私は、銀平のお遍路さんと歩きながら、「今お参りしたばかりの南光坊で、いつも仏に通じていることをお願いしたんだ」、と理由も含めて、説法のつもりで彼に話をした。彼は、それなりに相槌を打ちながら聞いてはいた。私は、珍しいこともあるもんだと思いながら、次の札所まで彼と一緒に歩く。県道を通って、

第五十六番泰山寺(本尊・地蔵菩薩・おん かかかび さんま えい そわか)大師堂(南無大師遍照金剛)をお参りする。

 私が、この寺で、成仏の道に喜びがあることを願って、ゆっくりお参りをしていたら、銀平の彼は、この時とばかりに、先に行った。(やっぱりね。面倒くさい話は聞きたくないよね。と私。)彼は、どうも近くに宿を取っていたらしい。私は、いつもの気分で一人で歩た。

第五十七番栄福寺(本尊・阿弥陀如来・おん あみりた ていぜい からうん)大師堂(南無大師遍照金剛)を、お参りしたところで、四十過ぎの修験道のお遍路さんに出会う。彼は、「お四国で千日間、修行をしなさい」と、言い渡されたらしい。あちこちの寺で、頑張って修行をしていた。

 千日とは、これまた長いことだ。彼には、念力系の霊能力があって、彼が、九州の坊さんと、テントに泊まった時に、ローソクの火を大きくしたり、小さくしたりして、その力を見せていたらしい。すると、九州の坊さんも、一時的に火がコントロール出来るようになって、その坊さんは、面白がって、何度かローソクの火を、不自然にコントロールしたらしい。それで、修験道のお遍路さんが、「後で、そのエネルギーが、カルマとして帰ってくるから」と、言って、止めさせたと言う。私は、

「やっぱり、エネルギーと念力的なことは、自分で気づいて、体得しないと、その危険性も分からないですよ。」

と、言った。

 私は、修験道の男性と、次の札所まで、一緒に歩く。・・・つづく。