それから、私は、横峰の雪道を滑らないように注意しながら下って、山道の遍路道に入る。その途中で、山に登っている坊さんに合う。彼は九州から来たと言う。この人も、あてにならない霊能者らしい。私は、少し話をする。そして、気持ちばかりのお接待をして、また山道を下る。

 山を下って、

第六十一番香園寺(本尊・大日如来・おん あびらうんけん ばざらだとばん)大師堂(南無大師遍照金剛)

第六十二番宝寿寺(本尊・十一面観音・おん まか きゃろにきゃ そわか)大師堂(南無大師遍照金剛)

第六十三番吉祥寺(本尊・毘沙門天・おん べいしら まんだや そわか)大師堂(南無大師遍照金剛)

第六十二番前神寺(本尊・阿弥陀如来・おん あみりた ていぜい からうん)大師堂(南無大師遍照金剛)と、四ヶ寺は、距離が近かったので、トントントントンとお参りした。

 夕方になって、私は、昨夜の寒さを思い出して、歩いている。と、目の前の石鎚温泉さんの看板が、

「お・い・でっ。」って、・・・・・・・『呼んでいるんだろうなぁー。アレは。』

・・・「きっと、そうだよ。」一人で言っている。

 お四国で、初めての贅沢と、自分の心を、自分の思っていることからほどいて、自分の感じているところの世間を許し、まっ透明な心に帰って、大げさな決心をして、まともであることと思い、温泉宿に泊まることにした。

 宿の温泉の湯船に浸かって、私が体を温めていると、「有り難い」「嬉しいと」と言う言葉が口をついて、出てくる。思わず顔がほころぶ。

「あぁー、いいなぁー。おーい。」ブク、ブク、ブク。・・・ブク。・・・つづく。