ここから六ヶ寺程は、寺から寺への距離が近い。私は、次の札所へ向かう。

 遍路道では、お遍路さんが生き倒れになったような場所に、お地蔵さんが祭ってあったり、また、地元の人の個人の墓地があちらこちらにある。今も、遍路道の隣に、大きな墓地があって、多くの人が、花を持ち、お参りされている。そう言えば、今日は、毎月の一日参りの日だ。家族ずれも多い。

 ここの墓地には、通常の墓以外に、墓石の形が不動明王の利剣に似ているものがたくさんある。それがまた、利剣のように良く光っているのだ。そして、どの墓石にも、今日は、色とりどりのお花が、花たてに咲き乱れるかのように、お供えしてある。お線香の香りも漂ってくる。

 ここはそんな景色だ。

 いい香りのお花畑と言えば、私は、むかし、尼僧さんから臨死体験の話を聞いたことがある。彼女は、

「きれいなお花畑があってね、その向こうに三途の川があったのよ。私はその川を渡ったんだけど、「まだ来るのが早い」と言われて、この世に戻って来たのよ。」と、言っていた。

 私は、その話を聞いて、きれいなお花畑と言うのは、現世の言葉では、「普遍的要素の多いい愛」、だと思って聞いたし、三途の川と言うのは、「普遍的命の流れだ」と思った。

 今のこの墓地の光景は、私の主観が、まるで臨死を体験しているようだ。

 私は一人、通り過ぎて行く。・・・つづく。