故郷よ (La Terre Outragee・ウクライナ/仏・2011)> ★★★★☆

 

 

 1986426、ウクライナのキエフの北方、約135kmチェルノブイリは、同市郊外の原子力発電所の爆発事故放射汚染されほとんどの住民は事故後、未だに他所に避難したままですが一部住民はチョルノーブィリやその周辺に住み続けています。この映画は事故で甚大な被害を受け、立入制限区域に指定されたチェルノブイリ近郊のプリピャチを舞台に、故郷を追われた人々の悲惨な運命を描いています。見た作品のタイトルやクレジットはフランス語になっていましたが、スタッフもキャストもウクライナ人で、フランスの資本と技術の協力を得て製作されたウクライナ映画と言えます。 

 

1986426日、チェルノブイリから3kmの町プリピャチで、アーニャは消防士のピョートルと結婚式を挙げていましたが、その最中、新郎は山火事の消火のために呼び出され、そのまま度と戻って来ませんでした。発電所の技師アレクセイは”山火事”の正体を知って愕然として、.妻と息子のヴァレリーを避難させますが、守秘義務から他人に伝えることは出来ず、義務感から発電所に戻りそのまま行方不明となります、.10年後、チェルノブイルに移ったアーニャは、立ち退いた人々の立入制限区域のツアーのガイドとなっていますが、フランス人のパトリックと婚約しながら、ピョートルの親友だったディミトリとも関係を持っています。パトリックは一緒にパリへ行くことを勧めますが、老いた母のことや髪が抜け始めている体の状態から決心がつきません。かつてピョートルと行くはずだったオデッサにパトリックとやって来たアーニャの心にピョートルとの想い出が蘇り、パトリックに別れを告げて戻って来ます。16歳になったヴァレリーは父の死を信じることが出来ず、ツアーの途中で抜け出し、かつての我が家に立ち入って、父へのメッセージを壁に書きます。しかし、アレクセイは生きていていましたが精神を害していて、会う人々に名前を訊いて記録し続けていました。その頃、放射線被曝者として研究対象となっているヴァレリーは、自分の境遇や故郷を失った思いを作文にして同級生の前で切々と読み上げていました

 

どんなことがあっても、簡単に故郷を棄てることは出来ない、という山田洋次監督作品のような内容ですが、原発事故の恐ろしさと共に、故郷というものの大切さを改めて思わせられました。、前半では街の人々の暮らしぶりや結婚式のしきたりも出てローカル色を豊かでした。

 

チェルノブイリ原発事故とその10年後んに人生が変わってしまった人々アーニャとヴァレリーに焦点を当てて描いた映画ですが、冒頭の緑豊かな町にと美しい川の流れが後半の悲劇の深さを浮きだたせていました。しかし、一転して土砂降りの雨、雨に打たれて汚れケーキ、川に浮かぶ魚の死体、森の中の動物の死体などが後段の悲劇を暗示していました

 

日本でも福島原発事故によって放射能に汚染され、未だに故郷に戻れない人々が多数いますが、チェルノブイリ事故はそれを上回る事故だったことを改めて知りました。事故後、ウクライナはソ連の支配から抜け出しましたが、事故の被害もそのまま押し付けられて苦悩していることがこの映画からも判りました。撮影は、実際の被害地でも撮影されたようですが、撮影当時でも既に25年を経ているのに、映画の中にも発電所を”石棺”と呼んでいましたが、プリピャチも復興の目途の立たない”石棺”となっていて、改めて原子力発電所の存在の是非を考えさせられる映画でした。

 

主演女優のオルガ・クルレンコは、偶然にも数日前に見た2016年製作のイタリア映画<ある天文学者の恋文>でも主演していて、今や国際的女優になっているようです。