三人で、夕方だし、宿はないし、これからどうしようかと話をしていたら、近くの駅まで乗せてもらえそうな車を探そうということになった。もう歩くのはいやだった。やっぱり、みんな疲れていたのだ。
しかし、時期はもう十二月だ。お遍路には、時期外れで、しかも夕方、人もいないし、枯れ葉すら落ちていない。増して車などどこにもない。一瞬、どうするか三人は迷った。けれども、「もう、二度と遍路はしない。」と言っていた銀二さんが、
「信じていれば大丈夫。」と、すかりお遍路の妙味を示しながら、仁王様のように立っていた。霊伝さんは、
「・・・・・・・。」何も言わずに、石段に腰を下ろしていた。私は、
『どうせ、現実はこんなことだろう、歩いてもいいか。」と、あきらめがちに道路に出た。そうしたら、丁度、そこにマイクロバスが来てしまう。私は、
「あっ来た。」とか、口走りながら、身体がトコトコバスに近づいて行く。運転席の窓が、私の目の前まで来て止まった。私は、窓越しに、にこにこしながら運転手さんに話しかけてみる。
「すいません。近くのJRの駅まで乗せてもらえませんか?。三人なんですけど。」と言うと、運転手さんは、
「あっ、いいですよ。ちょうど、席が三つ空いていますから。」タイミングが本当に素晴らしい。娑婆の生活では、なかなかこうはいかないだろう。
人生だな、これは。・・・・つづく。