この宿には、私の他に一人の若者が泊まっていた。彼とは、私が五十六番泰山寺へ向かっている時に、少しの間だけ一緒に歩いたことがある。聞いてみると、彼は、「夢安」(仮名)と言う料理屋さんに勤めていて、会社がお遍路参りを奨励していて、自分の順番が来たのだと言っている。名前は、板前らしく「銀二」(仮名)という。彼は、遍路笠ではなくて野球帽をかぶり、ジャンバーにジーパン姿で、お参りをしている。

 私と彼は、次の札所の雲辺寺へ向かって、出発した。出がけに宿の奥さんが、おにぎりの弁当を持たせてくれる。有り難い。

 二人は、冷たい風の中を雲辺寺山への山道を登った。

 山の上に着くと、昨日の強い風で枯れ枝があちこちに落ちていた。お寺の方が、こまめに掃除をされていたので、私と彼は、その人の後ろ姿に、挨拶して、

第六十六番雲辺寺(本尊・千手観音・おん ばざら たらま きりく)大師堂(南無大師遍照金剛)をお参りする。思っていたより広い寺だ。・・・つづく。



(用事があるので、もしかしたら、二・三日の間、更新できないかもしれません)