映画「娼年」松坂桃李がMUTEKIデビューしたのかと思った(ら、違った) | 忍之閻魔帳

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▼映画「娼年」松坂桃李がMUTEKIデビューしたのかと思った(ら、違った)

 

 

劇団「ポツドール」の主宰であり、

当BLOGでも紹介した映画「愛の渦」「何者」の監督としても活躍中の

三浦大輔の新作「娼年」が公開中。

愛を信じられないひとりの青年が、女性専用の売春倶楽部で働きながら

人間として成長する様子を描いた本作は

石田衣良の原作で2016年に舞台化された「娼年」を映画化したもので

主演は舞台版と同じく松坂桃李。

共演は真飛聖、冨手麻妙、猪塚健太、桜井ユキ、西岡徳馬、江波杏子。

R18指定作品

 

三浦監督は「愛の渦」でも門脇麦や池松壮亮に大胆な演出をつけていたが

今作はどういうわけかハーレクインロマンス需要というか

それなりの年齢の女性をターゲットにしているフシがあり

「男の裸を餌にして女性客を釣る」商法は本作の描くメッセージから

一番遠いような気がして、そこだけは違和感。

 

これは公開前に私が予告編を見て書いた感想なのだが

結論から言うとこの予想はほぼ当たっていたように思う。

全体の8割は言い過ぎだとしても全体の6割強は確実に性行為のシーンであり

ストーリー性のあるAVのほうがよっぽどまどろっこしいぐらい

数分おきに松坂桃李が様々な年齢・職業の女性を相手に腰を振っている。

朝ドラにも出演し主演作品を何本も持つ松坂桃李にここまでやられてしまうと

女性相手のセクシービデオに出演する、いわゆるエロメンは立つ瀬が無かろうし

他の若手俳優も、今後は安易に「体を張った」とは言い辛かろう。

それほど体当たりで森中領という青年を演じているのは事実だ。

 

しかし、松坂の奮闘とは裏腹に作品の方は

肝心のテーマがありきたりで、かつ作者の差別意識も少なからず入っていて賛同しかねる。

この映画は男娼として働く青年の孤独にスポットをあて、

人間的な成長を描いているようでいて、実は「蛙の子は蛙」だと言っているのである。

賎業に身を落とす人間は親もその程度の人間、血は争えないとでも言わんばかりの展開は

共感しているように見せかけて取材対象の懐に入り込み、

飯のネタを引きずり出した途端に足早に去っていく芸能リポーターのよう。

涙を流しながら腰を振る青年の姿をモニター越しに眺めながら

「あはは、愛に気付いたつもりになってら、めでてー野郎だな」と

嗤っているように私には見えてしまった。

この作品が、カイジ的な視点を盛り込んだ悪趣味な観察日記だと言うのであれば

松坂桃李は道化として満点だし、ストーリーにも文句はないが

原作者が私とは滅法相性の悪い石田衣良であることを考えると、

ファッション感覚で人の不幸に土足で踏み込み

雰囲気だけで小説にしてしまったのではと勘繰ってしまう。

 

三浦監督は初監督を務めた「愛の渦」でもセックスに悩む若者達を描いていた。

「愛の渦」を”セックス・コメディ”と名付けていた監督なので

本作にも多分にお笑いの要素が入っていて、

ここが原作にはない、監督(映画版)のオリジナリティになっている。

松坂桃李の艶技が勢いづけばづくほど、女優が激しく叫べば叫ぶほど

妙に笑えてくるのは意図的な演出だろう。

特に最後の母娘疑似3Pシーンなどは

母親が完全に幽体離脱していてほとんどB級ホラー映画である。

私は楽しめたがいいのかあれで。

ただ、特殊な性癖(フェティシズム)にまで言及するのであれば

慎重にやらないと偏見を助長しかねないのでもう少し気配りが欲しかった。

馬渕英里何はまだいいとしても、西岡徳馬のエピソードは

完全に「笑ってはいけない」系の芝居になっていて

劇場のあちこちから笑い声が漏れていた。

 

こんなにセックスのことを書くのは「愛の渦」以来なので

どこまで書いて良いか悩むのだが、もう書き始めたのでついでに書く。

この映画が失敗しているのは、松坂桃李のセックスが

映画の最初と最後でほとんど成長していないことだ。

ストーリーからすれば、面接時に抱いた女性を最後にもう一度抱くのは

主人公がたくさんの女性と身体を重ねたことで人間的に成長したことを

印象づけたいのが狙いなのだろうが、困ったことにあまり変化が見えないのである。

さらに言えば、松坂の性行為は「AVばかり見て実体験の無い童貞」のようで

行為そのものは激しいが頭でっかちなプレイばかりでエロさが無い。

あんなに高速で指を使うことは加藤鷹でもしないし、

腰の振り方も猿の交尾を見ているかのよう。

映画の序盤で「あなたのセックスは自分本位だ」と指摘されてショックを受けるシーンがあるが、

ショックを受けた割には最後の最後まで自分本位なセックスをしているのである。

 

狙いは分からないことはないし、

今この役を演じられるのは確かに松坂桃李しかいないだろう。

しかし、主題がぼやけたまま終わってしまった感は否めず

三浦監督のコメディ要素が一部で暴走して

何だか良くわからない映画になってしまった。

茶化すならとことん茶化せばいいし、

真面目にやりたいなら笑いは封印すべきだったのでは。

 

映画「娼年」は現在公開中。


▼エロティック・テラスハウス。映画「愛の渦」(過去ログより抜粋)

 

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*2018年4月12日現在、プライム会員なら無料視聴可能

 

「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で映画監督デビューを果たした
劇作家・三浦大輔の新作は、自身が主宰を務める劇団ポツドールの代表作であり
第50回岸田國士戯曲賞も受賞した「愛の渦」の映画化。
マンションの一室を使って毎夜繰り広げられている
乱交パーティの現場を覗き見したようなドラマ。
保育士、サラリーマン、フリーター、女子大生。。。
昼間の顔では決して交わることのない男女8人が
体の繋がりだけを求めて欲望や性欲を露にしてゆく。
主演は池松壮亮。
共演は新井浩文、滝藤賢一、三津谷葉子、中村映里子、駒木根隆介、赤澤セリ、
柄本時生、信江勇、窪塚洋介、田中哲司。
池松と体を重ねる女子大生役に大抜擢されたのは門脇麦。

本作の出演をきっかけに、門脇は現在も大活躍中の売れっ子になった。


この映画は乱交と呼ぶには淡白過ぎる気がする。
三浦監督は本作を「セックス・コメディ」と名付けていることから
異性の肢体を品定めし、股間の疼いた相手と無心になって求め合う
動物的なところまで遡った性行為を描く作品ではないのだろう。
子孫繁栄を目的としない、愛情すらも必要としない
快楽だけを重視したセックスを描く作品だと思っていた私は少々拍子抜けした。

本作のウリは全てを脱ぎ捨てて露になる人間の本性ではなく
セックスになだれ込むまでのグダグダと回りくどい会話であり
タオルの下で「早くやらせろ」「早くしてよ」と思いながら
敢えて遠回りしてしまう日本人的なまどろっこしさを笑う作品なのである。
2万円も払ってここまで面倒臭い思いをするぐらいなら
素直に風俗に行った方が良いのでは・・・は禁句だろうか。
これは乱交パーティではなく、ラブホテルで開かれる合コンと言った方が正しい。
深夜に放送されているバラエティ番組を見ていると
夫婦で参加するスワッピング乱交や、セレブ御用達の仮面乱交など
唖然とするような体験談を事も無げに暴露する素人出演者が多くいて
この映画に出ている参加者達(特に男性陣)は、高い会費を払いながら
彼等の半分もセックスライフを楽しんでいないように見える。
セックスシーンの描き方がとても単調で淡白なことがさらに拍車をかけ
(これを書いて良いのかは迷うが)見ていて全然羨ましくないのである。

後半15分ぐらいに旨味成分のほとんどが集中しているため
観賞後は「面白かった」と思えるようには出来ている。
知名度のある俳優を使ってここまでの思いきった作品を撮ったことも賞賛に値する。
テンポやまとまりの悪さはあれど、日本映画でここまで出来れば上出来。
エロティック版のテラスハウスとして、女性にもお薦め。




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