカロイドを持っていることでも知られている。

代表的なヒガンバナアルカロイドはリコリン、ガランタミン等である。
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これらのアルカロイドは摂取すると流涎や嘔吐、下痢などを起こし、酷いときには死に至ることもあるようである。

田畑の畦道や墓地にヒガンバナが植えられるのはモグラ、ネズミ、虫などがその毒成分を嫌って寄り付かないためと言われている。

一方、ヒガンバナの鱗茎にはデンプンも豊富に含まれるため、かなり昔から飢饉時の救飢植物として利用されていたようである。

しかしそのまま食べたのでは当然、中毒を起こしてしまう。

幸いリコリンやガランタミン等は比較的水に溶ける方なので、鱗茎を磨り潰し、水に十分晒して毒抜きをすれば食することが可能となる。

だが実際には中毒を起こす者が後を絶たなかったようである。

どのくらい水に晒せばよいかという目処のなかったことが原因と言われているが、実際には極度の空腹のため冷静に毒抜きなどしていられるような状況ではなかったということが大半だったかもしれない。

遠い昔の出来事のように思われがちだが、第二次世界大戦時あるいは戦後の食糧難のときにもヒガンバナアルカロイド中毒があったようだ。

ヒガンバナの鱗茎を口にしなければならないような事態が二度と来ないことを祈るのみである。