「ラストレター」 さだまさし | 瞬間(とき)の栞 

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幸せ、癒し、心の栄養になる「本と言葉」をご紹介してゆきます!
個人的な読書感想文、読書随想です。本の内容、あらすじができるだけ解るように努めています。
ただしネタバレがありますので充分ご注意ください!


テーマ:

 

「ひとはよ、皆、小さな人生を、

 

歯ぁ食いしばって 生きてんだ。

 

そいつらの切ない叫びを黙って

 

聞いてやったら どうだ!」

 

 

 

 

 

 

「ラストレター」 さだまさし

 

 

 

 

 

 

東亜放送 入社4年目の寺ちゃんこと、
新米アナウンサー寺島尚人は、大越P
に「ちょっとこっち来い」と呼ばれます。
 
 
 
僕、「寺島尚人」というアナウンサーは
一般的には、ほぼ無名であって、局内
でもボクちゃんだとかボウズ、と呼ばれる
ような、小間使いの便利な新米アナの
一人に過ぎない。
 
 
 
 
東亜放送オフィスで、寺島の対面の席に
座っている伝説的な最古参プロデューサー
 
 
 
 
大越大五郎
 
 
 
 
大越さんは、見てくれも凄いが、社会人なら
誰でも凍りつくような危険単語を連発し、
下品な放送禁止用語を突如、大音声で叫ぶ
異次元な人物。
 
 
 
 
その大越さんが、寺島を呼び説教します。
 
 
 
 
「昔の深夜放送には体温があった」
 
 
 
 
「たかが一枚の葉書を書くのに、ものすげぇ
勇気が要ってよ、書いたって読まれねえの
によ」
 
 
 
「それを今はツイッターだメールだファックスだ
ラインだろが・・・・・・」
 
 
 
「ヒステリックに思いついたことを際限なく
吐き散らす、匿名のバカどものストレスの
はけ口からは本当の体温は伝わらねぇ。
わかるか?」
 
 
 
「今世間が求めているのはよ、一緒に泣いて、
一緒に笑ってくれる、心のこもった、本当の
パーソナリティよ。つまりよ、精神の時代に
入ったんだ。」
 
 
 
 
大越さんの言葉は熱いし、かっこいい。
 
 
 
 
 
しかし
 
 
 
 
力説が終わったあとに、必ず大声で
この言葉が叫ばれるのです。
 
 
 
 
わかったか!この、オ×××ヤロー!
(この言葉が無かったらカッコよく終わるんだけど・・・・・・)
 
 
 
 
 
あるとき
 
 
 
 
聴取率(数字)だけで口から泡を吐き、檄を
飛ばす駒井制作局長に対し、寺島は言い
放ちます!
 
 
 
 
「精神の時代に入ったんだ!○×◎△▼%$・・・・・・」
 
           
  
 
寺島は、大越さんの言葉をそのまま使い、
こともあろうに、最後に同じように叫んで
しまったのです。
 
 
 
 
「わかんねえのか!? このオ×××ヤロー!」
 
 
 
 
それが発端になり、聴取率0%代の深夜ラジオ番組
パーソナリティに大抜擢!?
 
 
 
 
大越さんは、お酒の席で寺島にこう言います。
 
 
 
 
「おい。ラストレターっていうコーナーを
作ってくれる気はねえか?」
 
 
 
「ど、どうせおめえら、はしゃいで騒いで
ワイワイやると思うんだが、や、それは
それでいいんだ。
だけどよ、最後の一コーナーだけは
真面目な葉書を読んで欲しいと思ってよ」
 
 
 
 
「ほ、ほら、ラジオ体操でもよ、最後は
深呼吸だろ?ものの収め方は色々ある
けど、あ、あれがいちばんいいんだ。
深呼吸がよ」
 
 
 
 
大越さんの言葉は、至極真面目で、良い
言葉ばかりなんです。人柄も情があって、
優しくて、男気があります。そんなエピソードは、
ぜひ本書で確認して頂くとして・・・
たったひとつの欠点が、この『危険用語の叫び』、
これがすべてを負に変えてしまうのです。
 
 
 
 
しかし
 
 
 
 
大越さんの熱い心が、寺島を突き動かし、
昭和の時代の体温のある深夜放送で、
聴取者の心を震わせます!
 
 
 
東亜放送の深夜番組、「今夜も生だよ
寺ちゃんのサタデーナイトレター」が
始まりました!
 
 
 
まるで誌上での深夜放送の番組を
聴いているかのようにページが
めくられてゆきました。
 
 
 
あっという間に時間は過ぎてゆくのです。
 
 
 
この番組は、昭和の頃と同じように葉書
だけで進行してゆきます。
 
 
 
FAXやメール、ツイッターやラインなどは
使わないのです。
 
 
 
 
裏番組は、この情報を嗅ぎ取った他局の
ディレクターにネタを盗まれ、アイドルをDJに
して「昭和に帰ろう」っていう番組を始めます。
 
 
 
 
しかし
 
 
 
 
それは、今のアイドルの子に、昭和は
どうだったとか、昭和の解剖とか解説を
する番組のようで、大越さんの言う昭和
遺伝子を甦らせた番組ではありませんでした。
 
 
 
 
はじめは、聴取率で負けていたのですが、
やがて追い抜いてゆきます。
 
 
 
 
ラストレターのコーナーは、
リスナーの心に火をつけました!
 
 
 
 
大越さんの心のこもった、精神の時代に入った・・・
つまり、心と心を繋げ、ヴィブラートをかけ
本物の旋律を奏で、リスナーに迎え入れられた
のであります。
 
 
 
 
 
 
 
 
「『もうすぐクリスマスですね』と仰るのは豊島区の
樺島高志さん。
 
 
 
 
『クリスマスになると思い出す出来事があります。
もう亡くなった私の父と、私の息子の(当時5歳)の
会話です。
 
 
 
(中略)
 
 
 
<おじいちゃん、サンタクロースって本当にいるの?>
 
 
 
ずばりと聞かれ、父は親の私たちがどういうふうに説明
しているのかわからず、一瞬困ったようで、私の顔を
ちらりと見たあと、はぐらかすようにこんなことを言った
のです。
 
 
 
<うーん・・・・・・昔はねえ・・・・・・その辺にたくさんいたんだ
けどねえ・・・・・・>(大爆笑)
 
 
 
息子は私の父に懐いており、何でもすぐに
聞きにいくのですが、あるときこんな会話が
聞こえてきました。
 
 
 
<人間は死ぬとどうなるの?>
 
 
 
父がなんと答えるのか私は一瞬どきっと
しましたが、父は、
 
 
 
<うーん、死んだあとでもねえ、家族のそばにいて
みんなを守ってるんだけど、見えないだけなんだよ>
 
 
 
息子はそのあと、しばらく何か考えていましたが
今度は、
 
 
 
<おじいちゃんも死ぬの?>
と聞きました。
 
 
 
<まあ、大体、歳の順番なんだよ>
父はそう答えました。
 
 
 
少ししたら涙声で息子が言いました。
 
 
 
<おじいちゃん。死んでも僕のこと忘れ
ないでね>
 
 
 
思わず、私も息が止まりそうでした。
 
 
 
 
<ああ・・・・・・忘れないよ、忘れないよ>
 
 
 
そう答えながら父はこっそり涙を拭って
いました。父はきっと今も、約束通り、
忘れずに、息子や家族を守ってくれて
いるのでしょう』」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
著者のさだまさしさんは、深夜番組を経験した
ことを題材として、ほぼ誇張せずに実在の
人物が本書にでてきていると語っています。
 
 
 
とにかく、いろんなディレクター、プロデューサー、
放送作家、そのほか社員の方や行きつけの
居酒屋の人たちが、たくさん、たくさん出てきます。
 
 
 
正直読んでいて、名前がわからなくなりますが、
わからなくても、ストーリーで充分読ませられる
のです。
 
 
 
魅力ある人たちばっかりで、この人たちといると
幸せな気分になってくるから不思議なものですね。
 
 
 
いっぱい笑わせてもらって、幸せな気持ちを
もらい、ほろっと涙が睫毛に憩うのです。
 
 
 
寺島は、大越さんのソウルを受け取り、ラストレター
でリスナーの人たちを心の底から応援しました。
自分自身の心の言葉を聴いているみんなに
手渡しました。
 
 
 
それが
 
 
 
深夜の聴取率1位につながるのでした。
0%だった聴取率が1.4%になる大躍進
です!
 
 
 
大越さんは、昭和の良いソウルを新しい希望の
時代に生きる若い人たちにバトンを渡すように
叫んでいたのかもしれません。(最後の雄たけび
は余計ですが・・・・・)
 
 
 
 
「ひとはよ、皆、小さな人生を、歯ぁ食いしばって
生きてんだ。
 
 
 
そいつらの切ない叫びを黙って聞いてやったら
どうだ!」
 
 
 
 
その言葉を受け、寺島は「ラストレター」で
切ない叫びを、見事に再現しました。
 
 
 
簡単に繋がれる今、本当の繋がりは
どこまであるのでしょうか?
 
 
 
 
かつての深夜放送
 
 
 
 
それは
 
 
 
 
瞬間、瞬間、見えない絆がありました。
体温を伴い、希望に満ちていたように
思います。
 
 
 
夜の静寂(しじま)の中で孤独と向き合い、
真剣な血の通った時間が、深夜の空から
降りそそいでいました。
 

 

 

 

そう、皆、歯ぁくいしばって、小さな人生を
精一杯生きていました!
 
 
 
 
あなたも僕も!
 
 
 
 
 

 

 

 

 

【出典】

 

「ラストレター」 さだまさし 朝日新聞出版

 

 

 

 

 

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