私のカミングアウトレターズ-5
弟、ごめんね、と、口に出したか、心の中か、一言、呟いてから、
「結婚しないのは、私が付き合っているのが女性だからです」
と、二人に向けて、いった。
やっぱり…と母親が呟いてから、それじゃあ子供は生まれないわよね…と
残念そうに、ぽつりと言葉を継いだ。
そこから何を話したかは、じつは記憶がすこし曖昧だ。
とにかく、いま幸せで、その人と一緒に生きていきたいと思っていて、
ただ、その道の先に、いま結婚や子供がいないだけで、
なにかトラウマがあるとかではないんだ、とか、
そして今、女性と付き合っているというだけでなく、
女性としか付き合えないんだ、といったようなことを、
ただただ一生懸命話した気がする。
全然、私はきちんと話せてなんかいなかったと思うけれど、
親は二人とも、ものすごくきちんと話を聞いてくれた。
なんの否定もせず、怒鳴ることも、泣くことも、責めることもせず、
どんな人なんだ、とか、何をしている人なんだ、とか、
どこら辺に住んでいて、どの辺りに勤めているのかとか、
ものすごくふつうに訊いてくれた。
つきあってどれくらいなんだ、と聞かれ、一年と9カ月くらいかなと
答えたら、全然短くなんかないじゃないか、そんなに付き合ってるのに、
まだ一緒に住んでいないのか、といわれて、驚いた。
ちかぢか一緒に住むつもりで、それが一つの区切りだから話そうと思った
といったら、どの辺りにすむんだとか、いつ頃からの予定だとか聞かれるだけで、
本当に一つの反対もなくて、私はただただ、一つ一つ、答えていた。
男の人を好きになったりはしないのか、とも聞かれたので、
私の感じ方を説明したら、それはそれ以上何もいわれなかった。
母親は、孫が出来ないのが、残念、と、少し悲しげに嘆息するように言った。
ちょっと前に、弟に言った時、驚いたけど姉ちゃんが一人でなくてよかった、
と言われて嬉しかった、というような話をしたら、父親は笑って
「あいつは姉ちゃん、大好きだからなあ」といい、
「でも、同じようなことを思うよ」といってくれた。
私は、ありがとうってちゃんと言えてただろうか。
***
気がつけば、夕暮れが迫っていた。
これから予定があるという両親に、駅まで送ってもらって、手を振って、別れた。
最後に父親は、
「お前はもうちょっと、俺たちと遊んでくれなきゃだめだ」
といって、笑った。
あおちゃんのうちに向かう電車に揺られながら、
絶えず涙がこみ上げてきて、こらえるのに必死だった。
あおちゃんに会って、どんな感じだった、という話をしているのに、
なんだか現実感がまるでなくて、ご飯を作って、食べても、
どこか上の空で、少し気が緩むと、涙が出てとまらなかった。
今でも、なんであの時あんなにも泣けたのか、自分でも説明がつかない。
悲しいはずも、辛いはずも、悔しいはずもない。
親は私を否定せず、きちんと聞いてくれて、私はすごく嬉しかったし、
すごくありがたかったし、悪い予想はなにひとつあたらなかった。
でも、とめようもなくこぼれてくる涙は、感動の涙というのも違った。
よるべないような喪失感に、ただただ泣けてしょうがなかった。
「話しを聞いてくれてありがとう」とメールした私に、
「話をしてくれてありがとう。お前が幸せなことが俺の願いだ」と
返ってきた父親のメールには、さらにひどく泣いた。
あおちゃんはずっと頭や肩を撫でてくれて、夏の夜のぬるい空気の中、
長い散歩につきあってくれた。
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「結婚しないのは、私が付き合っているのが女性だからです」
と、二人に向けて、いった。
やっぱり…と母親が呟いてから、それじゃあ子供は生まれないわよね…と
残念そうに、ぽつりと言葉を継いだ。
そこから何を話したかは、じつは記憶がすこし曖昧だ。
とにかく、いま幸せで、その人と一緒に生きていきたいと思っていて、
ただ、その道の先に、いま結婚や子供がいないだけで、
なにかトラウマがあるとかではないんだ、とか、
そして今、女性と付き合っているというだけでなく、
女性としか付き合えないんだ、といったようなことを、
ただただ一生懸命話した気がする。
全然、私はきちんと話せてなんかいなかったと思うけれど、
親は二人とも、ものすごくきちんと話を聞いてくれた。
なんの否定もせず、怒鳴ることも、泣くことも、責めることもせず、
どんな人なんだ、とか、何をしている人なんだ、とか、
どこら辺に住んでいて、どの辺りに勤めているのかとか、
ものすごくふつうに訊いてくれた。
つきあってどれくらいなんだ、と聞かれ、一年と9カ月くらいかなと
答えたら、全然短くなんかないじゃないか、そんなに付き合ってるのに、
まだ一緒に住んでいないのか、といわれて、驚いた。
ちかぢか一緒に住むつもりで、それが一つの区切りだから話そうと思った
といったら、どの辺りにすむんだとか、いつ頃からの予定だとか聞かれるだけで、
本当に一つの反対もなくて、私はただただ、一つ一つ、答えていた。
男の人を好きになったりはしないのか、とも聞かれたので、
私の感じ方を説明したら、それはそれ以上何もいわれなかった。
母親は、孫が出来ないのが、残念、と、少し悲しげに嘆息するように言った。
ちょっと前に、弟に言った時、驚いたけど姉ちゃんが一人でなくてよかった、
と言われて嬉しかった、というような話をしたら、父親は笑って
「あいつは姉ちゃん、大好きだからなあ」といい、
「でも、同じようなことを思うよ」といってくれた。
私は、ありがとうってちゃんと言えてただろうか。
***
気がつけば、夕暮れが迫っていた。
これから予定があるという両親に、駅まで送ってもらって、手を振って、別れた。
最後に父親は、
「お前はもうちょっと、俺たちと遊んでくれなきゃだめだ」
といって、笑った。
あおちゃんのうちに向かう電車に揺られながら、
絶えず涙がこみ上げてきて、こらえるのに必死だった。
あおちゃんに会って、どんな感じだった、という話をしているのに、
なんだか現実感がまるでなくて、ご飯を作って、食べても、
どこか上の空で、少し気が緩むと、涙が出てとまらなかった。
今でも、なんであの時あんなにも泣けたのか、自分でも説明がつかない。
悲しいはずも、辛いはずも、悔しいはずもない。
親は私を否定せず、きちんと聞いてくれて、私はすごく嬉しかったし、
すごくありがたかったし、悪い予想はなにひとつあたらなかった。
でも、とめようもなくこぼれてくる涙は、感動の涙というのも違った。
よるべないような喪失感に、ただただ泣けてしょうがなかった。
「話しを聞いてくれてありがとう」とメールした私に、
「話をしてくれてありがとう。お前が幸せなことが俺の願いだ」と
返ってきた父親のメールには、さらにひどく泣いた。
あおちゃんはずっと頭や肩を撫でてくれて、夏の夜のぬるい空気の中、
長い散歩につきあってくれた。
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