私は、歩きながら、その、ある意味でその満点な生き物を、後ろから凝視していた。前方のその生き物は、私の視線を感じたのか、立ち止まって、こちらを振り向く。疲れたひげ面が、
「ニコッ。」と、笑う。私は、
『むーっ。出たな妖怪遍路!!。ひげヤマンバ遍路。誰か、数珠をもてぃーー。・・・・・でもないか。私は、
「こんにちは。」
「こんにちは。」と、彼。私は、
「ぐっふふっ。」と、あきれ笑いを、こらえられない。彼は、
「いきなり笑わないでくださいよぉ。まじめに遍路をしているんですから。」、私は、
「フフフッ。」、彼は、
「またぁ、」
「ゴメン、でも、ふふふっ、どこが真面目なの。」彼は、
「情報ばかりで、どうしたらいいのか、分からない時代にですよ。人生の為に、お遍路をするという、このひた向きな気持ちが、分からないかなぁ。」と、顎を突き出す。私は、
「悩んでいるんだぁ。アハハ。」
そうしたら、彼が、声を裏返して、
「参ったなぁー。そんなに変ですか?。」
私は、冷たく、
「ヘンナ、遍路。」
「ははっ、なんですかぁー、それは。」と言う。・・・つづく。