人生で雨風にあってばかりだから、個人的には納得できないところがあっても、歩いていると、札所に着く。

第五十四番延命寺(本尊・不動明王・のうまく さんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだ そわたや うんたらた かんまん)大師堂(南無大師遍照金剛)をお参りした。

 納経を終えて、土産物屋の前を通ったら、年のころなら 十八歳、若くてかわいらしいばっかりのお嬢さんが、コオロギのような声で、

「寒かったでしょう。金茶をどうぞ。」と、ニッコリ、お接待してくださる。

『いいじゃないですか。彼女は六十年ぐらい前の十八歳です。』

 私は、金茶の湯呑を手で包み込んで、

『あぁー、温かい。いい香りだぁ。』と、お茶をすすった。 

 見上げると、ついさっきまで、雪が冷え冷えと降っていたのに、今は、牡丹雪が、白の硬さを感じさせながら、はらはらと、朝の陽ざしの中を、舞っている。

 美しいなぁ。ばぁさん、あんたも白い牡丹かい?。

 いろんなことを、空のように見つめて、馬鹿になって、乗り越えてきたんだよね。

 その姿が美しい。

 超えて行く。

 自分の甘さも超えたような気がしましたよ。

 馬鹿でも、良心的なのは心が楽だ。・・・つづく。