クリード・テイラー、あんたもしかして、やったね? | ジャズについて話そうか

クリード・テイラー、あんたもしかして、やったね?

CDをいろいろ買っていると、あれこれ聴いたっけ?

なんてやつも結構あったりして。

 

整理していたら、こんなの出てきた。

 

<ルーズ・ブルー> ボブ・ハーダウェイ

絶対一回は聴いているはずだけど、覚えていない。

こういう時は興味のある曲から聴いてみよう。

 

一番最後8曲目「インディアナ」。

この曲はコード進行を拝借したマイルス作の「ドナ・リー」と言った方が

モダン好きにはしっくりくるのだけれど、

ボブは一聴してわかるレスター・ヤング系でなかなかですよ。

 

次一曲戻って7曲目「アイ・カヴァー・ザ・ウォーター・フロント」。

いきなりリバーブ(残響)がすごい(笑)。

あきらかにやりすぎだよ。お風呂じゃないんだから。

このあたりから何やらよくない予感が。

 

ズート・シムズ系の大好きなテナーっぽいのに、

なんか素直に楽しめないんだよな。なんでだろう?

 

そう感じていた僕の予感は、3曲目に聞いた「アウト・オブ・ノーウェア」で

的中してしまった。

 

CD5曲目の「アウト・オブ・ノーウェア」。

ボブは、ちょっとウネウネするズートみたいな感じで、スインギーに飛ばしていく。

いいじゃないか。

 

マーティ・ペイチのピアノソロの後、またボブによるテナーソロに入った。

そして、3:46のところで僕の耳は信じられない事象をとらえた。

よかったらみんなも実際聴いてみて欲しい。

 

サックスソロの音がかぶっているのさ。

サックスの音が延びているのに、その上からまた違う音でソロが始まっている。

サックスはボブ一人のはずなのに……。

キャーッ! オカルト?

 

これミキシングでソロを繋いでいるんだよね。

なんで?

これには、がっかり。何回聴いても繋いだ跡は僕にははっきり聴こえる。

 

1955年録音のストレートジャズなのに、どうしてこんなことが起こったのさ。

あわててジャケットを見直すと、「ベツレヘム」というレーベルだった。

当時ブロードウェイとニューヨークに事務所を持ったマイナーレーベルだ。

 

「ベツレヘム」、1955年。

ははーん。

 

詳細はわからないけど、おそらくは奴の仕業だな。

奴とはクリード・テイラー。

後に60~70年代にライトジャズの「CTI」を立ち上げるプロデューサー。

この当時は「ベツレヘム」の音楽監督だったのさ。

 

クリード、あんたもしかしたら、やったね?

 

CTI時代は、ライブ録りで音量の小さくなったジャック・ディジョネットのドラムを

演奏者クレジットはジャックのままで影武者のスティーヴ・ガッドで録り直したと言う話は

有名な剛腕。

 

おそらく、最後の方でミスったボブのソロを入れ替えることくらい

お手の物でしょう。ね、そうでしょう?

 

バラードになると一転、お風呂リバーブになったり、

あろうことかジャズのソロを繋いだり、あんたちょっとやりすぎなんだよ。

 

割を食ったのは、このアルバムが初にして最後のリーダー作になった

テナーサックスのボブ・ハーダウェイ、その人だ。

表題曲を含め、前半の曲はスイングしていて良いだけに惜しいね。

何か素直に聴けなくなっちゃった。

古い男でごめん。

 

クリード、猛省してほしい。

 

……とここまで書いてきて、ライナーを見ると

ボブ・ハーダウェイのお父さんはワーナー・ブラザーズ社の

アニメーターだったらしい。

「バッグス・バニー」とか「ウッド・ペッカー」とかの。

 

へー、そうなんだ。懐かしいなアニメ。

ん、待てよ。

ということは、ボブは小さい頃から、お父さんのアニメーターとしての

仕事、細かい絵を繋いでいく作業に慣れ親しんでいたのでは?

 

もしかしたら、自分のソロの失敗を、もう一回やり直したものを

つぎはぎすることにしたのは、ボブ本人なのでは?

それを音楽監督のクリードがサウンド・グッドということでOKしたのでは……。

 

なんて考えも起こってきた。

そして、まてまて、当時の録音エンジニアは、

のちにクラプトンらと「いとしのレイラ」なんかをやっちゃう

ロックやポップス畑で大成功するトム・ダウドでは。

 

そのトムがポップスの乗りで、

クリード、ソロを繋いだ方がサウンド・グッドだぜ。そっちの方が断然売れるよ。

なんてご注進に及んだのでは……。

 

どうなんだ? はたして真相は?

 

いずれにしても、実力の割に決して脚光を浴びたわけではない

このボブ・ハーダウェイみたいなミュージシャンには、

そういった笑えない事情が複雑に絡みあい、

一篇の短編小説のような味わいを楽しませてくれるのだろうね。(違うか)

 

それもまたジャズの醍醐味かな。