わかっていたことだけれど、もしかしたら間違いでは?と思いながら、その2週間後、病院に行った。
内診のあと、医師が言った。
『まだ、受精して1ケ月も経っていないと思いますが、確かに妊娠していますね。』
・・・やっぱり・・・。
どうしよう・・・。
この2週間ずっと考えていた。
でも・・・やっぱり産むわけにはいかない。
リスクが多すぎる。
母はなんて言うだろう。
親戚からは当然非難されるだろう・・・。
仕事はどうしよう・・・。
結婚前に妊娠したなんて、ふしだらと絶対思われるのに、相手がバツで子どももいたら・・・絶望的だ・・・。
みんなに祝ってもらえる結婚&出産なんて無理・・・。
私は堕胎を考えていた。
ただ、自分の意思で堕胎をしたくなかった。
しかたなく堕胎をしなければならないっていう状況に逃げたかった。
・・・私は赤ちゃんが大好きだった・・・。
『・・・先生。私は受精したと思われる頃に、大量のお酒を飲んでいたんですが・・・。
これは、大丈夫なんでしょうか・・・。』
『それに、風邪薬もずっと飲んでいたんです・・・。』
つたない知識だったけれど、両方、赤ちゃんにとってあまりよくないという情報を得ていた。
医師は私の気持ちを見透かしていた。
『全面的に大丈夫とは申し上げることは出来ません。
絶対、障害のないお子さんが産まれてくるなんて確証はありませんからね。
どんなに健康に気をつけているご夫婦の間にも、障害児は産まれることはあります。』
『ただ、今の時期でしたら、お酒を飲んでいても、薬を飲んでいてもたぶんあまり影響はありませんね。』
『脳にいちばん影響が出るのは、脳が形成される時期です。
2~3ヶ月ってとこです。
あなたの場合は、まだ細胞分裂が始まったばかりで、たぶんほとんど影響はありません。』
『それに、薬については病院が処方している薬や一般で販売している薬ならば、ほぼ影響はありません。
お酒も、アルコール依存症でなければ今の時期ではたぶん問題はありません。』
きっぱり言われた。
私は、小細工をしたことが情けなかった。
『何度も言いますが、当病院では基本的には堕胎はしません。よくお考えになって下さいね。』
私だって赤ちゃんをおろしたくなんてない。
でも・・・。
産めるわけないよ・・・。
このときは、堕胎をすることを考えていた。
この病院では堕胎は出来ないらしい。
(実際はしていたらしいけれど。私はおっしゃることをそのまま信じていた。単純なので。)
じゃあ違う病院に行こうと思った。
とにかく、堕胎をしたほうがいいと思っていた。
当然イヤだけど。・・・でも仕方ないと。
私は少し大きい個人病院に行った。
たぶん、赤ちゃん(長女)はその時は2ヶ月をちょっと過ぎたくらいだったと思う。