
子供が、それも小さな子供がとても可愛いお手てで、私達を掴もうとする。
とても可愛らしく愛くるしい。
背伸びをして、精一杯に腕を伸ばして手を広げる。
この子が私達を掴んだらきっと私達は、皆とはお別れになる。
長く生きた年月にも終わりがくる。
けど…それもいいかもしれない。
こんな小さな子が私達を掴んで、成長するかもしれない。
その姿を見れるかもしれない。
ずっと見ていた景色よりその方が良いかもしれない。
「こらっ。危ないでしょ。」
子供の近くに若いお母さんが来た。
「さぁ、く、ら…」
子供がそう言うと私達をみる。
「ダーメ。」
お母さんが滑り台の上に乗っていた子供を抱いて下ろす。
「やぁーあ!」
子供がお母さんの腕の中で暴れる。
「桜はね。皆が集まるから綺麗なの。一つだけの花でも綺麗だけど…」
お母さんが子供の頭を撫でる。
「空やこの景色と一緒の方が桜の花もとても嬉しいの。」
お母さんが子供に向けていた視線を私達に向けた。
その視線は、顔はとても優しくて暖かいものだった。
私達は彼女を見たことがある。
彼女も、子供の頃、あの子供のように私達に手を伸ばしていたから。
そして手が届くようになった時、私達に言った。
『これからもいっぱい、花を咲かしてねっ!約束だよ。』
彼女が二桁の歳にも言っていない時、私達にそっと触れてそう言った。
彼女は毎年、私達を見にくる。
そして彼女はお母さんとなり子供を連れて来た。
彼女の子供も現れてくれるだろうか。
楽しみにしよう。
ちょうど風が私達を誘った。
『これからもよろしく。』
私達は少し派手に、感謝の気持ちも込めて…ゆっくりと揺れた。