毎日新聞 高畑論説委員を嗤う
http://reishiva.exblog.jp/1093340
『シバレイのブログ 2004.11.21』より転載
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2004年 11月 21日
毎日新聞 高畑論説委員を嗤う
う~、某誌の特集抱えて忙しいのに一言書かずにはいられない。困ったもんだ ぜ。
最初にフォローしておくが、毎日新聞は結構好きな新聞だ。多くの記事が署名記事であり、各記者が自分の取材に基づいた主張を他紙よりも自由に書いている感じがする。素晴らしい仕事をしている記者も何人もいる。バグダッド住宅地でのクラスター爆弾の被害を、地を這うような綿密な取材で報告した斎藤義彦記者、スーダン・ダルフール問題をリポートした白戸圭一記者、日本の難民受け入れ制度の問題を告発し続ける磯崎由美記者などの仕事に対しては、同業者として敬意を表したい *。
それゆえに、本日の社説はなんじゃこりゃ、という感じがする。
・サマワと日本 「緊密さの罠」に陥らない知恵を出せ
言論の自由という視点からすれば、さまざま主張が許容されるべきである。いや、新聞はあくまで一般論の範囲で主張することが多いようだが、もっとラディカルになってもいいと思う。ただし、である。私が敬意を持つ毎日新聞の記者達は皆、事実に忠実だ。徹底した取材の元に、記事を書いている。そうした凄みを、上記の高畑昭男論説委員の文章からは全く感じられない。空虚な主張ばかりが目立つ 卓上の文章である。
高畑論説委員は"多国籍軍の任務に「人道復興支援」が盛り込まれたのは、日本が国連外交を通じて努力した結果"と、それが国際貢献であるかのように書いているが笑止。そもそも、国際人道援助において、中立性は最も重要な原則の一つであり、米国支持を明確にしている国々の軍隊が人道援助に関わることは、もっての他である。実際、2月にイラクを訪問したJVC熊岡路矢代表理事は、朝日新聞のインタビューの中で、現地で活動する100あまりの団体で構成されるNGO調整委員会"NCCI"の代表世話人(当時)から、自衛隊派遣に関して、軍と人道支援との区別が不明確である、と懸念を表明されたと語っている。私の取材の中でも、自衛隊イラク派遣に最も強硬に反対しているサドル派やファルージャの宗教指導者ですら、「我々は武器を持った者を拒んでいるだけだ。軍を送らなければ攻撃する理由はない」と断言している。自衛隊派遣が、より効果的な支援を期待できる日本の NGOや民間企業、その他の援助機関の活動を困難にしていることは、もはや明らか だ。
また、高畑論説委員は、"「自衛隊派遣は対米協力に過ぎない」といった批判には、国連決議をきちんと読み返せ、と言いたい"と書いているが、この挑発的な言葉はそのまま彼に送り返したい。高畑論説委員のあげている国連安保理決議は、来年1月の直接選挙を含む、イラクが主権国家としての道を歩むプロセスを定めた決議 1546だが、今回のファルージャ攻撃に対し、暫定政権にも参加していた有力政党イラク・イスラム党が離脱、イラク・イスラム法学者協会やサドル派も選挙のボイコットを表明している。ファルージャを始めとするイラク各地での、米軍やイラク暫定政府軍による一般市民を巻き込んだ無差別攻撃こそが、来年1月の直接選挙を血塗られたものとして、その正当性を破壊しているのではないか。さらに小泉首相はファルージャ攻撃を支持している。一体、誰こそが国連決議1546を蔑ろにしてい るのか。
文中、"「自衛隊員の安全」を最優先するのはもちろんだが、その点で心配がなく、暫定政府の要請が続く限りは、粛々と派遣を延長するのが筋だと思う"ともあるが、つい最近も立て続けに宿営地がロケット砲で攻撃されたばかりなのをお忘れのようである。大体、危いのは何も自衛隊員だけではなく、5月末のサウジアラビアでの外国人襲撃事件にも見るように、日本が原油輸入の8割を依存している中東の産 油国でも、現地邦人が狙われる可能性が高くなってきている(関連情報)。
"国連や米欧関係の現実を考えれば、(中略)「派遣延長」をテコに使って、小泉首相が何をするか"とも書いているが、別に自衛隊派遣なんぞなくとも、日本には米国に意見する権利が大いにある。米国が莫大な財政赤字と貿易赤字、イラク情勢などの不安を抱えながら、米ドルが辛うじてその通貨価値を保っているのも、日本が昨年度だけで30兆円もの公的資金を投じて、市場介入していることが大きい。現在の世界経済における米ドル中心主義こそ米国の力の源であり、日本政府が買ったドルが変換される米国債こそ、米国の資金源である。日本としても既に約80兆円という国家予算にも匹敵する額の米国債を政府が保有している以上、自国経済を守ると いう国益においても、米国の暴走を食い止めることが重要なのだ。
実は、高畑論説委員は"前科"とも言うべきコラムを以前にも書いている。昨年5月 28日付けの「記者の目」で高畑論説委員は『市民の笑顔が語る「自由」』と、米国のイラク攻撃が民衆に自由をもたらしたと絶賛していた。このコラムの約1ヶ月前、ファルージャでは、デモという民主的かつ非暴力の手段で、米軍の学校占拠に抗議した住民に対し、米兵らが実弾で水平発射し、それが元で彼の地での激しい衝突が始まったのにも関わらず。その後、同じく「記者の目」で、小倉孝保記者が、「強者に手振るは自衛の術-米に抜きがたい不信感」という米国がのたまう「自由」と「民主主義」の虚構を暴く、現場からの優れたコラムを書いていたのだ が、高畑論説委員は読まれなかったのだろうか。
現在のイラクが、小倉孝保記者がコラムを書いた頃より、比較にならない程、深 刻で苛烈な状況にあることは誰の目にも明らかだ。高畑論説委員には、ご高説をの たまう前に、言論人として自らの発言の論理的欠陥を検証されることをお願いした い。
*念のため。本文中名前をあげた記者は、私が勝手に評価している だけであり、彼ら の見解と今回の高畑氏への私の意見には一切関係ありません。
P.S. 2003年2月26日の「記者の目」でも、高畑節は絶好調だったらしい。ここまでくると、もはや笑えてくる。米国の不確かな情報を自ら検証せずに踊らされて、このザマである。・・・私?ちゃんとインタビューしていましたよ、元・大量破壊兵器査察官のスコット・リッター氏に。彼はいかにイラクの大量破壊兵器に関する米 国の情報がずさんなものか、最初から、そして完全に見抜いていた。
『シバレイのブログ 2004.11.21』より転載
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2004年 11月 21日
毎日新聞 高畑論説委員を嗤う
う~、某誌の特集抱えて忙しいのに一言書かずにはいられない。困ったもんだ ぜ。
最初にフォローしておくが、毎日新聞は結構好きな新聞だ。多くの記事が署名記事であり、各記者が自分の取材に基づいた主張を他紙よりも自由に書いている感じがする。素晴らしい仕事をしている記者も何人もいる。バグダッド住宅地でのクラスター爆弾の被害を、地を這うような綿密な取材で報告した斎藤義彦記者、スーダン・ダルフール問題をリポートした白戸圭一記者、日本の難民受け入れ制度の問題を告発し続ける磯崎由美記者などの仕事に対しては、同業者として敬意を表したい *。
それゆえに、本日の社説はなんじゃこりゃ、という感じがする。
・サマワと日本 「緊密さの罠」に陥らない知恵を出せ
言論の自由という視点からすれば、さまざま主張が許容されるべきである。いや、新聞はあくまで一般論の範囲で主張することが多いようだが、もっとラディカルになってもいいと思う。ただし、である。私が敬意を持つ毎日新聞の記者達は皆、事実に忠実だ。徹底した取材の元に、記事を書いている。そうした凄みを、上記の高畑昭男論説委員の文章からは全く感じられない。空虚な主張ばかりが目立つ 卓上の文章である。
高畑論説委員は"多国籍軍の任務に「人道復興支援」が盛り込まれたのは、日本が国連外交を通じて努力した結果"と、それが国際貢献であるかのように書いているが笑止。そもそも、国際人道援助において、中立性は最も重要な原則の一つであり、米国支持を明確にしている国々の軍隊が人道援助に関わることは、もっての他である。実際、2月にイラクを訪問したJVC熊岡路矢代表理事は、朝日新聞のインタビューの中で、現地で活動する100あまりの団体で構成されるNGO調整委員会"NCCI"の代表世話人(当時)から、自衛隊派遣に関して、軍と人道支援との区別が不明確である、と懸念を表明されたと語っている。私の取材の中でも、自衛隊イラク派遣に最も強硬に反対しているサドル派やファルージャの宗教指導者ですら、「我々は武器を持った者を拒んでいるだけだ。軍を送らなければ攻撃する理由はない」と断言している。自衛隊派遣が、より効果的な支援を期待できる日本の NGOや民間企業、その他の援助機関の活動を困難にしていることは、もはや明らか だ。
また、高畑論説委員は、"「自衛隊派遣は対米協力に過ぎない」といった批判には、国連決議をきちんと読み返せ、と言いたい"と書いているが、この挑発的な言葉はそのまま彼に送り返したい。高畑論説委員のあげている国連安保理決議は、来年1月の直接選挙を含む、イラクが主権国家としての道を歩むプロセスを定めた決議 1546だが、今回のファルージャ攻撃に対し、暫定政権にも参加していた有力政党イラク・イスラム党が離脱、イラク・イスラム法学者協会やサドル派も選挙のボイコットを表明している。ファルージャを始めとするイラク各地での、米軍やイラク暫定政府軍による一般市民を巻き込んだ無差別攻撃こそが、来年1月の直接選挙を血塗られたものとして、その正当性を破壊しているのではないか。さらに小泉首相はファルージャ攻撃を支持している。一体、誰こそが国連決議1546を蔑ろにしてい るのか。
文中、"「自衛隊員の安全」を最優先するのはもちろんだが、その点で心配がなく、暫定政府の要請が続く限りは、粛々と派遣を延長するのが筋だと思う"ともあるが、つい最近も立て続けに宿営地がロケット砲で攻撃されたばかりなのをお忘れのようである。大体、危いのは何も自衛隊員だけではなく、5月末のサウジアラビアでの外国人襲撃事件にも見るように、日本が原油輸入の8割を依存している中東の産 油国でも、現地邦人が狙われる可能性が高くなってきている(関連情報)。
"国連や米欧関係の現実を考えれば、(中略)「派遣延長」をテコに使って、小泉首相が何をするか"とも書いているが、別に自衛隊派遣なんぞなくとも、日本には米国に意見する権利が大いにある。米国が莫大な財政赤字と貿易赤字、イラク情勢などの不安を抱えながら、米ドルが辛うじてその通貨価値を保っているのも、日本が昨年度だけで30兆円もの公的資金を投じて、市場介入していることが大きい。現在の世界経済における米ドル中心主義こそ米国の力の源であり、日本政府が買ったドルが変換される米国債こそ、米国の資金源である。日本としても既に約80兆円という国家予算にも匹敵する額の米国債を政府が保有している以上、自国経済を守ると いう国益においても、米国の暴走を食い止めることが重要なのだ。
実は、高畑論説委員は"前科"とも言うべきコラムを以前にも書いている。昨年5月 28日付けの「記者の目」で高畑論説委員は『市民の笑顔が語る「自由」』と、米国のイラク攻撃が民衆に自由をもたらしたと絶賛していた。このコラムの約1ヶ月前、ファルージャでは、デモという民主的かつ非暴力の手段で、米軍の学校占拠に抗議した住民に対し、米兵らが実弾で水平発射し、それが元で彼の地での激しい衝突が始まったのにも関わらず。その後、同じく「記者の目」で、小倉孝保記者が、「強者に手振るは自衛の術-米に抜きがたい不信感」という米国がのたまう「自由」と「民主主義」の虚構を暴く、現場からの優れたコラムを書いていたのだ が、高畑論説委員は読まれなかったのだろうか。
現在のイラクが、小倉孝保記者がコラムを書いた頃より、比較にならない程、深 刻で苛烈な状況にあることは誰の目にも明らかだ。高畑論説委員には、ご高説をの たまう前に、言論人として自らの発言の論理的欠陥を検証されることをお願いした い。
*念のため。本文中名前をあげた記者は、私が勝手に評価している だけであり、彼ら の見解と今回の高畑氏への私の意見には一切関係ありません。
P.S. 2003年2月26日の「記者の目」でも、高畑節は絶好調だったらしい。ここまでくると、もはや笑えてくる。米国の不確かな情報を自ら検証せずに踊らされて、このザマである。・・・私?ちゃんとインタビューしていましたよ、元・大量破壊兵器査察官のスコット・リッター氏に。彼はいかにイラクの大量破壊兵器に関する米 国の情報がずさんなものか、最初から、そして完全に見抜いていた。