冷たい雨の降る朝、おばあさん遍路さんと少し話をする。おばあさんは、低い声でつぶやくように、「ババは、行く。」と、顔をそらしながら目を伏せて言った。そして、私の方を向き直り、力強く、「あんた、幸せをつかんでくださいよ。」と、見据えた。 私は寂しかった、人生というものが。

 遠い、遠い、彼方から自然法則の雨が降る。

 逆回りのおばあさんは、出発した。少し遅れて、順周りの私も出発した。

 遠い、遠い、彼方から自然法則の雨が降る。

 私は、一番安い値段のカッパを買って、雨の中を歩いて行く。もう、雨についていやだと思うことはなくなっていた。歩きながら、御真言を唱えていると、さまざまな思いが流れ出てくる。

 私の心の中で、おばぁさんの一生を考えていたら、自分では分かっているつもりだが、『何が人生なの?。』、・・・・・漠然と浮かんでくる。私は、目頭が熱くなるような思いを、今は、嚙み締めるしかなかった。

 私はなぜ歩いているのか、なぜ日記をつけているのか、少しわかったような気がする。きっと、自分ではどうしようもない何かの理由や、物質的精神的障害などで、諦めて進んでいる人の為に、歩いて書いているような気がする。天涯孤独、孤立無縁でも菩提からの静かな幸せがあって、それに気づいてほしんだと思う。みんなと同じ幸せでなくても、今はそれで生きれるからと言いたのかもしれない。・・・つづく。