「かえるくん、東京を救う」 村上春樹 1 「神の子どもたちはみな踊る」より | 瞬間(とき)の栞 

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ただしネタバレがありますので充分ご注意ください!

 

「あなたがぼくのうしろにいて、

 

『かえるくん、がんばれ。大丈夫だ。

 

君は勝てる。 君は正しい』 と声を

 

かけてくれることが 必要なのです。」

 

 

 

 

 

 

 

「かえるくん、東京を救う」 村上春樹

「神の子どもたちはみな踊る」より

 

 

 

 

 

 

 

「ぼくのことはかえるくんと呼んで下さい」

 

 

 

 

片桐が仕事からアパートの部屋に帰ると、巨大な

(背丈が2メートル以上ある) 蛙が待っていました。

 

 

 

かえるくんは、片桐を導き、アパートの中の

台所の椅子に座りました。

 

 

 

まるで「ウルトラセブン」のメトロン星人とモロボシ・

ダンがちゃぶ台を挟んで「人間の信頼と関係の脆さ」

を話しはじめたかのように、これから起こる「東京の

壊滅」を救う計画の話を、かえるくんは片桐に切り

出しました。

 

 

 

2月18日の朝8時半頃、東京に大きな地震が

襲います。今、話している時点から3日後です。

 

 

 

震源地は、片桐が勤めている東京安全信用

金庫新宿支店の真下。

 

 

 

 

片桐は、東京安全信用金庫の融資管理課

係長補佐で返済金取りたての仕事をしています。

 

 

 

かえるくんは、なぜか片桐のことを

詳しくよく知っています。

 

 

 

片桐は、両親が亡くなったあと、まだ十代だった

弟と妹を男手ひとつで育てあげ、大学を出して

結婚の世話までしたという。

 

 

 

そのために片桐自身は、収入や自分の時間を

犠牲にし、結婚することもできませんでした。

 

 

 

仕事でも「取り立て」という地味で危険なことを

引き受け、正当に評価されなくても黙々とこなして

きました。

 

 

 

そんなことをかえるくんは、まるで守護霊さんの

ようにお見通しで、片桐を評価しているのです。

 

 

 

 

「ねえ、かえるさん」と片桐は言った。

 

 

 

「かえるくん」 と、かえるくんは指を1本

立てて訂正します。

 

 

 

「ねえ、かえるくん」

片桐は、言います。

 

 

 

「あなたがその地震を阻止しようと?」

 

 

 

「そのとおりです。ぼくが片桐さんと一緒に

東京安全信用金庫新宿支店の地下に

降りて、そこでみみずくんを相手に闘うの

です」

 

 

 

 

みみずくん?

 

 

 

かえるくん?

 

 

 

 

みみずくんは、ひどく腹を立てているようです。

何に腹を立てているのかはかえるくんにも

わかりません。

 

 

 

「彼は普段はいつも長い眠りを貪っています。
地底の闇と温もりの中で、何年も何十年も

ぶっつづけて眠りこけています。

 

 

 

当然のことながら目は退化しています。
脳味噌は眠りの中でねとねとに溶けて、

なにかべつのものになってしまっています。

 

 

 

実際の話、彼はなにも考えていないのだと

僕は推測します。

 

 

 

彼はただ、遠くからやってくる響きやふるえを

身体に感じとり、ひとつひとつ吸収し、蓄積

しているだけなのだと思います。

 

 

 

そしてそれらの多くは何かしらの化学作用に

よって、憎しみというかたちに置き換えられてます。
どうしてそうなるのかはわかりません。
ぼくには説明のつけられないことです。」

 

 

 

みみずくんの憎しみは、これまでにないほど

大きくなっていて、おまけに先月の神戸の

地震によって心地よい深い眠りを唐突に

破られました。

 

 

 

3日後に東京で大地震が起こることは

仲の良い虫たちの情報筋から聞いていて、

間違いないとかえるくんは片桐にきっぱりと

言います。

 

 

 

かえるくんは、「みみずくんと闘って地震を

阻止する」と言い、それには片桐の

正義と勇気が必要だと言うのです。

 

 

 

片桐は前述したように、自分の時間と

収入と結婚を弟と妹のために犠牲に

してきました。

 

 

 

仕事でも「取り立て」という地味で危険なことを

引き受け、黙々とこなしてきました。

そのことに対しても、上司や同僚は正当な評価

をしていないし、認められなくても片桐は

愚痴一つ言いませんでした。

 

 

 

あなたがぼくのうしろにいて、『かえるくん、

がんばれ。大丈夫だ。君は勝てる。

君は正しい』と声をかけてくれることが

必要なのです。

 

 

 

共に闘う相手として、かえるくんは片桐に

「あなたのような人にしか東京は救えなく、あなた

のような人のために東京を救おうとしている」

と語りました。

 

 

 

 

「かえるさん」と片桐は言った。

 

 

 

「かえるくん」とかえるくんは、また

指を立てて訂正した。

 

 

 

かえるくんは、この状況をよくわかっていない

片桐と取り引きをします。

 

 

 

今、片桐が仕事で直面している融資の焦げ付き

(約7億円)で困っていることを、明日の朝までに

解決するというのです。バックには暴力団がらみの

総会屋がついていて、背後には政治家の存在まで

見え隠れしているという・・・・・・

 

 

 

翌朝、片桐が出社すると、この件の

担当弁護士から電話がありました。

 

 

 

 

「今朝ほど依頼人から連絡が

ありまして、今回懸案になって

おります借入金の件につきましては、

そちらの要求通りの金額を、責任を

持って期日内に返済するということ

でした。それについては念書も入れ

ます。

 

 

 

だからもうかえるくん、、、、、をうちに

よこさないでほしいということでした。

 

 

 

繰り返しますが、もううちに来ないように

かえるくん、、、、、に頼んでほしい、ということ

でした。」

 

 

 

 

 

つづきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【出典】

 

「かえるくん、東京を救う」 村上春樹

「神の子どもたちはみな踊る」より 新潮社

 

 

 

 

 

 

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