「ある風船の落下」 西加奈子 「炎上する君」より | 瞬間(とき)の栞 

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個人的な読書感想文、読書随想です。本の内容、あらすじができるだけ解るように努めています。
ただしネタバレがありますので充分ご注意ください!


テーマ:

 

人間は愚かだ

 

だからこそ

 

尊いんだよ」

 

 

 

 

 

「ある風船の落下」 西加奈子 「炎上する君」より

 

 

 

 

 

本書は、随分前に読んだのですが、

ことあるごとに、あるシーンが自分の頭の

中で、シュールな映像となって表れてきます。

 

 

 

 

この話の読みはじめは、絵本か、御伽噺か

そんな感じの 『お話』 のように感じていました。

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

読んでいくうちに、いつしか、すごい力で、

自分の気持ちが、何かに吸い込まれて

いくような感覚になってゆきました。

 

 

 

 

はっきりとした、明確な答えはわからないのですが、

魂が何かを記憶しているかのような、思い出そうと

しても思い出せない、「きっとそうなのかもしれない」

といった不確かな、曖昧な、自分が決めた現世での

『約束』 を暗示しているような、そんな感覚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界中で「風船病」の症例が見られる

ようになったのは、数年前のことだった。

 

 

 

風船病・・・・・・

 

 

 

溜め込んだストレスがガスとなって、体が膨張し、

浮き上がるという奇病だと言う。

 

 

 

世界中で 「風船病」 の症例が見られるようになって、

最初に認定されたのは、シカゴの25歳の女性でした。

 

 

 

その病気が、新しい病気で、

WHOにも認定されました。

 

 
 
風船病に罹ってしまった人は、BALLOONIST
と呼ばれました。
 
 
 
風船病の患者には、4つの段階がありました。
 
 
 
TERM1
 
TERM2
 
TERM3
 
TERM4
 
 
 
 
風船とは異なり、風船病は、はじめはゆっくり
浮き上がるが、TERM4になると、突然、
水鉄砲の水が発射されるように、あっという間に
飛び上がる。
 
 
 
 
そのときが来れば空のかなたへとんでゆく。
それを学者たちは、 SHOOT と呼んでいました。
 
 
 
 
ハナの体が浮き始めたのは、4月の半ば。
 
 
 
 
6月に入ってもなんとかTERM2を保っていました。
 
 
 
 
ハナは、自分自身のことを、「地上」に用がないと
感じていました。
 
 
 
「地上」の誰も、私を必要としていなかったのだ。
 
 
 
 
ある日、恐怖新聞のように、ハナの家にチラシが投函
されました。それは風船病患者にだけ投函されました。
 
 
 
 
『お前には地上にいる資格はない。飛べ』
 
 
 
 
母はそのチラシを見てこう言いました。
 
 
 
 
「大丈夫よ。あなたはここにいないことにするから、
窓際には立たないでちょうだい。」
 
 
 
その夜、私にSHOOTが訪れた。
 
 
 
 
光の中、目を覚ましたハナは、
目の前に浮かんだ光景に驚きました。
 
 
 
たくさんの風船病患者が、ふわふわと
浮かんでいたのです。
 
 
 
エラが話かけてきました。
 
 
 
「こんにちは」
 
 
 
エラは、この世界 ( ここにいる人たちは、
ここを天国と呼んでいる。) のことを
わかりやすく、ハナに語りました。
 
 
 
ここでは、みんな等間隔で、人を信じたり、
心を寄り添わせようとすると、重力が発生
し、まっさかさまに落ちてしまうというのです。
 
 
 
「いい?ハナ。ここは本当に天国よ。
口やかましい人間もいないし、人を信じて
裏切られることもない。すべての人間が
等間隔で、ただただ浮いているの。
地上から離れた場所で。
 
 
 
あなたも、人に傷つけられたりして、それで
ここに来たんでしょう。誰も信じず、誰に寄り
添わずにいる限り、あなたはずっとここに
いられる。皆共通の言語を持ち、悪意ある
価値観に縛られることもない。
 
 
 
あなたを悪く言う人はいないし、あなたを
傷つける人もいないのよ。ほら、ハディの
ように、ずっとずっと眠っていることだって
できる。」
 
 
 
 
ハナは、地上で辛かったことをつぎつぎに
思い出していました。
 
 
 
この世界では、体がふわふわと揺れているとき、
不安定になっているときです。
 
 
 
ギョームという名の人が、いつもふわふわと
揺れていました。
 
 
 
彼の笑顔には、はっきりと感情があった。
 
 
 
ギョームの笑顔を見ると、ハナの体は
揺れました。
 
 
 
いつしか、ギョームとハナは愛しあっていました。
 
 
 
ギョームとハナの体は、確実に近づいてゆきました。
 
 
 
ここからのギョームとエラの言葉は、とても深く
僕の心をゆらゆらと揺らしました。
 
 
 
「ハナ、聞いて。僕の祖先は、迫害を受けた。
まったくいわれのない迫害だ。そして
僕は、この容貌と臆病な性格のせいで、
小さなころから苛められてきた。
 
 
 
僕は人間が、その悪意が怖かった。
世界を憎んだ。みんなが僕を攻撃する。
そんな世界を捨てて、ここに来た。
 
 
 
でも、ハナ。聞いて。
僕は、君に会って、君と話をして、何かを
信じて、求めることの幸せを思い出した。
 
 
 
もし裏切られたとしても、社会から中傷を
食らっても、それでも、誰かを信じることの
素晴らしさを、僕は思いだしたんだ。
君が好きだ。」
 
 
 
 
その言葉を聞いて、エラが叫んだ。
 
 
 
 
「信じるのは愚かよ、ギョーム! ハナ!
誰もあなたたちを守ってくれないわ!
 
 
 
社会は、決められた価値観に私たちを
あてはめ、それから外れようとすると、
猛攻撃を加えてくる。
 
 
 
そんな愚かな 『地上』 に、あなたたちは
戻りたいっていうの?」
 
 
 
過去に数々傷ついてきたエラの魂の
叫びでした。
 
 
 
ギョームは泣きそうになりながらも
こう叫んだ!
 
 
 
「人間は愚かだ、でも、だからこそ
尊いんだよ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
巻末の解説に又吉直樹さんが、
こう語っています。
 
 
 
絶望するな。僕たちには西加奈子がいる。
 
 
 
西さんの魂の言葉たちに、ギョームやハナと同じく、
僕の心も強烈に、重力の操るまま落下させられて
ゆきました。
 
 
 
私たちは、史上初めての「落下する風船病患者」
になった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私たちが今、もがき苦しんででも、この世を
生き抜いているのは、縁ある人と、重力の
ある、この地上で生きようと、空の上で約束
してきたのかもしれない。
 
 
 
それは、家族かもしれないし、夫婦なのかも
しれない。子供や恋人や仲間かもしれない。
 
 
 
 
そして
 
 
 
 
この重力(さまざまな障害)を
乗り越えられるものが、縁ある人との
愛の力なのかもしれない。
 
 
 
 
だから、限りある人生を、今、この瞬間を、
共に約束した人とともに精一杯生きよう!
 
 
 
僕は、そう思いました。
 
 
 
いつか、そう遠くない未来に、安らかな気持ちで
SHOOTできるように!
 
 
 
 
 

 

【出典】

 

「ある風船の落下」 西加奈子 「炎上する君」より  角川書店

 

 

 

 

 

 

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