朝は、誰よりも早く起きて、そそくさと出発する。

第三十二番岩本寺(本尊・不動明王・のうまく さんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだ そわたや うん たらた かんまん)

(本尊・地蔵菩薩・おん かかかび さんま えい そわか)

(本尊・観世音菩薩・おん あろりきゃ そわか)

(本尊・薬師如来・おん ころころ せんだり、まとうぎ そわか)

(本尊・阿弥陀如来・おん あみりた ていぜから うん)

大師堂(南無大師遍照金剛)を、お参りした。

 いよいよ、百キロの旅の始まりだ。無事に身体は動いてくれるだろうか。

 県道をトクトクと歩く。トクトクと歩く。

 ダンプが、風を吹き付ける。遍路がすさぶ。

 無理な追い越しをする車が、事故すれすれで、生き延びる。この世の狭間がそこにある。

 頭を下げて、御真言を唱えて、歩き続ける。歩く、歩く。自分の深層意識が、出てくるまで。歩く、歩く。

 ゆるしの海が、キラキラ光る。

 遍路の心に、何が見える。真言唱えて何が見える。

 この世の仇を、どう裁く。

 祈って祈って、善をなし、拝んで拝んで、徳を積み、

 過去もないし、今も過ぎる。

 歩いて、歩いて、つじつまの合わないこともそのまま流れて行く。

 歩いて、歩いて、本当の命の心に触れて、未来をかけてみる。

 トンネルを過ぎて、温泉を掘っているらしい工事現場があったので、許可を受けて、そこにテントを張る。思ったよりも、距離が稼げなかった。まだ負けたむない。・・・つづく。