それから、三人は電車で、徳島港へ。そして、フェリーで和歌山港に到着した。
霊伝さんは、野宿の出来そうなところを探して、橋本へ向かうと言う。明日、彼と私は、別々だけれども、高野山にお参りする予定だ。
銀二さんは、冷静な私たちと居たので感動の薄い結願になり、気分がなえてしまったらしく、「早く家に帰りたい。」と、実家に急いだ。暖かい家族が、彼の土産話を楽しみにしてるはずだ。彼は、そこで、現世の愛情を知るだろう。
私は、大阪の難波まで行き、安いサウナに一泊することにした。難波の駅を出て、歩いていた時、
「この日記を、本にして欲しい。」と、頼むように、インスピレーションが、私の頭に伝わってきた。
「ええっー。」
私は、小説などの文章を書くのも読むのもすこぶる苦手なのだ。小説や歌は、心の寂しさを癒してくれるかも知れないが、私は、作者やその文章の向こうを感じてしまって、あまり、面白いと思ったことがない。そもそも、この日記をつけること自体が、私には自分の思いのようには思えていなかった。私は、
「本にするのは無理だ」と考えながら、いったい誰からのインスピレーションなのだろうかと、察知してみたが、お大師さんなのか、前の寺の住職なのか、別の和尚なのか、はたまた神様なのか、分からなかった。うまく流れてくれるのか?、どうなのか?。
同じ道を歩いた者の、三者三様の生き方が始まった。・・・つづく。