<ANIARA アニアーラ (ANIALA・スウェーデン・2018)> ★★★☆

 

 

スウェーデンのノーベル文学賞作家の作品を映像化したSF映画ということで、単純な奇想天外なファンタジーではないだろうと覚悟して見ましたが、なんとも難解で暗い映画で、何度となく睡魔に襲われました。

 

>放射性で汚染された地球から火星へ移住するため、巨大な宇宙船が8000人の乗客を乗せて出発します。火星には3週間で到達の予定です。しかし、途中で隕石が船に衝突、燃料が放出して航行不能となってしまいます。シェフォーネ船長はすぐに救援が来ると乗客を欺きます。女性乗組員ミマロペは「MIMA」という装置の担当をしています。これは脳波に侵入して過去を思い起こさせる装置です、宇宙船に閉じ込められた乗客は退屈のあまりこの装置に殺到、MIMAは自らの意思で自己破壊してしまいます。5年たったある日、救助船が現れてドッキングしますが、それは未知の物質で作られた正体不明の物体でした。絶望や疲労のため、船内で自殺者が続出します。又、奇妙なオカルト信仰が始まり、乱交の末、出産する女性も現れます。10年後、ミマロペは船窓に美しかった地球の映像を投影させる装置を開発して表彰されますが、自室に戻った彼女は勲章を追放り投げます、彼女の友人の出産した我が子を殺して自殺します。24年後、僅かに残った乗員は視力を失い、暗い一室に閉じこもってうごめいています。598万年後、ANIALAは遂に緑輝く星に到達します・・・・

 

宇宙船内は引力を含めて完全に地球上と同じ条件で制御さ、食料は船内で培養される苔類から合成されると説明されています。そうした技術は近い将来完成するかもしれず、あながち荒唐無稽とは言えないと思います。しかし、原作を全く知りませんが、制御を失って宇宙空間を漂うANIALAとその乗組員、乗客は地球と政治家と一般人全体を象徴しているのではないかと思いました。政治家は見通しのない楽観論で国民を欺き、人々はあらぬ幻想を抱いて活路を見出す、そんな地球の放浪ぶりを宇宙船になぞらえていると思います、

 

しかし、8000人もの乗客がいるというのに、映画は数名の乗組員だけに殆ど絞られて、冒頭にちらっと出航する巨大宇宙船の姿がCGで描かれるだけで、火星への移住の乗客の高揚感や、事故の時の不安や騒動は全く描かれておらず、切迫感が感じられませんでした。原作は恐らく現代の地球の直面する問題への危機感や人々の不安、信仰心を内面的に掘り下げたものだろうと思いますが、それを映像で具体的に描くのはやはり無理があったのではないかと思う、難解で退屈な作品でした。