張亮指揮上海フィルハーモニー管弦楽団 フランスの魅力Ⅰ | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海生活の合間に聴いた音楽や見たスポーツなどの記録を残します。

日時:2021年9月24日19:30~

会場:上海交響楽団音楽庁コンサートホール

指揮:張亮

演奏:上海フィルハーモニー管弦楽団

ピアノ:薛妤穎

曲目:

サンサース:交響詩「死の舞踏」作品40

サンサース:ピアノ協奏曲第2番ト短調作品22

ショーソン:交響曲変ロ長調

 

感想:

 フランス音楽を集中的に取り上げるという上海フィルの演奏会の第一回目。

 以前別の指揮者でこのオケのフランスモノを聞いたときは、なかなかフランス的雰囲気を見いだせなかったのだが、指揮者が変わって今回は果たしてどうか。

 今回の指揮は若手の張亮さん。

 

 一曲目はサンサースの死の舞踏。

 ハープによる時計の強めの音から音楽がスタートする。

 演奏というかアンサンブルは揃ってきれいにスタートする。

 そしてすぐにコンサートマスターのソロによる妖艶な舞踏がスタートする。

 さらにオケへ舞踏のリズムが受け継がれていくのだが、やや柔らかめに舞踏へ入っていく。

 私のイメージだともっと冒頭から切れ込んでいく印象なのだが、この日の演奏ではこの段階ではまだ柔らかい。

 しかし、徐々にキレを加えていく。

 

 ただリズム的というか音楽的には整いすぎているといった印象で、フランス音楽独特のえぐってくるようなおどろおどろしさはそこにはなく、フランス的というより規律的なドイツ的音楽から離れられないと印象があった。

 逆に言えば、今回の演奏はそれだけ揃っていることの裏返しでもあり、音楽としてはまとまっていた。

 

 揃いすぎた影響なのかヴァイオリンのソロが一部で埋もれてしまった部分がありそこが残念であったが全体的には良いサンサースだった。

 ただ個々人的には死の舞踏というからにはもっと荒々しい演奏を期待したかったというのが正直な感想である。

 

 続いて、同じサンサースのピアノ協奏曲第2番をソリストに薛妤穎さんという男性ピアニストを迎える。

 背が高めで、なかなか体格が良い印象のピアニストである。

 さてコンチェルトはソリストの長いカデンツァから始まる。

 タッチはしっかり厚めで、左右の手のバランスもそろっており、しっかりした音を鳴らす。

特別なキラキラ感はないが、非常に聴きやすい音質である。

そこへオケのパートが入ってくるが、最初の全奏の音はさすがフランス音楽的なにおいがして、さすがサンサースだなという気がする。

その後再びソロのカデンツァだが、やはり揃いすぎかなと印象で、もっと自由にリズムを奏でてもよかったのかと思う。

特に第3楽章などはオケを含めて、フランス的なリズムの面白さが出てくるはずの曲だが、そこまでフランス音楽的な遊びの要素はそこになかったのである。

希望としてはもっとえぐって荒々しく攻め、あるいは揺れたり、情熱的に音をぶつけてもよかったのかなという気もするが、総じて音が整ってしまった。

まあドイツ音楽的印象で見ればこの演奏でも十分問題ないが、フランス音楽をテーマにした演奏会というなら、もう少しエスプリな遊びの要素をそこに含ませてほしかった気がするのである。

 

そして後半のショーソンの交響曲も同様の感想を感じる。

本来フランスのオケの場合、木管や金管の音がもう少し明るくというか艶があり、そういう奏法をするのだが、楽器の問題は取り替えられないにしろ、奏法的にはフランス語の語感に近い形で演奏しないと、この曲の魅力は出てこない。

フルートやオーボエ、イングリッシュホルンなどはしっかりと深みを出した音色で演奏をしていたが、フランスの曲は多くが突き抜けるような音色を前提にして書かれるのでマッチしないのである。

 

そもそも音楽は作曲者の話す国の言語の強い影響を受け、例えばフランス人作曲家の書いた曲ならフランス語がそこに聴こえるようなリズムで書かれており、演奏するとフランス語とマッチして聴こえる場合が多い。

そこにはエスプリな遊びが含まれてたリズム感覚や音色の面白さが含まれていて、まるっきり違う色彩感覚を与えてくれるのである。

 だからご当地オケが母国の作曲家の曲を演奏するともっとも「らしく」聴こえることになる。

 

そういった意味ではこの日の音楽は、きちんと整えられた良い演奏だったけれど、フランス音楽としての魅力に関して言えば物足りなかったのである。

指揮者がその違いに気付いているのかどうか、次回「その2」があるようなので楽しみに待ちたい。