行きつけのコンビニに、好きな店員さんがいる。

特別愛想が良いわけでも、接客が丁寧なわけでもないが、

いついかなるときも変わらない対応。

「ありがとうございまーす」
と、独特のイントネーションも判で押したように変わらない。

皆勤賞取れるほどに通いつめている私にも、馴れ合うことなくどのお客さんとも変わらない。

その変わらなさが、無性に安心するのだ。


さっき、タバコを買いに行った。

レジへ行く直前、目線をタバコの方へ向けただけで、私の吸っているタバコをなにも言わず用意してくれた。

たまに2つ買うことも見越して、2つ。

思わず笑顔を向けたが、これまたいつもと変わらぬ表情で淡々とレジを打つ。


笑顔を見てみたい気もするが、この変わらぬ淡々とした対応が、私は嬉しい。
夜空を囲う雲が、なぜか少し赤く、明るい。

突然聞こえたのは、白鳥の声。

北へ向かうはずが、東へ。
たった二羽。

お互いを確認し会うように鳴きながら飛んで行く。

その声の大きさに思わず空を仰ぐ。

僅かに赤い曇天に、まっさらな白い羽が浮かび、迷うことなく進んで行く。

すぐに雲に紛れて見えなくなったけど、鳴き声だけが響いていく。


季節は次々通りすぎて、私を置いていく。

何回目かわからないほど待ち望んだ春はもう来てるのに、

また置き去りだ。

うんざりだ。
定時帰りの道程で、
上ノ橋の擬宝珠の向こうから聞こえる水音にふと足を止める。

この寒さに不似合いな涼やかさと
染みるような冷たさ

何故だか少し混乱する町中で聞く川のせせらぎ。


深呼吸深呼吸。
物心ついた頃には枕元にあったタオル。

大事なのは端の耳の部分で、眠りに落ちながら指で挟んで擦るのが癖だった。

長年擦りすぎて破けて半分になってしまったけど、
手放せず毎夜モミモミしている。

洗濯すると固くなるから、もういつ洗濯したか記憶にない。

あまりに使い古してる為、代わりの何かを見つけたいが、近年のタオルは耳が小さくて固いから見つけられない。

思い返すとまたあのタオルを触りたくなる。


これこそ、ライナスの毛布と思いません? 
この令和の時代にありながら頼りなげな、街灯の狭い光の輪の中に、
ちぎれた和紙のようにはらはらと、雪が舞ってる。

限られた約2メートル四方を照らされた正円で、突然可視化されるほど、仄かな降雪。

見上げる剥き出しの頬に、静かに落ち溶けた。


冬だ。

毎夜、寒さに凍えながら、寂しさにも耐えてきた。

もう慣れた。

なのになぜ、涙が浮かぶのか。

何を思い出しているのか。


瞬く星、燦々と輝く月、その月に照らされ影を落としながら流れる雲。

そんな月夜の晩にも、何を思うのか。


なぜ私は毎夜移ろう空を見て、涙を堪えているのだろう。


多分、答えは分かってる。


でも欲しいのは答えじゃない。