二人は、砂交じりの冷たい風の中を、砂の吹き付けるほほの痛みを感じながら、目を細めて、黙々と歩いて行く。
冷たい風の中、やがて、私は、スピードをそのままにして、力を抜いて歩くことに目覚める。
そのようにして歩いて行くと、私の心は、理由を必要とせずに、安定し、さらに、身体は寒さを身体全体で受け止めるようになり、心の底から湧いてくるような永遠の命のエネルギーを感じて、私の意識は環境に対して、「平気な」気持ちになっているように思えた。
しかし、一つでもバランスをくずしたり、弱腰になったりすると、風を引きそうな気がしている。ただ、運がいいのだろうか、バランスは崩れなかった。私の心の空間に、生命感が、その行動を支えるための必要な分量だけ、保たれている。
第六十七番大興寺(本尊・薬師如来・おん ころころ せんだり まとうぎ そわか)大師堂(南無大師遍照金剛)をお参りする。太くて、真っ赤なローソクの灯がのどかに揺れていた。赤い生命の灯だろう。・・・つづく。