「暗い夜、星を数えて」 彩瀬まる | 瞬間(とき)の栞 

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ただしネタバレがありますので充分ご注意ください!


テーマ:

 

「わからないのよ。

 

みんな、自分の身に

 

降りかからないと、

 

わからないのよ」

 

 

 

 

 

 

「暗い夜、星を数えて」 彩瀬まる

 

 
 
 
 
 
東日本大震災が起きた3月11日。
 
 
 
 
ちょうど2019年は8年目になりました。
その3月11日に本書を書店で購入。
翌日の12日に読み終わりました。
 
 
 
 
東日本大震災関連の本を読もうとして
いたわけではなく、別の本を購入しようと
本屋さんに立ち寄ったところ、彩瀬まる
さんのこのタイトルに意識が留まり、
衝動的に本棚に手が伸びていたので
ありました。
 
 
 
 
彩瀬まるさんは、小説家。
 
 
 
 
しかし
 
 
 
 
本書は、ルポルタージュなのです。
 
 
 
 
たまたま、東北地方を旅行し、福島県に
向かっていた彩瀬さんは、電車の中で
地震に遭います。
 
 
 
 
車内の乗客の携帯が一斉に鳴り始めます。
 
 
 
 
緊急地震速報。
 
 
 
 
 
すると
 
 
 
 
 
揺れる。すこしずつ、円を描くように
揺れはじめる。
 
 
 
(中略)
 
 
 
大きい。しかも、いつまでたっても
おさまらない。
 
 
 
それは、私が今まで体験したどんな
地震とも違っていた。
 
 
 
 
 
電車は止まったまま、動く気配もない。
 
 
 
 
彩瀬さんは、たまたま隣にいた
女性、リカコさんと電車を降りて
歩くことにしました。
 
 
 
 
すると
 
 
 
 
「リカコさんまずい、波が来てる!」
 
 
 
 
背を追う波はみるみる近づいてきた。
緑がかった黒い水が音もなくせり
上がってくる。
 
 
 
 
走る、走る、走る!!
 
 
 
 
上り坂を見つけて駆け上がった2人。
 
 
 
 
彩瀬さんは、このとき自分の死を
考えたといいます。
 
 
 
 
でも
 
 
 
 
死ねない、死ねない、と鐘を打つように
頭の中で繰り返して、死にものぐるいで
坂の上の中学校に辿りついた。
 
 
 
 
リカコさんと中学校の最上階まで行き
テラスから見た光景に息を吞みます。
 
 
 
 
たった今歩いてきた道が、家が、商店街が、
目に入るすべての街並みが濁った水に
飲み込まれていた。水の深さは、建物の
二階部分にまで達している。
 
 
 
 
切迫した描写が、現実なのかと疑うように
僕の頭の中で映像となって、獰猛な津波が
町を吞み込み、どんどん押し迫ってきました。
 
 
 
その後、彩瀬さんは、避難所の中学校
で知り合ったショウコさんの家でお世話に
なります。
 
 
 
 
地震の翌日、3月12日
 
 
 
 
不穏な防災放送が入ってきます。
 
 
 
 
『福島第一原子力発電所で爆発事故が
起こりました。住民の皆様は屋内に待避
し、窓を閉めて、外出をお控えください』
 
 
 
少しして
 
 
 
誤報との追加放送が入るが、夕方の
ニュースでは、福島第一原子力発電所
での爆発を報じていました。
 
 
 
 
情報が制御されているのか、錯綜して
いるのか、大きな災害では真実の情報
が乱れ、わからなくなります。
 
 
 
本当なのか?そうでないのか?
 
 
 
 
そして
 
 
 
 
放射性物質の見えない恐怖が
全身に襲ってきます。
 
 
 
 
吸っている息の中にまで
潜んでくるのであります。
 
 
 
 
原発が爆発したあの日
吸う息がぜんぶ毒なんじゃないかと思い、
胸が潰れるほど怖かったこと。

 

 

 

 
人間は、大自然の猛威の中では無力だ
と解説の一文にありました。
 
 
 
 
本当に無力だと思います。
 
 
 
 
だから人は手を取り合って、助けあい
被災直後、彩瀬さんの心は慰められ、
踏ん張ってこれたのでした。
 
 
 
しかし
 
 
 
時間が経つと、畏敬の念が薄れ
傲慢な勝手な妄想が刃となって
人の心を傷つけてゆくのです。
 
 
 
 
 
彩瀬さんは、その後、何度か
福島県を訪れます。
 
 
 
 
ボランティア活動、ショウコさん
やリカコさんとの再会。
 
 
 
彩瀬さんが再訪した福島で感じた
ことは、地震・津波・原発の被害に
同時に相対する人たちの混乱と不安。
風評被害、福島県の人たちに対する
根拠のない偏見、先の見えない未来。
 
 
 
 
これは、自然災害だけとは言えない。
 
 
 
 
人災でもあるのだということ。
 
 
 
 
彩瀬さんは、そう書かずには
いられなかったでしょう。
 
 
 
 
この、放射性物質という見えない恐怖に、
国民全員が「理性的に、落ちついて、
差別が起こらないよう冷静な対応を
すること」は、出来ないのだ。
 
 
 
安全か、安全じゃないか、どこまで安全か、
何年経っても安全か、その情報は、本当か。
 
 
 
こんなグレーゾーンを抱え込み、それでも
全員が理性的に振る舞い、被災者と苦痛や
不安を共有できるほど、きっと私たちの社会は
成熟していないのだ。
 
 
 
 
妄想がふくらみ、不信が起こり、その鬱憤が
こうして、ただでさえ日々辛い思いをしている
人へ向けられる。
 
 
 
 
目には見えない邪悪なものが、極限の状況
において、私たちの生活の小さな小さな隙間に
入り込んできます。いつしか、それらは、
黒い水と化して身体や心を飲み込み、破壊し、
侵食してゆくのです。
 
 
 
 
 
僕は、読後、この言葉がずっと頭から離れません。
 
 
 
 
「わからないのよ。みんな、自分の身に
降りかからないと、わからないのよ」
 
 
 
 
 

 

 

 

 

【出典】

 

「暗い夜、星を数えて」 彩瀬まる  新潮社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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