後藤正樹指揮 アレグレット交響楽団 第14回定期演奏会 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

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日時:2024年11月04日(日)14:00~

会場:練馬文化センター大ホール

指揮:後藤正樹

演奏:アレグレット交響楽団

ドヴォルザーク:序曲「わが家」

ボロディン:交響曲第3番イ短調(未完)   

ブラームス:交響曲第4番ホ短調 作品98         

感想:

 最近ブルックナーばかりになっていたので、秋だからブラームスも聴きたいなと思い。

 今回は練馬文化センターで行われるアレグレット交響楽団なるアマオケのコンサートを見つけ訪れてきた。

 東京都は各区の多くが結構立派な文化施設を持っており、ここもその一つで練馬駅の駅前にある。

 プロセニアム形式のステージで、客席は2層で1332席と中規模のホールであり、印象としては公共ホールの典型タイプで、音響的には必ずしも音楽専用という訳ではない。

 今回のオケは2008年設立に高田馬場界隈で設立ということで、恐らく早稲田などの卒業生などが中心メンバーとなって設立されたものと推測され、年1回の定期公演を行ってきており、今回で14回目を数える。(コロナなどで欠番があるのだろう。)

 指揮者はこのオケをずっと振っている後藤正樹氏で、音大卒ではないが何と東京大学大学院総合文化研究科、洗足学園大学指揮研究所を卒業しており、秋山和慶氏などに指揮を師事しているとのことで、まるっきりのアマチュアでもないようだ。

 本番演奏前にプレ演奏ということで舞台上にてフルート奏者2人によるワルツ「春の声」が吹かれた。

 ワルツのリズムがそこそこだなという感想はあったが、フルートの響きそのものは心地よく、これでこのホールの響き感は大体把握出来た。

 さて、本番のメンバーが入場してくると、予想通りメンバー構成は若くアラサーが中心と推測される。

 1曲目は、ドヴォルザークの序曲「わが家」で、もともとはチェコの近代演劇向けの付随音楽だったが最近ではこの序曲以外はほとんど演奏されないようだ。

 演奏が始まり全体的には安定している印象だが、ホルンが若干心許ない。

 また各フレーズが少しずつ表現不足でこの曲の味わいを歌いきれずに胸に伝わり切らない。

 木管などはしっかり、堅実にこなしているので全体の演奏の質は悪くないのだが、音楽的には表現が弱く感じた演奏だった。

 

 続いてボロディンの交響曲第3番だが、演奏されることがあまり多くない曲という気がしており未完のため、第1・第3楽章の2楽章だけが残っており、私は初めて聴くことになった。

 オーボエの牧歌的なソロからスタートし、ゆったりと音楽がスタートする。

 金管の表現に少し甘さがあるかなという面はあるが、続くクラリネットのソロなど堅実的な演奏でこの曲の華やかさはしっかり彩られており、ストリングスも不満は感じず受け止めらる演奏である。

 ただこの曲はもっと彫りが深く、印象的な音色を生み出せそうなメロディでもあるので、そのあたりはもう少し上積みが期待できそうな感じである。

 続く2つ目の第3楽章は、5拍子のスケルツォで、ふわふわとしたストリングスの音色に続いてクラリネットが軽やかに入ってくる。

同じロシアのショスタコーヴィッチが影響を受けているのかなとも思えるメロディである。

 まあ演奏は全体としてもっと表現を詰められる余地はありそうだったが、音楽としては今日一の会心の演奏であっただろうという印象で、音楽を楽しめた。

 途中で曲調が突然切り替わり、クラリネットが穏やかに歌い上げた主題も心地よかったが、その後のストリングスが少し不安定な印象で、ここは少し勿体ない印象だった。

 で、そんな好印象で演奏が終わったのだが、指揮者はカーテンコールで木管奏者を立たせただけで引っ込んでしまい、オケ全体を立たせることはなく、これは指揮者としてどうなのかなと感じる一幕もあった。

 

 そして後半はブラームスの交響曲第4番、名曲ではあるが、オケの技量がもろに出てしまう怖い曲でもある。

 冒頭からあっさり気味にスタートする。

 もっとアウフタクトから丁寧に入って欲しかったのだが、合わせただけという印象で、その直後のホルンもバランスを欠いて飛び出し、何だか雑な演奏の印象を受けた。

 その後もホルンが安定せず、ストリングスはそれなりの安定した音色を出していたが、どうも聴く側の心のバランスがかき乱されて興ざめしてしまう。

 そのまま、比較的あっさりした歌い方で曲が進み、ちょっと浮いた感じでクラリネットなどが入ってきたりしていたが、バラバラになりそうな音を何とか頭の中で補正して聴く。

 ホルンやフルートがよろけながらも何とか第1楽章を終える。

 

 この時点でもう帰ってもいいかなとも思ったが、そのまま第2楽章を待つ。

 ここのホルンやフルートはほぼまともでとりあえず安心のスタート。

 この楽章はテンポが落ちるため、前楽章よりはかなり安定して演奏は進むが、ピツィカートはもう少し強調しても良かったなという気もする。

 ところどころ細かいミスも聴こえてしまったが、全体してはまずまずである。

 楽章間に舞台で何かを落としたような物音があり、こういうところは残念ながらアマっぽい。

 

 そして第3楽章、ややあっさりというか歌いが深くない状態で前へ進む。

 トライアングルの音色の少し甘いかなという印象で、ストリングスも少し乱れてしまう。

 演奏が進むにつれオーソドックスなスタイルに収束し、演奏も安定し落ち着きが取り戻された印象。

 

 第4楽章の冒頭の金管は少し乱れたが、ここまでの途中に比べればかなりマシである。

 ここに至り演奏はかなり安定感を取り戻していたが、もう少し丁寧に歌えばもっと印象的な演奏になったのではないかという感想は否めず、所々の粗やあっさり感が曲に引き込まれさせてくれなかったのはちょっと残念である。

 この日の終演後、アンコールも用意されていたようだが、家路が遠いこともあり待たずに会場を後にした。

 ここにはまた縁があれば伺うことにしたい。