まるで、安い小説のエンディングの誰かの人生のようだ。これから、私たちは娑婆世界に帰る訳だけど、そこの人たちが、こんな簡単に、宇宙自然の法則に反応してくれることは、ほとんどないだろう。迷いと煩悩と屁理屈が、真人間の進化を、微妙に邪魔をしているのが娑婆世界なのだから。私も銀二さんのように「信じていれば、大丈夫。」と、仁王様のようにしていたいもんだ。銀二さんは、「もう歩かない。」と言っいたが、彼が娑婆世界に毒された時に、二回目のお遍路ががありそうだなと、私は思う。

 私たち三人は、マイクロバスのお遍路さんのお参りが終わるのを待って、そのバスに乗り込んだ。三人が一番後ろの席に一緒に座ることが出来たので、まるでお迎えの車が来たようだった。心の中で、三人ともそう思っていたと思う。

 マイクロバスが走り出すと、中のお遍路さんたちが、お菓子やら飲み物やらを私たちに布施してくださる。甘いものは疲れた身体には特に嬉しい。まるで、結願(廻り終えたことえ)のお祝いをしてもらっいるようだ。私は、

『何の願いもかなってないけど、全体、信じない訳にはいかないようなことが起きる。』 と、しみじみと思っていた。・・・つづく。